【前日譚②】きっかけはこねこにん 2


「たーすけて―――!!」



マールーシャとレクセウスの横側をもうダッシュしながら通り過ぎていく同僚…デミックス。

カチャカチャッと金属音を鳴らしながら、彼を追いかけているのはハートレスの一種…ソルジャーだ。

戦闘が不得手なデミックスは、やたらと逃げたがる傾向が強い。



  シュッ、カッカッカッ!



そんな彼に助け船を出したのは、数枚のトランプカード。

カードはソルジャー達に命中し、さらに後方にいた複数のモノを足止めした。



「へへへっ―――ん! 引っかかったな」



逃げ腰だったデミックスが強気な表情で笑みを浮かべ、手元から水を集約させてシタールを取り出した。



「いっくぜぇ~! 舞い踊れ、水達ぃいい!」



楽器型の武器であるシタールをバーンッと奏でるや、デミックスの形をした水分身が出現して、

ソルジャー達を一掃していく。



「やれやれ…手間がかかる男だ」



離れた橋の上で援護するルクソードは、苦笑交じりでそう感想を漏らす。



「さてと…あちらは」



流れる川を隔てた反対方向へ移した視線に、轟音と灰色の煙が蔓延しているのが映る。



「ふむ、問題なさそうだ」



*** ****** ***



視界を遮る砂埃が漂う中から、青い長髪の男性が姿を見せた。

金色の瞳を鋭利に細めながら、辺りを見渡す。

一見、どこにでもある石と草むらがある川辺…

しかし、草むら付近の影がゆらりと揺れるのを男性…サイクスは見逃さなかった。



「そこかっ!」



サイクスの声に反応し、姿を露わにする中型クラスのハートレス。



「逃しはせん…うぉおおオオオッ!



彼は身の丈ほどある大剣…クレイモアを構えると顔が険しい形相へ変貌し、大声をあげて突進していく。

クレイモアを振り、その剣撃で防御が固いタイプのハートレスさえも一刀両断した。



*** ****** ***



機関員五名が戦う舞台から何㎞か先…隣町の方でもハートレスによる被害が出始めていた。

その根源となる大型ハートレス…向日葵達が目撃したものと同じ…

ダークサイドが一定の離れた2か所に出没していた。



それぞれ異なる場所にて、ダークサイドと対峙するのは―――



「でてきた!」



先端が星をイメージした形の白色と、黒色の鍵型の対照の剣を双方の手に握る10代前半の少年…ロクサス。



「…邪魔だ」



ダークサイドから派生したシャドウを手を翳しただけで消滅させた。

手からエアリアルブレードを出し、眼前にいる遥か巨大なハートレスを、

金色の瞳で見据える銀髪の男性…13機関の指導者―――ゼムナス。



「この世界でダークサイドを見るなんて…思わなかった」


「光と闇が交じり合い、微妙なパワーバランスを保っている…

ココは『狭間の世界』に位置するのやもしれんな」


「でも…コレ以上、好きにはさせない!」

「生憎だが…私も暇ではないのだ」



互いに違う場所で発する言葉と繰り広げられる戦い。

ロクサスはダークサイドの攻撃をかわしながら、キーブレードと魔法を駆使して戦い、

ゼムナスは一気に力を解放する。



「これで終わりだ、【イベントホライズン】!」

「消えるがいい…【オールヴァニティ】」



同時に、同時刻、同じタイプの敵に対し、両者ともトドメの必殺技を出した。

白く輝く巨大な光と紫がかった黒い光が柱となって天高く昇っていく。


各町で起きている現象に加え、機関員達が戦う姿を…

またロクサスとゼムナスの二名が出したその不思議かつ異様な光景を、

向日葵と面識のある人物の何人かが目撃していた事を…後に、彼女は知る事となる。



*** ****** *****



「さて…急ぎましょうか」



リエの視界に映ったのは、暴れるダークサイドといくつかの火柱。

アクセルは、現在進行形で戦っている模様だ。



「でも…危ないですよ!」



いくらなんでも一人だけじゃ無理…と向日葵が止めようとしたが、リエは柔らかく笑って言った。



「大丈夫、絶対に大丈夫だから」

「その言葉…」



リエが発したその言葉―――妹が口にする呪文と同じだ。

気付けば、彼女はその場にいなかった。



「上だ!」



切原の声に、空を見上げれば、透き通った純白の光翼を出して飛ぶリエの姿が…。



「すぐに終わらせてきます」



地上にいる向日葵達にそう言うと、リエはダークサイドがいる場所へ素早く飛んでいった。



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