ふたつのステラ 【arcus caelestis(アルクス・カエレスティス)】
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「じゃあ…DIOはもういないんだ」
この世界には…と悲しそうに、名前は言った。
突然、彷徨いこんだ場所もまた、『ジョジョの奇妙な冒険』の世界だった。
フィンは丁寧にかつ親切に教えてくれた。
――― この世界の情勢を。
フィンが言うには、自分とステラ、その他少数のイレギュラーな存在がいる以外は、名前のいた世界と変わらないという事。時間軸は、5部の抗争以降であり、パッショーネのボスはつい一ヵ月前に代替わりした事。
そして、ジョースター家は生存しているという事だった。
分かっていた。
並行世界なら、第3部のあの戦いの結果は…違うはずだ。
フィンは、DIOとは友達関係だった。
しかし、考えの違いから、承太郎の味方になったと告げた。
そう言われれば否応にも察してしまう。
―――“DIOが敗北した”という事を。
「DIO…」
「憎いですか? 私が…」
恋人の名前を切なそうに呟く名前に、フィンが冷静な態度で尋ねてきた。
突如、聞かれた問いに対し、名前は戸惑いを顔に表す。
「もし、貴女がDIOを倒した私が憎いなら…体調が回復次第、此処からでていっても構いません。
もしくは…仇として戦いますか?」
「そ、そんな…恩人相手に戦うなんて…しません! それよりも…なんでそういう事を言うの?」
「恋人なのでしょう?
…この世界のDIOは、貴女の世界の彼とは違うかもしれない。でも、同じ魂には変わりない。
愛おしい人を失う原因をつくった人物に普通、いい印象は浮かばないでしょう」
確かに、彼女の言う事は尤もだ。
名前は、両親をどうにもならない事情で亡くしてしまった過去がある。
一時的に敵対した事のあるポルナレフや、まだ面識はないけれど、エルメェスもまた、理不尽な理由で家族を殺された。
大切な人を事故や事件で失う悲しみは強烈なものだ
…己の身を切り裂かれる位、計り知れない精神的なダメージをくらってしまう。
フィンが承太郎達とともにDIOを倒した事は、名前にとって悲しい事であり、辛い事実だ。
けれども……
「私は…貴女を恨みません」
「どうして?」
「DIOは、もともと承太郎に倒される運命だった。
それが私が知っている本来の物語の結末。
でも、私は…DIOに生きていてほしかった」
思えば、トリップのきっかけはささやかな願望だった。
“DIOが生きている世界を見てみたい”
本来の歴史の主軸を変える事は許されないのは分かっている。
DIOがこれまでおかしてきた罪もまた、許されるべきではない事も…。
それでも、名前は、DIOが違う形でジョースター家の因縁から解放される事を願った。
だから、危険を承知の上で自らのスタンドを使って、DIOを生かしたのだ。
「フィンさんは、DIOをなんとか説得しようとしていた…貴女の話を聴いててそう感じたの。
でも、DIOは…考えを変えなかったんだよね」
名前の言葉に、フィンは微かに目を見開くと哀しそうな笑みを浮かべ「はい」と頷いた。
「私がDIOを守りたいと思ったように、フィンさんには、フィンさんの守りたいモノがあった。
だから戦わなきゃならなかった。
…DIOがいない事は悲しいです。
でも、貴女も同じ位辛い思いをしたと思う」
袂を分かったはずのDIOを、フィンは今でも一人の友として見ている
…それは、この世界のDIOにとって救いなのではないか。
死ぬその直前まで相手を憎んでいるよりも、ずっとマシな事だ。
「だから…私はフィンさんを恨みません。
その代わり…この世界のDIOや他の人達の事をもっと教えてください。
少しでも、貴女の事も知りたいから」
名前の表情を見て、フィンは悟った。
彼女が、全てを受け入れた上でそう発言しているのだと。
寂しさを含んだ綺麗な微笑みを前に、フィンは悟られないよう、心の涙腺を抑えるのに必死だった。
【それでも心は痛い】
それから、数時間経過しても…フィンと名前の談話はまだまだ終わらない。
「えっ…DIOってそういう愛称で呼ばれてたんですか!?」
「はい、実はさっきから呼ぶのを控えてたんですよ。
だけど…やっぱり、あの人はこの呼び方でないとしっくりきません」
ふふふっと笑いながら、フィンはこの世界のDIOがどういうあだ名で呼ばれていたのかこっそり教えてくれた。
ちょうど、眠りから覚めたソラが「なにしとるん?」と近づいてきて……
「ふーちゃん、この左の人の名前は?」
フィンは机に立てかけてあった、DIOとプッチが映っている写真を手に取り、ソラに見せてあげた。
「ふぅー、うりしゃーん!」
「う、うりさん…って…ぷっ…」
あのクールで怪しい色気のあるDIOには、あまりにもミスマッチなあだ名だ。
なんて…可愛らしい。
ソラが、元気よく笑顔で答えてくれたのもあり、ますます名前の笑いのツボにはまってしまう。
笑いを頑張って堪える名前を、ソラは不思議そうに見つめる。
そんな二人の様子を傍から観察しているフィンの顔はふふふっ…と穏やかだ。
【To Be Continued… ⇒】
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