【5】こねこにんとの一日
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一週間経過して、ようやく名前は体調が回復した。
「ありがとうございました。私で良ければ、手伝える事があったら言ってください」
元気になった名前は、手厚く介抱してくれたフィンにお礼をしたいと申し出た。
…といっても、お客様にあたる人に家事手伝いをさせるのは気が引ける。
その気持ちを遠回しに伝えるが、名前は小さく首を左右に振った。
「元の世界に戻れるまでまだまだ時間がかかるんでしょう?
その間、居候になるのにお世話になりっぱなしなんてとんでもないです!」
簡単な雑用でもいいので、やらせてください!
…と真剣な眼差しで意気込む名前に、フィンは「あ、はい…」と少々気後れする。
「じゃあ…私、今から外の植物の世話をするので、ふーちゃんと遊んでてくれますか?」
「はい、任せてください!」
名前が言うには、あちらの世界で徐倫や静の世話をしていたみたいだ。
それなら、ふーちゃんを任せても大丈夫かな…と思い、フィンは外へ出て行った。
「ふーちゃん、何して遊ぶ?」
ワンダニャンの背中をもふもふしているソラを微笑ましく見ながら、名前は尋ねてみた。
「ふぅ~…」
ソラは目を細めてまったりしている。
…あんまり動きたくなさそうだ。
「ほーら、うさちゃんだよー」
おいてあったぬいぐるみの中から、うさぎのぬいぐるみを片手に持ってソラに近づけてみる。
すると、ソラは大きな瞳をパチッと開けて、それを見入る。
「ふぅ~! からしちゃーん」
「えっ…カラシ?」
ソラがぱぁ…と向日葵のような笑顔になり、そのうさぎのぬいぐるみの名前を呼んで触ろうとする。
「この子、『からし』…ちゃんってお名前なの?」
「うん!」
念のためにもう一度訊くと、ソラは笑顔でコクッと頷く。
真っ先に頭に浮かんだのは…何故、香辛料の名前をつけたのだろう?
小首を傾げる名前をよそに、ソラは別のぬいぐるみをむぎゅっ…と掴んで
「あんね…こりぇ、しりょ(しろ)~」
白い犬のぬいぐるみだ。
『しろ』―――うん、これは見た目からそう名付けてもおかしくないな…と感じた。
「こりぇ、かきしゅけー」
次はおサルだ。
愛くるしい顔のおサルのぬいぐるみ…首元にスカーフをつけている。
『かきすけ』…サルカニ合戦の絵本を思い出した。
(懲らしめられたサルって、そんな名前ついてたっけ?)
何分、絵本は随分前に読まなくなったため、真偽を確かめられない。
「こりぇ、るりしゃーん」
今度は、キジのぬいぐるみ。
ふと、気付いた。
最初のうさぎを除けば、犬、サル、キジとくれば……
「あっ、桃太郎だ」
「あい!」
「ふーちゃん、すごいね~。桃太郎のお供の名前が言えるんだ~」
「ふぅー!」
褒められて素直に嬉しそうなソラ。
満面の笑みのソラを見て、名前もほやーんと和やかになる。
「桃太郎か…そうだ、絵本読もうか」
「わーい~vv」
名前の提案に、ソラも大賛成のようだ。
名前は「ちょっと待っててね」と絵本を探そうと、本棚のあるところへ向かう。
本棚は、ソラがいたリビングルームから右側の通路を廻り、二つ目の部屋にあった。
「うわぁ…」
名前は感嘆の息を漏らす。
この家は、一部屋ずつの面積が広いのか、二つ目の部屋に設置されている本棚はたくさんある。
まるで図書館にいるみたいだ。
「すごい…あっ、この本、DIOがほしがってた小説!」
パラレルワールドにもあったんだ…この小説、と名前は不思議と感動がまざった感情が生まれる。
彼女が手に取った本はシリーズものの小説で、一冊毎に物語が完結する作品だ。
主人公は同じだったり、その都度違ったりするものの、登場人物の複数は大体共通している。
冒険物が主体だが、シリーズの中には恋愛要素も含まれていたりと、大人でも楽しめるようになっている。
ちなみに、名前が気に入っているのは第25作品目である。
一人の天使と人間の王との種族を超えた恋愛とその駆け引きが見物だ。
「これの…27番目の物語、もしかして25番目の続編かな?」
パラパラめくって、見覚えのある登場人物の名前がちらほら出てくる。
そうだとしたら、一気に熟読したいが……
「…っていけないいけない。絵本探さないと」
横道に逸れそうだった。
早く絵本を数冊ほど持って、ふーちゃんのもとへ戻らなくては…と名前は本の背表紙を見ながら探していく。
すると、背表紙に手書きの番号が書かれているものが視界に映る。
なんだろう…と引き抜いてみると…アルバムだった。
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