【前日譚②】きっかけはこねこにん 2


一方その頃、向日葵は…学校のグラウンドにいた。



「赤也君、遅いな…」

「連絡した本人が遅刻してどなすんや~」



肩につかまっているヴィンセントがキョロキョロと辺りを見回しながら言う。

話は30分前にさかのぼる。

ヴィンセントが、桜とケルベロスに事情を説明していた時…電話が鳴り響いた。

向日葵が受話器をとると、電話の主は切原からだった。



『向日葵、俺さっき変なのと遭遇したんだ…えっとなんていーか…

ああ~、とりあえず、学校のグラウンドにきてくれ!』



そう言うと、赤也は電話を切ってしまった。



「変なモノ…って何だろう?」


「話を聞かんとさっぱり分からんけど…

クロウカードの可能性も視野に入れといた方がええな」


「…そうだね」



ヴィンセントと会話しながら、向日葵は足元付近でうろうろしているソラに視線を移す。



「ねえ、ふーちゃん…もう少し待てる?」

「うん!」



ニパッと満面の笑みを浮かべるソラ。



「なんやこの子、聞き分けええ子やな~」

「きっと、育てている人達がいい人なんだよ」



子どもは、両親や周囲にいる人々、育つ環境が人格形成に影響してくる。

ソラは、思慮分別のついた保護者が育てているのだ…と向日葵とヴィンセントは傍から見てても分かった。



「おーい、向日葵ぃ―――!」

「あっ、赤也君」



丁度いいタイミングで、切原がやってきた。

息切れして、今にもバテそうな雰囲気からもうダッシュで走ってきたのが想像できる。



「だ、大丈夫…?」

「ぜーはー…ちょっと…やばい」

「らいじょぶ?」



切原は息を整えている最中…向日葵以外の誰かに心配された事に、ん?と視線を変えていく。

向日葵…ヴィンセント…ねこの服を着た子ども……子ども!?



「ああぁああああ!!??」


「ふぅ!」



先程まで声すら掠れていたのに、有名人を見つけたかの如く、仰天の声を出した。

その大声に、ソラは驚いてしまい、向日葵の脚の後ろへ隠れてしまう。



「そ、そ…その子だよ! 朝俺が見た『エクレア』の子!」

「『エクレア』ちゃう、それお菓子やし…“エクレシア”や」



はわはわ…と落ち着かない切原の言葉の間違いを指摘するヴィンセント。



「このお兄ちゃんはいい人だよ」

「ふぅ…?」



向日葵の脚からひょこっと顔を出して、切原の方を恐る恐る様子を窺うソラ。



「ど、どうもー」



場の空気を感じ取ったのか、切原はぎこちなく笑って手を振ってみた。

ソラはうーと左右に小首を傾げ、一歩ずつ前へでていく。



「にーたん、ええひと?」

「う、うん…そーだよ」



ソラは、向日葵の言葉をそのまま疑問形で尋ねてきた。



「ふぅー」



紅葉のような手を差し出してきた。

握手しよう、という事だろうか…。

切原は、慎重にその手を掴んだ。



「あーい~vv」



ニパッと満面の笑顔になるソラ。



「よかったね、赤也君」

「どーやら、認めてくれたようやで」

「…そっか。よろしく!」



自らを好意的に受け入れられた事を感じ取り、切原も自然と笑みを浮かべる。



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