第3章【5】幻影旅団の目的と、エクレシアとの因縁
「こんにちは。ゼクシオンさん」
「邪魔しとるでぇー」
「「「「お久しぶりです」」」」
「こちらこそ、お待たせして申し訳ありません」
向日葵達のいる部屋に来るまで時間がかかった事を謝ると、
ゼクシオンは彼等の向かい側にある一人用のソファーへ座る。
「あの、いつもお世話になっています。
これ…よろしければ、皆さんで食べてください」
「これは…ありがとうございます」
向日葵が十三人分の手作りクッキーが入った手提げ袋を渡した。
ゼクシオンは中身を確認するや、穏やかな表情を浮かべて御礼を言った。
「嬉しいですね。…きっと、他のメンバーも喜びます」
「よかった…」
「ロクサスとシオン、デミックスは特に。
こういうプレゼントが大好きなんですよ」
ゼクシオンの言葉に、笑顔でクッキーを食べるロクサスとシオンの様子が目に浮かんでくる。
向日葵の記憶が正しければ、デミックスは明るい性格の弦楽器を操る青年だった。
何故だろう…彼のはしゃぐ姿が、頭の中ですんなりとイメージできてしまう。
「失礼。皆さんにおもてなししなくては…ダスク!」
ゼクシオンの呼びかけに、彼のもとに白い不思議な生物がうねうねと数体やってきた。
向日葵達は「わっ…!」と小さく悲鳴を上げたり、目を大きく見開いたりと…
未知なる存在に驚愕してしまう。
「お客様にお茶をお願いします」
《かしこまりました》
ゼクシオンの指示に、ダスク達は素早くその場から立ち去った。
「ぜ、ゼクシオンさん…あのヒト?達は…」
「あぁ、彼等は【ダスク】といって、我々の配下についている下級ノーバディです」
初めて見る生物に、向日葵は目をぱちくりさせながら尋ねると、ゼクシオンがすぐに答えてくれた。
「か、カキュウのーばでぃ?」
「ジャッカル、ノーバディって何なんだ?」
「英語だと『誰でもない』って意味だけどな…」
【ノーバディ】という単語…アクセルも以前、組織の事を説明する際に口にしていた。
あの時、彼は『13機関のメンバーのほとんどは【上級ノーバディ】であり、
人間とは違う種族』だと言っていた。
そうなると、上級と下級で姿形が異なるのはどうしてだろう?
「とりあえず、あの謎生物は13機関の部下って事じゃな」
ほとんどの者が頭に疑問符を浮かべたり、首を捻る中、仁王は何か察したのか簡単に結論をまとめた。
ゼクシオンも「その通りです」と首を縦に振ると、補足するようにこう付け加えた。
「僕達の事を語るのは…また今度にしてもいいですか?
説明するにはかなり長くなってしまいますので…
あなた方に負担をかけさせたくありません」
‟だから、深く追及するのはやめてください”
暗にそう言われたのだと、向日葵は理解した。
切原、丸井、ジャッカルも同様だったようで、彼等はそれ以上は訊こうとはしなかった。
「ほんなら、ゼクシオンの兄ちゃん…あの件について話し合わんか」
ヴィンセントが話の切り替えをするように、ゼクシオンに勧めた。
「はい。本題に入りましょう」
真剣な表情のゼクシオンに、向日葵達の間でも緊張した空気が流れる。
「まずは…向日葵さん。貴女が【幻影旅団】について知っている事を全て教えてください」
向日葵は大きく頷くと、自分の知る情報を順々に話していった。
…【幻影旅団】がこの世界の漫画に登場している事。
…その漫画の中で、【幻影旅団】の団員は最新話の時点で二名が死亡し、一名が脱退。
入れ替わりに一名が新しく入団した事。
…漫画に描かれていた、各メンバーの明らかになっている能力。
…現在は【会長選挙戦】編が終わったところで物語がストップしており、
その後の流れはまだ分かっていない事。
「なるほど…非常に興味深い」
包み隠さずに全て打ち明けると、ゼクシオンは顎に手を当ててそう言った。
「ある世界の出来事が、別の世界ではフィクションの物語として
書物になっている事例はたびたび聞いた事があります。
しかし、あの盗賊団の情報がこんな形で入手できるとは思いませんでした」
「あの…お役に立ちましたでしょうか?」
「はい。彼等の情報は大体は掴んでいますが…
なかなか手強い組織で、個人個人の情報を得るのは難航していました。
今回、各団員の能力が分かったのは朗報です」
ありがとうございます、とゼクシオンが頭を下げた。
向日葵はビックリしてしまう。
まさか、そんなに感謝されるとは思わなかったのだ。
「ゼクシオンさん…13機関は蜘蛛の情報をどこまで知っとるんですか?」
タイミングを合わせたのか、仁王が会話に参加するように質問をしてきた。
「そうですね…では、交代しましょう」
仁王の要望に応えるように、ゼクシオンは掴んでいる情報について話していく。
「まず、どうして【幻影旅団】が世界を渡る事ができるのか…について話します」
いきなり、重要なネタを公開するとは…!
向日葵達は聞き漏らさないように、しっかりと耳を傾ける。
「【幻影旅団】は、元いた世界でとある有名な魔術師が創作した魔法道具を盗みました。
その道具は回数に制限があるものの…世界を移動できる効力があり、
彼等はそれを利用して現在進行形で世界の壁を越えているのです」
「そ…それで、この世界に来れたんだ…」
「謎が解けたナリ」
「しかも、移動手段が盗品…」
「いかにも蜘蛛らしいッス」
「やべぇ…鳥肌立ってきたよ」
「…【幻影旅団】の移動手段は分かった。
そうなると、次に気になるんがその目的やな」
腕を組んだヴィンセントがその疑問を口にすると、ゼクシオンはすぐに言葉を続ける。
「質問にお答えしますと…
【幻影旅団】が世界越えをする最大の目的は、ある種族を狙っているからです」
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