第3章【5】幻影旅団の目的と、エクレシアとの因縁


向日葵はハッとした。



【幻影旅団】がわざわざ世界を渡る“理由”



それは、別の世界にしか存在しない【特別な宝物】を探しているからなのでは…と推測していた。

ゼクシオンの回答で、その考えが間違いではなかったのだと改めて認識した。

同時に…彼等の求めているものが『生きている人』であると分かり、

じわじわと侵食するような不安が胸に押し寄せてくる。



「…ていうか、狙いが【種族】って時点で…グロ表現がきそうでこわすぎる!」

「クルタ族の時みたいに、身体の一部を狙ってるとか?」

「やべぇよ…身近に事件が起きるの待ったなしじゃねえか」



切原は顔色が青に染まっていき、ガタガタと全身が震えている。

丸井は部活の時以上に汗を流し、少しでも落ち着こうとダスクが運んできた

一口サイズのマフィンやウエハースを口に入れて咀嚼する。

ジャッカルは急いで携帯の画面を開いて、今日のニュースを調べていっている。



「…その種族って、俺らの知る人達ですか?」



仁王が踏み込んだ質問をした。

向日葵は両手をギュッと握りしめる。



「はい。【幻影旅団】の標的はエクレシア…リエさん達ですよ」



やっぱり…と向日葵は顔を強張らせる。

【幻影旅団】もまた、エクレシアを狙っていた。



「狙いは…特定の誰かなんか、それとも全員か?」

「とても面倒な事に…後者です」



ヴィンセントが恐る恐る訊くと、ゼクシオンは苦虫を嚙み潰したような顔でそう答えた。



「マジで…!」

「でも、蜘蛛だからな」

「うん、なんでもやりそうだ…」



切原達は驚きつつも納得の表情で、説明を聞いている。

彼等の情報を(一方的に)知っているがゆえに、

こちらの一般常識が通用しないと分かっているからだ。



「それにしても…蜘蛛はなんでエクレシアにこだわっとるんや?

ぎょうさんリスクもあるのに、世界を越えてまで執着する理由はなんや?」


「…それは、認定されているエクレシア九名の中に同郷の者がいるからです」


「な、ホンマか!?」

「えっ…?」

「…なんじゃと!」

「同郷って…あの街の人って事ッスよね?」

「…そうなるよな」

「まさかの急展開だろ…」



思いもよらなかった答えに、質問をしたヴィンセントは勿論、向日葵達も衝撃を受けた。



「そのエクレシアは…彼等と同じく流星街生まれです。

彼等と幼馴染だった彼女は、不幸にも突発的な出来事で亡くなってしまい、エクレシアとなりました。

彼等…特に団長のクロロ・ルシルフルは、エクレシアとなった

その女性を組織に引き入れたいようです」


「なるほどのぉ…だから、か」



【幻影旅団】とエクレシアの因果関係。

事情が明るみになった事で、仁王は疑問点が解消されたのか合点がいったようだ。



「うーん? そうなると、他のエクレシアは…?

狙っているのは全員なんだよな?」



丸井が眉を顰めて、新たに浮上した疑問を口にする。

幼馴染を仲間に引き入れたいだけなら、他の八名は標的対象から除外するはずだ。



「気分のいい内容ではないので、お勧めしませんよ」



ゼクシオンが事前に警告してきた。

向日葵達は、彼の言わんとしている事がどういう意味なのか…なんとなく察した。



「クルタ族のように…でしょうか」


「似たようなものですね。

蜘蛛は、幼馴染を除いたエクレシアを【命の結晶華(リーベン・ブリューメ)】にする気ですから」


「なっ…!?」



ゼクシオンが言った単語に、ヴィンセントが絶句した。



「ヴィンセント、その『リーベン』…っていうのはどういう物なんだ?」



ジャッカルがさりげなく尋ねると、ヴィンセントは難しい表情で口を開く。



「簡単に言うと…エクレシアみたいな神族が器となる肉体を失うと、魂を守るために結晶石となる。

その結晶石は見た目が宝石みたいにキレイでな…

【華のような結晶となった命】という意味からその名がついたんや」



その事を聞いた向日葵はゾッとした。

脳裏にリエやソラ、コゼット…知り合ったばかりのエクレシア達の姿が浮かび上がる。

【幻影旅団】が彼等を狩ってしまったら…と想像しそうになり、緩慢に首を左右に振った。



「幼馴染以外は宝石ルート…ホラー系のゲームのバッドエンドかよぃ!」

「えげつない、えげつなさすぎる…」



丸井とジャッカルがドン引きしている。

例え、神族が相手であろうと【幻影旅団】は容赦ない姿勢である。

その事実を告げられ、向日葵もドキドキと胸が張り詰めてくるのを感じている。



「蜘蛛が向日葵に接触しようとしたんは…エクレシアとつながりがあるからですか?」


「貸本屋で出逢ったのが偶然なのか、意図があったのかまでは分かりません。

ただ…事前に情報を入手していた可能性はあります」



【幻影旅団】は、こちらの情報をどのくらい把握しているのだろうか…?

静かだった水面に大きな石が投げ込まれ、水飛沫を立たせるように、

向日葵達の心を大いに騒めかせていく。



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