第3章【6】策を練る団長と、行方知れずの団員


これはちょっとだけ昔の話。

ある所に【流星街】と呼ばれる大きな街がありました。

そこは、他の国から隔絶された特殊な場所。

ずっと昔から、あらゆるものが捨てられる事を許された地域でした。


たくさんの国々から、色んなモノが捨てられました。

古くなった衣類や食器、家具といった日常に欠かせない物。

一世を風靡したおもちゃやゲーム機、通信機器と…何かしらの使い道があって役に立つ物。

武器や劇薬、爆弾などの使用注意な危険な物。

そして…捨てられた赤ちゃんやある理由から国を追われる事となった人までも。



ある日、その街に住んでいる男の人があるものを見つけました。

降りしきる雨の中、ゴミの山の片隅で座り込んでいる小さな女の子がいたのです。

その女の子は、瞳に何も映さずにぼぉーと灰色の空を眺めていました。


随分前に奥さんを失くし、子どももいなかった男の人はその子を不憫に思い、

家まで連れていきました。

びしょびしょになった女の子をタオルで拭いて上げ、「ココの家で暮らそう」と

優しく頭を撫でたのです。



男の人の子どもとなった女の子は、彼の愛情と教育を受け、

徐々に普通の子どものように成長していきました。


女の子はとても頭が良く、お医者さまであった父親の知識を吸収していき、

数年で男の人のサポートをするようになりました。


その反面、女の子は喋るのが得意ではありませんでした。

彼女自身は心の中ではとってもお喋りなのに、それを言葉にするのが苦手だったのです。

…喋る事自体が「面倒くさかった」というなんとも呆れた一面もあったようですが。



そんな女の子にも友達がいました。

ゴミの山で生活に必要な物を集めていた際に、知り合った比較的同じ世代の子ども達です。


…とはいえ、最初は女の子は彼等に興味を抱いていた訳ではありません。

なんとなく、自分の住んでいる区域にやってくる別の区域の子どもだな…というのが

正直な感想だったようです。


そんなある日、その子ども達が悪い大人に攫われそうになりました。

悪い大人は、子ども達を悪だくみに使おうとしていたようです。

現場を目にしてしまった女の子はビックリして、どうすればいいのか分からずに混乱してしまいます。

そして、近づいてきた悪い大人に対して…その身に秘めていた力を暴走させてしまいました。


悪い大人は退治できました。

でも、女の子は意識を失ってしまいます。

父親である男の人は、女の子が自分の身を守れるように…

力を暴走させずにコントロールできるように修行をつける事にしました。

ちなみに、女の子は基礎となる修行を一年とちょっとで終わらせたようです。



そして、その出来事がきっかけで、助かった子ども達とちょっとずつ仲良くなっていきました。

特に、黒髪の男の子は女の子に積極的に話しかけてきました。

何を隠そう、黒髪の男の子は…初めて女の子を見た時から、ずっと彼女の事が大好きだったのです。





それから、ほんの少し年月が経ちました。

女の子は旅に立つ事を決意しました。


…女の子が旅に出る理由。

それはかなり複雑で、ちょっと悲しくて、そして胸が高鳴る出来事があったから。

キラキラして輝く希望と、どろりと恐ろしい野望。

うまくまぜまぜした相反する感情を胸に抱いて、女の子は住み慣れた街を離れようとしました。


そんな彼女を…黒髪の男の子は呼び止めました。

女の子に外の世界へ行ってほしくなかった。

女の子と離れたくなかった。

ずっと傍にいてほしくて…。



『やらなきゃいけない事ができたから』



けれども、女の子の意志はダイアモンドの如く固かったのです。

黒髪の男の子は彼女の心の強さを感じ、それでもあきらめきれなくてこう言いました。



『いつか迎えに行く』



女の子はそれを軽く受け流して、早歩きで旅立っていきました。

男の子は彼女の背中を見ながら思いました。



―――《絶対に、女の子と再会する》



そう決意した男の子は、暫くして仲間達と一緒に旅立ちました。

やがて、彼と仲間達は世界に名を轟かす事となりました。

…最強で最凶の【盗賊団】として。



そして…一足先に生まれ故郷を出た女の子もまた、色んな国々を旅していきました。

父親から教わった知識と技術、道中で学んだ事を自らの力にし、

たくさんの人々の病や怪我を治していきました。


後に、女の子も世界で有名な人物として知られるようになります。

…変わり者だけれど、数多の知恵と神の手を持つ【名医】として。



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