第2章【1】SF(すこしふしぎ)なイベント


窓から外の風景が見える。

書店のすぐ下には、親子連れや別の学校の女子学生、買い物帰りの主婦などがいる。

彼等の視線はある方向に一点集中していた。

その先には、青い色の丸っこいモノがいた。



「ん? あれって…」



どこかで見た事がある。

気の所為じゃなくて、絶対に何度か目にした記憶がある。

そう…幼い頃にあのモノを身近で見た事があるのだ。


だが、肝心の名前が出てこない。

なんだったっけ…と思い出そうとする丸井の耳に、子ども達の声が届いた。



『ままー、ドラえもん!』

『ドラえもんだァーvv』



そうだ!

丸井はピーンときた。

ちょうど、真後ろにある最新刊コーナーの方にも置かれている国民的漫画の登場人物ではないか!


思い返すと、幼い頃…アニメもよく見ていた。

今でも、弟達がテレビで時々アニメを視聴している事がある。



「…にしても、よくできた着ぐるみだなぁ」



改めて観察すると、外にいるドラえもん(の着ぐるみ)は原作やアニメのようなリアルさがある。

その注目の的であるドラえもんは、子どもや主婦の人達と何か話しているようだ。



『…あのー、こんなヒト見かけませんでしたか?』



写真を見せて人探しをしているようだ。

尋ねられた人は嫌がる事無く、驚き交じりで…でも嬉しそうな表情で答えていく。



「あれってテレビの企画とか…という事はテレビ局が近くにいるのかも…」

「おい、ブン太」



下に降りてみようか…と丸井が好奇心に駆られたその時、後方からジャッカルの声がした。



「あ、ジャッカル」

「店員の人に聞いたけど、目当てのやつ今品切れ中で取り寄せないとダメらしい」

「ええっ~…」



どうやら、他の書店か図書館を回らないといけなくなりそうだ。



「ま、連休もまだ始まっていないんだし、そう急ぐ事じゃないだろ」

「そうだな…」



でも、面倒くさい事には変わりない。



「あ、そうそう。さっき、外でアニメのキャラの着ぐるみに着た人に質問受けたんだ」



出来れば、早めに片づけたいな…という風に考えていると、ジャッカルが外の話題に触れてきた。



「マジで?」

「ああ。人探ししてたようだけど…結構凝ったイベント設定だったな」


「テレビ局のカメラとかもいたか!?」


「いや…いなかったぞ? 外で待機してたのかもな。

もうどっかに行ったみたいだし…」



首を捻りながら言うジャッカル。

なんだーと丸井はがっかりする。

もっと早めに気付いていれば、カメラに映って明日辺りの午後のニュースで

取り上げられたかもしれないのに…。



「なんか損した気分だ」

「そうしょげるなって」



不貞腐れる丸井の肩をジャッカルは苦笑しながら叩いた。

この時、彼等は想像できただろうか?


話題のネタとなっている着ぐるみと思われた‟ドラえもん”が…

後日、親しくしている少女が巻き込まれるある『出来事』と関わってくる事を。





【SF(すこしふしぎ)なイベント】





「商店街の方もいなかった…」



タケコプターを回しながら、ドラえもんは上空を移動している。


彼がこの世界を訪れた理由。

それは二日前、エクレシアのダンがほさ部に依頼をしてきたのがきっかけだった。



『ゲンさんが数週間前から行方知れずなんだ…手伝ってほしい』



ゲンさんとは、エクレシアの普賢真人の事。

ダンの親友であり、温厚な気質の青年はここ最近どうも様子がおかしかったようだ。



『ゲンさんを見つけ次第、俺に連絡してくれ。必ず!』



それに、ダンが珍しく必死な様子だった事がさらに不安を掻きたてた。



「嫌な予感がするな…普賢さんが無事だといいけど」



そう言いながら、隣町へ急ぐ。

通り過ぎた川辺の橋の真下…ドラえもんの視点から死角となっていたため、

一人の人物が倒れている事に彼は気付かなかった。


淡い海色の髪で、頭の上に光輪がでている青年。

固く目を閉ざしている彼こそ…『普賢真人』

眠りにつくこのエクレシアを目覚めさせるのは…

果たして誰だろう?






【つづく】

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