第3章【4】尾行者の正体と、ライバル少女のピンチ
―――【幻影旅団】
通称「クモ」
盗みと殺しを主な活動とする盗賊集団。稀に慈善活動もする。
13人の団員で構成されており、団長を蜘蛛の頭、団員を12本の蜘蛛の脚に見立てている。
創始者 兼 現在の頂点(トップ)はクロロ・ルシルフル。
メンバーのほとんどが【流星街】と呼ばれる特殊な街の出身者であり、仲間意識が強い。
しかし、部外者や敵には残虐非道であり、全く関係の無い一般人に対しても容赦無く攻撃し、
殺す事にも躊躇いを見せない。
団員の戦闘能力は個人毎にとても高く、その世界ではAクラスの賞金首として指名手配されている。
そのため、熟練ハンターさえも迂闊に手が出せない。
*** ***** ***
「な、なんちゅうおっかない連中や…」
向日葵と切原の単行本や公式ガイドブックを使った解説に、
ヴィンセントはわなわなと全身を震わせた。
「意外じゃな。ヴィンセントが【HUNTER×HUNTER】を読んどらんかったとは…」
「あんなぁー、仁王兄ちゃん。いくらワイでも本棚にあるの全部見とるわけやないで」
ヴィンセントは眉を顰めて言う。
「今、ヴィンちゃんは別の漫画に夢中なんです。
一つの作品を最新刊まで全部見てから、違う作品を読み始めるんですよ」
「作品をぎょうさん並行して読むの疲れるさかい。
気に入ったもんから、順々に読み込んでいくんがワイのスタイルや!」
向日葵とヴィンセントの言葉に、仁王と切原はなるほど…と頷く。
「ほんで、ワイが好きなんはアクション系や。
他のジャンルは絵とか話の好みが合わん限り、スルーしとる」
ヴィンセントは、向日葵と同じく週刊少年ジャンプの作品が大好きだ。
しかし、読むのは自分の好きなタイトルや展開が気になる物語のみらしい。
「でも、封印から目覚めてずっとジャンプ読んどるけど…
これが載っとるの見た事ないわ。完結作品なん?」
「うーん…まだ終わっていないよ」
「そうそう、ただちょっとなぁー」
困った表情の向日葵と神妙な面持ちの切原に、ヴィンセントは小首を傾げる。
「この漫画はジャンプの中で特殊なタイプでな…
今は休んどって、ちょいちょい再開して話が進んでいくスタイルなんじゃよ」
仁王が説明するように、【HUNTER×HUNTER】は諸事情で休載している。
物語の作者が重度の腰痛を患っており、精神的な不調も重なった事が理由のようだ。
不定期に連載は再開するが、一定の話が終えるとまた休載してしまう
…そんな流れが継続している。
ファンの間では、その状況が当たり前になっており、長く話が進められると
逆に驚いてしまう感覚となっているのだ。
「でも、内容はすげー面白いんだ。
今、説明した【幻影旅団】も人気が高いんだぞ」
「全員で十三名…絵見るだけでも、個性的な面子なんがよぅ分かるわ」
十三名の団員のイラストを見ながら、ヴィンセントは難し気な表情を浮かべる。
「…そろそろ本題に入ろうか」
「向日葵、あの店で会った団員は何名じゃ?」
「四名です。その人達は…」
ガイドブックにある団員の中から、向日葵は四名を指差していく。
「クロロとマチ、シャルナーク…それとフィンクス!?」
「…組み合わせがやばいなり」
切原は名前を読んでいくや顔が蒼白色に染まっていき、仁王は顔を強張らせる。
「この四人の能力、そんなにやばいんか?」
「うん。クロロさんは勿論だけど…他の三人の人達もすごいよ」
【特質系】【変化系】【操作系】【強化系】
彼等はそれぞれ四系統の念の使い手で、かなり強いハンター(念能力者)であっても
苦戦する程の実力者だ。
特に、団長であるクロロの能力は制約があるものの、対象者の念を盗んで使用できる
【盗賊の極意(スキルハンター)】は強力かつ厄介だ。
「でも、なんで旅団はこの世界にいるんだろう?」
「そうだよ! そもそも、どうやって世界を越えたんだ!?」
…【幻影旅団】はどうやって、世界移動したのか?
…何の目的でこの世界に降り立ったのか?
「考えても埒が明かん。明日まで待つしかないな」
先程、電話でゼクシオンから提案された。
明日、学校から帰宅したら指定した場所へ来てほしいとの事。
『向日葵さん達の今後の事について、じっくり話し合う必要があります。
参加できる方だけでいいのでお願いします』
主に貸本屋や【幻影旅団】への対策がメインだが、これから遭遇するかもしれない
異世界渡航者への対応に関しても話し合う事となった。
「私とヴィンちゃんは行きます。
先輩達はどうしますか?」
「俺は行くなり」
「俺も…あっ、他の先輩達にはメール送っとく。
届いたら向日葵に連絡するから」
玄関で明日の日程について話し合う向日葵達。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「おっ、来たのかな!」
「誰が来たんじゃろなぁー」
仁王と切原が帰宅の際に【幻影旅団】と遭遇する可能性を考慮して、
ゼクシオンが機関員の一人を護衛に派遣してくれる事になった。
向日葵がゆっくり扉を開けると…
「よっ、久しぶり」
「アクセルさん!」
「おっ、兄貴!」
「どうも、お世話になります」
そこには、アクセルが立っていた。
「おー、アクセルの兄ちゃん。
今日はいつものとちゃうな。イメチェンか?」
アクセルはいつもの黒コートではなく、私服である。
見慣れない彼の姿に向日葵達は目が釘付けになる。
「黒コートばかりだと目立っちまうだろ。
それと、俺達は任務以外では普通に私服着てるからな」
「そうなんですか…」
「おー、すげー新鮮! カッコいいッス!」
切原からキラキラした眼差しを向けられ、アクセルは満更でもなさそうだ。
「じゃあ、よろしく頼むぜ」
改めて、仁王と切原はアクセルが同伴する形で帰宅した。
向日葵が手を振って見送る中、隣で宙に浮いているヴィンセントがこう言った。
「向日葵、夕飯食べたら話したい事があるけど、ええか?」
「うん、いいよ」
ヴィンセントのお願いに、向日葵は首を縦に振った。
・
