第1章【5】勝敗の決め手は『属性』
「キャアアア…ア…ふ、フフフ…キャハハハハハッ!」
「「「な…に…!?」」」
苦しそうに胸に手を当てて悶えていたラクシーヌが、突如高笑いをしだした。
その変貌に、分裂した不審者達は困惑し、向日葵達もまた驚愕してしまう。
「フハハハッ…うけるわぁ~…そのマ・ヌ・ケ面。
さっきのしてやったりのドヤ顔からの変わりっぷり!
あんたって意外とお笑い系に向いてんじゃなーい?」
「あれだけの雷魔法を受けたはずだ…」
「この女…何故傷一つ負っていない?…ッ!」
「まさか…貴様は…」
男性達はハッと一つの答えにいきつく。
ラクシーヌはフンッと不敵な笑みを浮かべて、両手にナイフを構える。
「そうよー。私の属性はね…《雷》なの。
だから、あんた達は大好物をわざわざ私に贈り付けたって訳。
ごちそうさま!」
ラクシーヌの全身から強力な電磁波が流れ出す。
彼女の周りを取り囲むそれは、あたかも生きている…
伝説上の生き物…竜の姿をこの場にいる全員の脳裏に連想させた。
「「「くっ…」」」
分が悪いと察した男性は逃走しようとしたが…
「ぐおっ…」「うぐっ…」
「ッ!!??」
「敵前逃亡なんていい度胸してるじゃない。
私が本気で相手してやるってのに…舐められたものねぇ…」
…速い。
ラクシーヌは、向日葵が瞬きをする刹那の時間で男性の背後へ回っていた。
分身体が一気に消滅してしまい、残された本体の顔はこの世のものとは思えない恐怖の色で彩られている。
「徹底的にお仕置きしてあげるわ…三倍返しで、ね」
同時刻、賑わう商店街を行き来していた人々は一斉に足を止めた。
ビシッ…ドガーンッ!
離れた隣町の方で、晴れているにも関わらず巨大な稲光が物凄いスピードで落下したのだ。
なんだ、あの雷…
すごく大きくなかった?
あれ、直撃したらひとたまりもないな…
ザワザワと人々が言葉の波を寄せていく。
そして…その中の誰かが思わず口にした。
『あの雷に当たった人がいたら、災難だよね…』
実際に、そんな憐れな該当者がいたいう事実は…誰も知らない。
「言ったでしょう…『あの人に同情する』ってね」
【勝敗の決め手は『属性』】
向日葵、仁王、ヴィンセント…そして暁は呆然とするしかなかった。
「ホーホホッ!…この私に楯突こうなんて100年早いのよ!!」
戦いの勝者…ラクシーヌは、敗者…地面に伏している男性を見下ろしながら笑い飛ばしている。
その光景は、一部始終を見ていた関係者…特に向日葵にとってはかなりショッキングだったようで…
「…か…かっこいい…!」
「「向日葵!?」」
『…う、うむ…凄まじい戦いぶりだったな』
未知なる魔法の使い手をたった一人の力で打ち勝った女性…ラクシーヌの姿は、
向日葵の目にはとても勇敢ででも美しく見えたのだ。
リエの時とは違った感動を覚えてしまった。
羨ましいと目に輝きを宿している想い人に、仁王はかなり複雑な胸中だ。
(い、いかん…向日葵が危ない方向へいってしまう危険がでてきたナリ…)
ぶっちゃけ、未だに高笑いしている女王さ…いやラクシーヌには戦慄を感じずにはいられない。
「あのネエちゃんはぜぇえええたいに敵にまわさん方がええで…!」
『…同感だ。あの雷の使い手は性格に癖もあるようだ…
慎重な対応を心掛けていくのが得策だろう』
それはヴィンセントと暁も同じのようで、コソコソと仁王に耳打ちしてきた。
うん、完全同意だ。
彼等が小声会議をしている中、ゼクシオンがカツカツと前で出て行く。
「そこまでにしておいてください。ラクシーヌ」
「あら、手を出さないんじゃなかったの?」
「もう決着はついたでしょう…
その男性にも色々と聞きたい事もありますからね」
ゼクシオンは目を鋭利に細め、男性へと視線を向ける。
うっ…と意識が回復したのか、男性は苦悶交じりに彼等を睨んでいる。
「貴方はどこの世界から来ましたか?
所属している組織は?
エクレシアを狙う理由も教えてください」
「ふん…誰が言うものか…」
男性は口を割らない、と意思表示した。
不利な状況に立たされていても、己や背後にある組織の情報を暴露しないところから、
ただの愚者ではなさそうだ。
さてどう尋問しようか、とゼクシオンが思案していたその時…
「私も知りたいですね。貴方がこの世界を訪れた事情を…」
鈴が鳴るような心地よい声音。
突如、反対方向の道から現れた人物に、ゼクシオンを除く一同(不審者も含める)は固まった。
「「「「リエ(さん)!?」」」」
『…まさかいらしていたとは』
「……!!?? き…みは…」
「こんにちは、皆さん」
戦闘後に出現した可憐な乱入者は、穏やかな顔で全員に会釈した。
【つづく】
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