【24】契約の儀式、前日
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「ドラえもんの歌ですか?」
フィンにそれとなく経緯を話すと、あぁ~…と彼女は合点がいくように頷くと言葉を続ける。
「名前さんが歌った曲から後に、いくつかオープニングが変わったんですよ」
「やっぱり…」
予想は的中した。
フィンが知っている限りでは、二、三曲ほど移り変わったらしい。
「どういう曲なんですか?」
「そうですね。ひとつは…」
♪♪♪~ ♪♪♪~
フィンが試しに一曲唄ってくれた。
底抜けに明るい感じのメロディで、ドラえもんの世界観にも合いそうだ。
でも、アニメの映像がない状態で初めて聞くと、ドラえもんの主題歌だとは気付かないな…というのが正直な感想である。どちらかというと、N○Kのみんなのうたで紹介されている歌のイメージがした。
「ふーちゃん、どう?」
「ふぅ…?」
フィンが聞いてみると、ソラはこてんと首を傾げる。
その様子から、彼女はドラえもんの曲だと分かっていないようだ。
「なら、これかな…」
♪♪♪~ ♪♪♪~
フィンが二つ目を唄い出す。
今度は、優しくて暖かい雰囲気の曲調だ。
歌詞も分かりやすくて、ドラえもんへの愛情が込められている。
新しい曲なのに、どこか懐かしくて…何より、ドラえもんのオマージュを強く感じさせるものだ。
「りゃりゃりゃーりゃーりゃー♪」
「あ、口ずさんでる…」
「よしよし…これは知っているみたい」
ソラがサビのメロディを唄いだした。
「満足してよかった」と思うと同時に「なるほど、この歌が聞きたかったのか」と納得した。
「もっかい(もう一回)!」
「まさかのアンコール!」
ソラがもう一度歌って、とせがんできた。
「なら、リクエストに応えてこの曲を…」
すると、フィンがふふふっと笑いながら三つ目の曲を歌い出した。
♪♪♪~ ♪♪♪~
思わず、名前はおぉ…と感嘆の声を出してしまった。
とてもテンポのいい、JPOP要素を取り入れている曲だ。
同時に、シンプルで直球な歌詞なので、自然と頭の中に馴染んでいくように覚えやすい。
ところどころに聞き覚えのある昔の曲を組み込んでいるところから、これを制作した人物は、ドラえもんがすごく大好きなのだろう。
全体的に、作品に対する愛が込められている事を名前も感じ取った。
一度聞いたら耳から離れないメロディで、「昔」と『今』を程よく融合させている
…まさに名曲にふさわしいと思った。
「どどどどどど~♪」
「どりゃえもーん♪」
フィンとソラの声が上手く重なり合った。
その数秒後に、名前はパチパチと拍手をしていた。
「どれもいい曲ですね、素敵です」
「ありがとうございます」
フィンの綺麗な歌声で三曲も聞けたので、小さなコンサート気分を満喫できた。
名前がほくほくしていると、フィンの視線が後方へ向いた。
「リゾットさん」
「取り込み中のところ、すまないな」
「いえ、ちょうど終わったところです」
「そうか、ちょうどよかった」
そう言うと、リゾットは持っていたお盆に乗せているカップを差し出した。
「キッチンを借りた。口に合えばいいが…」
手渡されたのはカプチーノだった。
泡立てたミルクがほんのり甘く、コーヒーの風味もあってまろやかな口触りだ。
「おいしい…」
「リゾットさん、ありがとうございます」
「…そうか」
感想を言うと、リゾットは口元を緩めた。
「フィンさん、打ち合わせはもう終わったんですか?」
「はい。後は他の方々と調整するだけです」
フィンと話している傍らで、ソラがリゾットの膝の上に乗っかろうとしている。
リゾットが乗りやすくするために、膝を伸ばしているのを視界に入れつつ、名前は話に耳を傾ける。
「名前さん」
「はい」
「明日の儀式の件ですが、スムーズに進められない可能性があります」
「なんで…」
顔を強張らせる名前に対し、フィンはしぃ…と自らの唇に人差し指を押し当てる。
「ちょっと静かにしててくださいね…」
そう告げると、フィンは小声で呪文を唱えていく。
ほんの一瞬、キィーンと音が聞こえるや周囲の空気が変わった感じがした。
「念の為に、防音の魔法をかけておきました。これで思う存分話せます」
「あの…まさか」
「庭の付近で『誰か』が盗聴していました」
名前はひゅっと息を呑んでしまった。
もしや、モーラが侵入してきたのか…
「あの怨霊の女性ではないですよ」
しかし、名前の不安を消し去るように、フィンはそれを否定した。
代わりに、彼女の口から出た犯人の正体に…名前は驚愕した。
「盗聴していたのは、パッショーネの関係者で…現在のボスの側近ですよ」
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