第3章【5】幻影旅団の目的と、エクレシアとの因縁


「…ドキドキする」

「同じく」



向日葵の言葉に、切原は共感する。

予定通り、ゼクシオンがいる場所へ行く事になった。


本日は金曜日。

学校が終わり、向日葵は帰宅して私服に着替えた。

放課後の部活は『家の用事があるために休む』と、弓道部の人達に事前に知らせておいたので問題ない。

向日葵の家で、他のテニス部のメンバーも合流して、現在目的地へ向かっている最中だ。



「ジャッカル、13機関のゼクシオンって…どんな人だったっけ?」

「おいおい、覚えてねえのかよ…」


「いや、アクセルの兄貴やロクサスとシオンはよく顔合わせてるけど、

他の人はあのハートレス事件の時の一回だけだろ。

十人も一気に覚えられねえよぃ」



今回、一緒に行くテニス部のレギュラーメンバーは…仁王、切原、丸井、ジャッカルである。

メンバー全員で行くと目立つ理由から、話し合った結果…この人選で行く事となった。



「向日葵、それは?」


「昨日のうちにお父さんと一緒に作った手作りクッキーです。

13機関の人達にはいつもお世話になっているから…その御礼をしたくて」



今回だけでなく、異世界関連の出来事では色々と助けてもらっているので、

贈り物を差し上げる事にした。


父には【学校の行事で知り合い、親しくなったボランティアの人達】だと説明した。

お菓子作りだけでなく、小分けにした十三人分のクッキーをコンパクトな箱に詰めて、

家にあった包装紙で包んでリボンでラッピングしてくれた。



「向日葵はきちっとしとるのぉー。俺も見習わんといかんなり」

「そ、そんな…」

「照れとるなー」



頬を赤らめる向日葵の頭を仁王が優しく撫でる。

二人の甘い雰囲気はすっかり慣れているため、切原達は生温かい眼差しを向けつつも歩を進めていく。



「此処のようやな…」



鞄の中に隠れているヴィンセントが顔を出して、その建物を凝視する。



「…大きい家ですね」

「見事な物件なり」

「これ新築ッスよね」

「つーか、どうみても周囲と合わせる形でデザイン決めた感あるよなー」

「逆に目立ってたらダメだろ」



この世界の13機関のアジトに相当する場所は…大きな新築の二階建ての一軒家だった。

モダンなデザインで、花や木を植えている庭付きだ。

玄関の鉄門は閉ざされており、そこから花壇の草むしりをする大きな体格の男性が見えた。



「あっ…あの人は」

「しっかり覚えとるでぇー、あのごっついおっちゃんも13機関の一人や!」

「すみませーん!」



切原が声を上げて呼びかけると、その男性はこちらに目を向けて作業を中断した。

徒歩でこちらへやってくると、門の一歩手前で立ち止まった。

改めて間近で見ると…背もかなり高く、筋骨隆々した逞しい身体の主だと分かる。



「何か御用か?」

「俺達、ゼクシオンさんに会いに来ました!」

「以前、ハートレスの事件の時にお世話になりました」


「…ああ、あの時の子ども達か」



向日葵達の言葉で、その男性はハートレス退治の際に出会った事を思い出したようだ。



(確か、この人の名前は…レクセウスさんだったよね)



一回しか会っていないが、向日葵は十三人の顔と名前は憶えている。

すると、男性…レクセウスは確認するように問いかけてきた。



「ゼクシオンとはアポはとっているのか?」

「昨日、電話で約束しました」

「ならば、【合言葉】は?」



向日葵はゴクッとつばを飲み込み…緊張した表情でこう答えた。



「【光と闇は表裏一体】」

「…よし、入ってくれ」



レクセウスは「正解だ」と満足そうに頷き、門を開けてくれた。



「「「「「お邪魔します」」」」」

「邪魔するでぇー」



向日葵達は家の中へ案内された。



「ここで待っててくれ」



広いリビングルームに通され、レクセウスからゼクシオンが来るまで部屋で待つように言われた。

彼が退室した後、ソファーに腰を下ろした切原がそわそわしながら口を開いた。



「なんか…今の俺達の状況って、漫画やドラマとかであるのと似てないッスか?」

「俺もそう思った。ライバルとか敵の屋敷に招かれて勧誘を受ける的な展開だよな」

「いや、協力者だろ」



後輩と丸井の会話に、ジャッカルはさらりとツッコみを入れる。



「なぁ、もう出てええやろ?」

「そうだね」



ヴィンセントの要望に応えて、向日葵が鞄を開けた。

狭い空間から出られて、ヴィンセントは解放感からうーんを背伸びをする。



「ぷはぁー、外の空気はうまいなぁー」

「鞄に入って、そんなに時間経っとらんじゃろ」

「せやけど、窮屈なのは嫌やわ」



そう言いながら、一、二、三…とヴィンセントは宙に浮いた状態で体操を始める。



「なぁ、仁王兄ちゃん。暁はどないしたん?」



仁王と契約を交わしている炎の狼が姿を見せていない事を不思議に思い、

ヴィンセントは質問を投げかけた。


そういえば、昨日から暁の姿が見えない。

仁王の身体に留まっているのか…と向日葵は思ったが、仁王が被りを振ってそれを否定した。



「調べたい事あるって、今はどっかへ出張中じゃ」

「暁さん…大丈夫かな」



暁が契約者の傍から離れるなんて、よほどの案件なのだろう。

心配そうな表情を浮かべる向日葵に、仁王はフッと口元を緩める。



「暁は強い。向日葵も知っとるじゃろ?」

「…そうですね」



暁は、今の自分達では到底及ばない力の主だ。

…そう簡単にやられたりはしないだろう。

仁王の言葉を聞いて、その事を思い出した向日葵は気が楽になった。



「皆さん、いらっしゃいませ」



…まさに絶妙のタイミングだった。

リビングルームの扉が開いて、ゼクシオンがやってきた。



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