第3章【17】仲間の能力開花と、月下に現れた影


「リエさん達が…」



暁の思いがけない言葉に、向日葵は困惑する。



『そもそも、雅治を含めるテニス部の面々にはもともと微弱だが魔力があった。

エクレシアと交流を経た事で、その魔力の量と質が少しずつ高まったのだ』


「確かに、何回か接触したけれど…」



向日葵と仁王は、半数のエクレシアと直接会っている。

だが、他のレギュラーメンバーが接触したのはソラとリエの二名で、しかも一回だけだ。



『会った回数に限らず、エクレシアの傍にいただけで能力が上昇する事もある。

あと…エクレシアが作ったモノを摂取した時も該当する』



暁が言った事に、向日葵は「あっ!」と思い出した。

エクレシアの一人…コゼットからもらったクッキーの詰め合わせ。

小鈴以外のこの場にいる面々が、美味しく食べていた記憶が蘇る。



「クッキーが、レベルアップのアイテムになったんだ…」

「…そういう事か」



あれが伏線だったとは…と漫画の予想外の展開を目にした時の如く、向日葵は思わず唸ってしまう。

彼女の言葉で、どういう経緯があったのか…小鈴は大体理解したようだ。



「ほぉ~…となると、幸村の兄ちゃん達も変化があったんか?」

「残念だけど、現段階ではジャッカルだけだよ」



ヴィンセントの問いかけに、幸村が笑って肩を竦めて答える。



「ジャッカル先輩、【鑑定】ってどんな能力なんですか?」

「そうだなぁ…」



向日葵の言葉を聞き、ジャッカルが軽く目を瞑るとすぐに開いた。



「簡単に言うと、RPGみたいなパロメーターが見える」

「す、すごい…!」


「…と言っても、まだレベルが低いから簡単な表示と説明しか映ってないんだなぁ」



ハハハ、と苦笑いしながらジャッカルは説明する。



「それなら、私達はどのように映っている?」

「まず、名前。生命力と魔力をメインに、あと体力・素早さ・気力が見える」



ジャッカルの言葉に、小鈴はふむ…と顎に手を添えて興味深そうに彼を見る。



「あのー…私の生命力と魔力ってどのくらいありますか?」

「答えていいのか?」

「構わないです!」


「向日葵の生命力は【167】で、魔力は…【550】だ」


『補足説明させてもらおうと、この世界の一般的な女子中学生の平均的な生命力は【150~170】だ。

魔力に関しては…生まれつきの資質も関わってくるので、大抵の人間は【0】の比率が高い。

魔力がある者の中でも、向日葵は年齢的に見てもかなりある方だ』



つまり、生命力は平均的であり、魔力は高い部類にあたるとの事。

向日葵は「うわぁ…」と目をパチクリさせながら、初めて知った情報に胸がドキドキしている。



「李も魔力が高いぞ」

「そうか…」


「詳しく聞きたいか?」

「またの機会で頼む」



小鈴は詳細を聞かない選択をした。

周りにいるメンバーに、自分の情報を明かされる事に躊躇いがあるのだろう。



「もしかして、先輩達はもう…」


「おぅ、朝練のついでに見てもらったナリ」

「テレビゲームの世界をリアル体験したみたいだった!」

「同感だぜぃ!」

「自分の数値化されたデータを聞けたのは、新鮮だった」

「同時に、改善点も分かって今後の参考になりましたね」

「まだまだ精進が必要だと痛感した…」

「各自の正確な情報を入手できたし、これからもよろしく頼むよ…ジャッカル」


「りょ、了解…(分かったから、有無を言わさない圧をかけてくるなよ…!)」



ジャッカルは、朝のうちに他のレギュラーメンバーの鑑定を済ませていた。

明かされた自分の情報に満足か否かはそれぞれ分かれるようだが、

彼等は前向きに捉えているようだ。



「兄ちゃん達の情報は気になるけど…暁、他にも言いたい事あるやろ?」

『ああ』



ほな、はよう言うてや…ヴィンセントが話を進めるように促す。

暁は大きく頷くと、次の話題を話し始めた。



『此度のジャッカルの件のように、他の者達も能力が開花する可能性がある。

故に、これからはより緊密な連絡網を構築しなければならない』


「携帯だけだとダメって事か?」


「電波が届かなかったり、もしも壊れてしまった時の事を想定しておくように、という事でしょう」


『柳生の言う通りだ。いざという時のための連絡手段を設けておく必要がある』



暁はそう言うと、彼の身体が淡く光り出す。

身体から光の球体が現れるや、細かく分かれてテーブルの上に集まる。

光が収束すると…そこには十一個の腕輪が置かれていた。



『我の知己が作り出した通信用の装飾品だ』

「おぉっ…デザインいいじゃん」

「カッコいい!」



丸井と切原がはしゃぐ中、仁王は不安そうに尋ねた。



「暁、どんな対価が必要なんじゃ?」



以前、炎の剣を授かった際に向日葵の魔力の一部を対価として渡す事になった。

これだけの数のアイテムとなると、相当な対価を払わなければいけないのでは…と仁王は危惧した。



『安心しろ。対価は別の者経由でもらっている』



だが、暁の口から予想に反した回答が出た。



「…マジか」

「誰だろうな? そんな気前のいい事してくれる人って…」

「でも、いい物が手に入ったし…結果的によかったな!」

「え…あ、そ、そうだね…」



レギュラーメンバーの半数が喜ぶ中、向日葵と仁王は逆に気になっていた。

…誰が【対価】を支払ってくれたのか?



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