【前日譚②】きっかけはこねこにん 2


同時刻、向日葵達が遭遇したハートレスが別の場所にも出現していた。



「これは…クロウカードかな」



学校の課題のため、図書館で調べ物をしていた幸村と真田。

クロウカードの存在を知っている彼等は冷静に分析する余裕があった。



「…それにしては邪悪な感じがするのは気の所為か?」



しかし、同時に違和感もしていた。

ヴィンセントから、クロウカードに気性が荒いモノがいるのは聞いていた。

だが、目の前に立ち塞がるありんこのぬいぐるみはそれとは異なる気がした。



  シャッ!



ハートレスの一匹が飛びかかってきた。

咄嗟に持っていたバッグでガードする真田。

すると、ハートレスの爪でバッグに傷ができ、中に入っている教材が丸見えになる。



「ここは一旦、逃げた方がいいね」

「…いかん」



真田が後方に鋭い視線を向ける。



「囲まれたぞ」

「困ったね」



前方と後方をハートレス達がガードしている。

…退路を断たれてしまった。

「どうすればいい…?」と幸村が突破方法を頭の中で練っていたその時…



『伏せて!』



どこからか少女の声が聞こえた。

気配に気づいた真田が空を仰ぐと…変わった形の剣を持った小柄の人物が降りてきた。



「はぁっ!」


 バシュッ、バシュッ!



着地するや、前方にいたハートレス達を剣で一閃し、消滅させた。

さらに二人を頭上を舞うように跳躍して、後方にいるハートレス達に向かって剣を投げつけた。



「光よ!」



その言葉を合図に剣は輝きだし、その光を浴びたハートレスは吸い込まれるように姿を消した。

タッと地面に足を付けたその少女。

深く被っていたフードが取れて、素顔が露わになった。

黒いショートヘアーで、青色の瞳…外見は、中学生である幸村と真田よりも幼く感じられる。



「お兄さん達、怪我はない?」

「うん、僕達は大丈夫」

「助けてくれて感謝する」



気遣う少女に対し、二人は素直に礼を言う。



「よかった…じゃあ、あたしはこれで」

「待って」



その場を立ち去ろうとする少女を、幸村は慌てて呼び止めた。



「何?」

「君の名前を教えてくれるかな?」



警戒されない様、笑顔で接する幸村。



「シオンです」

「シオンちゃんだね。さっきの、君が倒したあの黒い生き物…一体何なんだい?」



続けて訊いた質問に対し、シオンは困った顔になる。



「あの…一般の人に教えるのは極力しちゃダメって、上の人に口止めされているんです」



それに、他の場所も見回らないといけないし…と彼女は早く移動したいようだ。



「俺達はね…一般の人とはちょっと違うんだ」

「えっ?」


「さっきの魔物とは違うが、不可思議な現象はしょっちゅう目の当たりにしている」

「そうなの…?」



目をパチクリさせるシオンに、幸村はさらにこう続けた。



「それにこの町の地理なら、俺と真田の方が詳しい。

邪魔をしないよう気を付けるから…一緒についていってもいいかな?」



幸村の提案に対し、シオンは少し逡巡する。

数分後、シオンは小さく頷いて二人にこう言葉を返した。



「じゃあ、お願いします。

でも、さっきのあの魔物…ハートレスは危険だから現れたらどこかに避難してください」


「ハートレス…どうやら、クロウカードではないみたいだね」

「そのようだな」



シオンの言葉から、ハートレスがクロウカードではないと判明した。

どうやら、未知なる生物がこの町に出没しているようだ。



「クロウカード…って?」

「ううん、何でもないよ。よろしく」



聞きなれない単語に首を傾げるシオンに、幸村は笑って誤魔化した。



6/13ページ
スキ