第2章【3】青猫との遭遇
「明日から長期連休になるが、休み明けの実力テストを忘れずに勉強も怠らない様に、
それでは終了する」
担当の教師がそう告げている間に終了のチャイムが鳴り響く。
教師が教室から出ていった後、生徒は立ち上がり、歓談したり、帰宅の準備に取りかかっていく。
「向日葵、この後どうする?」
「今日は早めに帰る予定だよ。料理当番なんだ」
「そっか、大変だねぇ」
「おーい、向日葵!」
親しい友達とお喋りしていると、切原が会話に参加してきた。
「コレこの間、借りてたノート、ありがとな!」
「ううん、どういたしまして」
「いやぁー、明日から休みだけど、どう過ごす?」
「えっと…勉強したり、家の手伝いをしたり…
あと、この間お父さんが買ってきてくれたDVDを妹と観るつもり。
部活とかで忙しくてなかなか観れなかったんだ」
「へぇー、俺はどうしようかな~」
連休中の予定を話し合っていると、ふと別のグループが盛り上がっている話題が耳に入ってきた。
「ねぇねぇ、昨日私見ちゃった!」
「何を?」
「ドラえもん! ほら、この間商店街を回ってたイベントあったでしょ。あの時の…!」
「ああ、あのリアルな着ぐるみのね~」
「またイベントかな?」
「でも、ドラえもんの映画って毎年3月でしょう?
もうとっくに終わってる時期だし…」
「別のイベントとか、声優さんが来たりして…!」
わいわいと話に花を咲かせる女子グループを見ながら、友達がポツリと言った。
「噂になってるね…ドラえもんの話」
「うん、私…一昨日のテレビで見てビックリした」
「あっ、俺も俺も!
そういや、あの商店街のイベント、丸井先輩たちもリアルで見たって言ってたっけ…」
「でも、イベントがあるって事自体全く聴かないんだよねー…なんでかな?」
友達が小首を傾げる。
何気ない疑問…それは向日葵と切原の心に一つの波紋をもたらす。
「あ、いけない! 塾あるから先に帰るね」
友達が時計を見て、慌てて退室していくのを見送ると…切原が向日葵に耳打ちする。
(なぁ、クロウカードの仕業だと思う?)
(そうだね…でも、此処だと目立つから…)
場所を移動しよう。
二人は互いに頷くと、鞄を持って教室を後にした。
*** ***** ***
「…で、ヴィンセント。クロウカードで漫画とかのキャラが現実にでてくるカードとかってあるのか?」
屋上に着いた切原が、隠れていたヴィンセントに早速尋ねてみた。
「漫画やアニメの登場人物をこっちへ連れてくるんはないなぁ。
でも、特定の人や物に変身したり、幻を見せたりするカードはある」
「…となると、そのどちらかが私を試してるって事?」
「可能性はあるなぁ。片方はいたずら好きやし…」
「そのカードの名前は?」
「―――【鏡(ミラー)】と【幻(イリュージョン)】だ」
向日葵の質問に、ヴィンセントが言おうとするのを遮る形で誰かが回答した。
「李さん!」「あっ…」
その声の方へ振り向くと、開かれていた扉の前で、李小鈴が立っていた。
「あぁッ~!? 小娘! ワイが答えようとしたん邪魔しおって!」
「噂の件は、私も耳にしている」
答えるのを遮られた事に抗議するヴィンセントをスルーして、小鈴は二人に話しかける。
「李さんも気になるんだね…」
「アレだけ注目されていれば、気にならん方がどうかしている」
「ふーん…李はドラえもん、知ってるのか?」
「…一応。中国や台湾でも放送されているからな」
さすがは国民的アニメ…海外でも人気を博しているようだ。
「あの…李さん」
「なんだ?」
「折角だから、一緒に調べない?」
向日葵が突如、申し出た事に小鈴は眉を潜める。
「何故、私が…」
「俺は賛成! 一人で探すより三人探した方が効率いいしさ!
ほら…『三人集めりゃなんとかの』っていうじゃん!」
「それ言うなら、『三人寄れば文殊の知恵』じゃ」
切原の言葉を指摘する第三者の声。
あっ、と向日葵が驚いた声を漏らした。
「雅治先輩!」
小鈴の後ろから姿を見せたのは仁王だった。
「教室迎えに行ったらおらんかったから、探してたナリ」
「すみません…」
「こやつ、いつの間に…」
仁王の巧妙な気配隠しに、小鈴は苦虫を噛み潰した顔になる。
「いつからおったん?」
「李がクロウカードの事を喋り出した時から」
「って、ほぼ最初からいたんじゃないっスか!」
「ま、それはおいといて…」
切原のツッコミさえも大いにスルーして、仁王は言葉を継ぐ。
「赤也の言う通りじゃ。
意固地になって一人で探すよりも、協力した方がええ結果だせる事もある」
「それに…李、迷子にならないか心配だし…」
「なっ!?…最近は迷ってないと前にも言っただろ!」
切原の言葉に、小鈴は顔を真っ赤にして反論するが、ハッと我に戻るとコホンと咳をする。
「…李さん、一緒に探そう?」
向日葵が微笑みながら再び、誘いの言葉を言った。
「……………………」
小鈴は複雑そうな表情で腕を組んだまま、長い沈黙をするが…
「…仕方ない。今回だけだぞ」
考えぬいた結果、了承の返事をしてくれた。
向日葵は顔を明るくして「ありがとう!」とお礼を言った。
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