第1章【5】勝敗の決め手は『属性』


「余所見してていいのか?」

「…チッ!」



不審者の男性が後方から襲い掛かってきた。

杖の打撃を紙一重に避けると、反撃に男性の胸元に蹴りを炸裂させる。



「ぐ…ッ…」

「これで御終いよ!」



宙を一回転しながら、ラクシーヌは目を鋭く光らせる。

両手の3本のナイフを敵の急所…胸、首、頭に的確に命中させた。



「きゃっ…せ、先輩…?」

「…見たらいかんぜよ」



その光景は刺激が強すぎると思った仁王が、急いで向日葵の視界を遮るよう抱きしめる。

ヴィンセントも手で目を反射的に抑えつつも、隙間から様子を恐る恐る伺っている。



『やったか…?』

「いえ、まだです」



暁の疑問に、腕を組んで観察していたゼクシオンは否と答えた。

何故なら―――



「…しっぶといわね」

「「「そちらこそ」」」



仕留めたはずの敵はニヤリと口端を上げると、ボンッと白煙を出して消滅した。

急所から流れ落ちて、地面に広がっていた血だまりが無数の黒い鳥へ変化し、三体の人型を形作った。



「…三人になった…!?」

「体のつくりどーなっとるんや、あの男…」



驚愕する向日葵とヴィンセント。

一気に数を増やした男に、ラクシーヌは警戒感を滲ませる。



「ラクシーヌさん!」

「来るんじゃないわよ!」



さすがに見ていられなくなった向日葵が近づこうとするや、背を向けたままのラクシーヌは一喝した。

怒鳴られて、ビクッと肩を震わす向日葵。

その時だった…



「生憎と、私は貴様のような高飛車と遊んでいる暇はないのでな」

「だから早急に…」

「消えてもらおう」



三人となった男性が杖を一斉に構え、そこからバチバチッと火花が散る。

それが徐々に大きな黄色い電流へ変化するや、三人は杖を構え、その呪文を口にした。



「「「―――【降り注ぐ雷槍(ラムズ・アルサーロス) 】!!!」」」



  ビシャアァアァアァッ!



巨大な雷が槍と化し、さらに三方向からでてきた同一のものと重なり合い、ラクシーヌへ降り注いだ。



「キャァアアア―――!!」



直撃した雷撃により、ラクシーヌは絶叫を上げる。



「い、いや…ッ!?」

「向日葵、ダメじゃ!」

「とめないで、雅治先輩!」



向日葵がぽろぽろと目から涙を流し、必死に彼女を助けるため駆け出そうとするのを仁王は体を張って止める。

今出て行けば、向日葵も攻撃の餌食になってしまう。



「やめてくれ…おまんまで傷ついてしまう!」

「だって…このままじゃラクシーヌさんが…ラクシーヌさんがぁ…」



泣きじゃくる向日葵を抱きしめて宥める仁王。

その傍らで、同じ仲間であるゼクシオンの表情は崩れない。

仮にも仲間がピンチなのに…彼は動揺すらしていない。



「ちょい、にーちゃん…ええか?」

「何が、ですか?」


「あの気の強いねえちゃん、やばいで?

此処は助けに入るんが筋なんちゃうか」



ヴィンセントが眉を潜めて問いかけるが、ゼクシオンは肩を軽く竦ませる。



「僕の出る幕はありませんよ」

「はぁ?」


「向日葵さん、貴女も涙を拭いてください。

顔が大変になってますよ」


「…なんで…ですか…?」


「あんた、仲間が痛い目おうとるのに涼しい顔してるな。

冷徹を通り越して…非情すぎるナリ」



仁王の非難を含んだ言葉に、ゼクシオンは不快になるどころかしれっとこう言った。



「逆に、僕は同情しますね…あの男性に」


「ほえっ…?」「「はぁ?」」

『…何故?』


「ラクシーヌにあれだけの雷撃を落とすなんて…

『自ら首を絞めてくれ』と言ってるようなものですから」



ゼクシオンのその言葉は、何を意味するのか…?

数秒経たない内に、向日葵達は理解する事となる。



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