第3章【11】難解な現状と、兎の閃き
「おかえり、団長。マチとフェイタンもお疲れ様」
故郷の世界のアジトに戻るや、シャルナークが出迎えてくれた。
正午を数分過ぎており、フランクリンと一緒に昼食を食べようとしていたようだ。
「久しぶりだな」
「フランクリン、急に呼び出ししてすまないな」
「構わねえよ。ちょうど暇を持て余していたところだ」
クロロの謝罪を含んだ言葉に、フランクリンは緩慢に首を横に振って気にしていないと告げる。
「おっ、今日は豪華だね」
「ピザに焼きそば…唐揚げ、うまそう」
運動して小腹が空いていたため、フェイタンは唐揚げを目にするやひょいっと摘まみ食いする。
「いい事でもあったの?」とマチが尋ねると、シャルナークがまあね…と笑って返す。
「シズクの通っていた斡旋所が見つかったんだ」
シャルナークはそう答えると、印刷したデータをクロロへ渡した。
「なるほど…仕事をして路銀を溜めていたんだな」
「五件くらい仕事を請け負って完遂していたよ。
それと、その斡旋所がある町にやってきたキメラアントの討伐にも参加してたようだけど…
それ以降、足取りが途絶えているんだ」
シャルナークはさらに詳細を調べたが、その斡旋所の職員の証言では
討伐後にシズクはまだ訪れていないとの事。
あまりにも強敵であったため、ハンターも相当な人数の負傷者が出たらしい。
それぞれ指定の医療機関に搬送されており、それらもチェックしてみたが、
シズクの名前は見当たらなかった。
そのため、シャルナークはパクノダと共に各医療機関へ赴いた。
当時、現場にいた入院患者に話を聞いてみたところ、
キメラアントを最終的に倒したのがシズクであった事が判明した。
シズクも負傷していたらしく、担架で運ばれていった場面を見かけた人もいたが…
どこに行ったかまでは分からなかった。
「間違いなく、シズクはその時点で連れていかれたんだろう」
「そうだね。その人物が普賢真人なのかは…未確定だけどね」
シャルナークの言う通り、まだ普賢が黒だとは断定されていない。
エレンピオスにいた頃、シズクと直に接触していたエクレシアはリーシェを除くと四人。
一人目はリエ・クローチェ。
リーシェの実母で、シズクを臨時的に自らの探偵事務所に雇った女性。
シズクから受けた報告では…
世界の審判を兼ねた最終決戦において、彼女の能力は計り知れないものだったようだ。
多くの世界に幅広い人脈を持ち、迂闊に手が出せない人物でもある。
二人目はカナン・ルースディ・レンブラント。
リーシェの弟子でもある女性で、三種の武器を巧みに操るなど戦闘における実力はかなりのもの。
その美貌と知性、他者を惹きつけるカリスマ性から契約者である
リーゼ・マクシア王の実質的な補佐として活躍している。
三人目はソラ・アウリオン。
まだ一歳の幼女だが、成長率が半端ない。
異世界で自らの分身であり、戦闘能力の一種【スタンド】を身につけた。
同時に、世界を塗り替えようとした黒幕を味方につけたとされている。
さらに、彼女自身がとてつもない幸運体質であり…
他者の運命さえも左右させる特性は厄介極まりない。
エレンピオスでの一件以降、リエは行方を晦ましてしまい、
シズクと関わりを持っていない事が判明している。
カナンはある事情から、今滞在している世界から離れていないため、犯行は無理。
ソラに関しては…100%関わっていないと断言できる。
※そもそも、あの子がシズクを連れ去る事はまずなさそうだ。
以上の事から、三人は容疑者から除外される。
それゆえに、最後の残った四人目…普賢真人が最有力の容疑者となる。
「それで、他にもあるんだろ?」
ペットボトルのお茶で水分補給をしているマチが訊いてきた。
その通り、とシャルナークは書類の束を簡易テーブルに広げる。
「これは…」
「俺達を邪魔する厄介な組織…というかもう天敵扱いでいいよね?
13機関の情報をゲットできた」
「マジで?」
「あくまで一部だけで、すべての構成員のデータは無理だったけどね」
クロロがぺラペラと書類を捲りながら、その情報に目を通していく。
「なるほど…シャル、よくやった」
「どういたしまして」
報告が済んだので、シャルナークは持っていた炭酸ジュースを飲み始める。
「この焼きそば、美味いね。どこの店の?」
「露店で売ってたヤツ。糸目の女の子が調理しててさ、
朝から行列ができているくらい繁盛していたよ」
「パクノダは? 姿見えないね」
「暇だから買い物に行ったぞ。
ちょいと時間かかるかもしれねえって言ってたな」
他のメンバーが各々食事を味わっている中、クロロだけは書類を熟読している。
(こいつらが上位種。リーシェと同じ…)
リーシェと同種族という点で興味はあるが、同時に心に黒い嫉妬の念が込み上げてくる。
いい加減、13機関の妨害には辟易していたから丁度いい。
(手始めに…リーシェと懇意のある人物を狩ってもいいな)
そうすれば、彼女がどんな形であろうと蜘蛛に接触してくるはずだ。
そんな物騒な事を考えながら、クロロはふっと口端をあげた。
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