【前日譚②】きっかけはこねこにん 2
「私達も行こう!」
「おんっ」
「えっ、えっ…今、リエさんがすぐ終わらせるって言わなかった?」
「空気読めや~…協調性は大事やで」
『その通りだ』
向日葵を含め、その場にいた全員(ソラは相変わらず切原が抱っこ中)は
ダークサイドがいる現場へ走り出した。
「待っててください」と遠回しにリエから言われていたけれども、向日葵が進む足を止める気配はなかった。
危険な戦いの場に、リエだけ赴いて自分達だけ安全な所で居るなんてできない…というある種の正義感。
そして、この人の戦う姿を見なければならない…という使命感。
この二つの感情が入り混じり、どうしても行かなければならないという気持ちを抑えられなくなったのだ。
現場であるテニスコートへ到着すると、戦いの舞台はまさに最高潮に達している時だった。
「アクセルさん、そちらはお願いします!」
「おう、任せとけ!」
ダークサイド相手に、リエは一人立ち向かっていた。
間近で目にすると、かなり巨大で大きな腕を振るい、リエ目掛けて攻撃を仕掛けようとしていた。
それを紙一重に避けながら、リエは白金色の星の形をした杖で魔法を繰り出す。
「旋風よ、穿ちなさい…【ウインドランス】」
風を呼び寄せ、そこから複数の槍を具現化させ、四方八方からダークサイドへと発射した。
多方向から攻撃を受けたダークサイドは一時的に怯むものの、自らの闇を分裂させ、
シャドウや他のハートレス達を呼び寄せていた。
向日葵達は思わず身構えるが、彼女達の方へ寄ってきたハートレスはドンッと
何かに阻まれて、攻撃できなかった。
「これって…」
「あっ、見えない壁みたいなものがある!」
戦いの場に他の一般人を巻き込まないよう、目には見えない結界を張り巡らせていた。
魔力のある向日葵もよく観察しなければ見過ごしてしまいそうな程、頑丈な作りの防御壁だ。
「お前らの相手は俺だ」
結界の前で立ち往生しているハートレス達を炎を纏ったチャクラムで焼き尽くすアクセル。
リエが、ダークサイドとの戦闘に集中できるよう増え続けるハートレスを一掃しているようだ。
切原がトントンッと透明な結界を試しに触れてみるのをよそに、仁王は結界越しに
リエ達の戦う場面を凝視していた。
「……」
『言葉もでてこないか…』
暁の指摘に、仁王は口には出さず心の中で同意せざる負えなかった。
目の前の激闘を言葉で表現する事自体が難しかった。
…あまりにも“次元が違う”から。
同時に、仁王は思った。
“この戦いを観察しよう。
ただ、呆然と見物するだけなんて勿体ない。
彼等の戦う姿を頭の中に叩き込む…それが自分にとって大きなプラスになるはずだ”
『…雅治、夢中のようだな』
そう言葉をかける暁。
第三者からみても、仁王の表情からその熱意が伝わってきた。
「さっきから仁王先輩も向日葵も…全然喋らないし…どーしてだ?」
「観戦する時の反応は人それぞれや。赤也もしーかり見といた方がいいで」
「えっ?」
「滅多に観れんで…こんなバトルは」
宙に浮いたヴィンセントが腕を組んで、切原に対してそう言った。
ヴィンセントさえも夢中になって見入ってしまっている。
バァーーン
爆音が耳に届き、切原が視線を戻せば、あの巨大なハートレスが腕を下ろして項垂れている。
「今だ、リエ!」
アクセルの呼びかけに、飛行していたリエは動きを止めて杖を構える。
杖にどんどん魔力が集まってくる…
それが目に見える渦となっていき、大きな翼のような剣となる。
「これで終わりです」
彼女が口元に弧を描き、その台詞を言った直後、その剣を敵へと振り下ろした。
真っ二つに斬られたダークサイドは呻き声をあげながら、その巨体から大きなハートを出現させ、
霧となって拡散していった。
ダークサイドが消えていなくなるや、他のハートレスも増える事無く、辺りはシーンと静寂に見舞われる。
戦いが終わり、地面へと着地したリエ。
彼女は、結界越しに一連の流れを眺めていた向日葵達と目があう。
「チャックメイトです」
綺麗な微笑みを浮かべて、その決め台詞を言うリエに、向日葵は頬を赤らめてうわぁ…と感嘆してしまう。
未知なる魔物…ハートレスへの不安や恐怖心なんかを吹き飛ばす位に、彼女の存在は
向日葵と…その場にいた全員の中に強烈に刻まれてしまった。
(そう…これが、私達とエクレシアであるリエさんとの最初の出会いのお話)
【To be continued ⇒ エンカウント・ドリーマー】
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