【23】復讐者のシナリオは大いに狂わされる
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モーラは、死に物狂いで逃走した。
負傷していたため、暫くの間は安全圏内で療養する事となった。
(なんなの、なんなのよ…)
傷を癒す間、モーラはガタガタと恐怖に震えながら思考していた。
…計画は順調だった。予定なら、名前を異世界に送り込んで徹底的に甚振った後、絶望の淵に立たせて魂を消滅させようとしていたはずなのに…。
この世界に足を踏み入れてから、完全におかしくなった。
きっかけは、あの謎のウサギの仮面の女だ。
続いて、コゼットという掃除人と思われる女。
(…おかしい、この世界に来てから…なんであんなに規格外の奴らに遭遇するわけ!?)
元居た世界にいた掃除人とは比べ物にならないくらいに、厄介で驚異的な力を持つ存在。
まるで、自分が小人になったかのような錯覚に陥る程に…。
とてつもない天災に巻き込まれてしまい、瞬時に散ってしまう映像(ビジョン)がよぎり、モーラの戦意を喪失させてしまった。
『一番やべえ終わり方をしたのは…【エクレシア】に出会った奴だ』
(まさか…)
モーラの脳裏に、情報屋の言った言葉が反芻する。
そして、辿り着いたひとつの答えに、彼女の顔は徐々に青で染まっていく。
(やばい、やばいやばいやばいやばい…このままだと、確実に殺られる!)
まだ目的を達成していないのに…
最悪の結末だけは避けなければならない。
それと同時に、モーラは悟った。
DIOへの思い故に、標的を増やしてしまった事が窮地に陥る原因となったのだ。
(名前、あいつだけは絶対に…ッ)
本来の狩るべき相手を思い出し、モーラの心は憎しみが上回り、恐怖を強制的に退かせた。
「傷も治ったし、ここからが本番よ」
憎き相手を頭に浮かべながら、モーラは自分を奮い立たせる。
あの情報屋経由で、名前が現在どこにいるのか…その居場所を特定していた。
(もう小細工なんてしない、すぐにでも殺してやる…!)
しかし、モーラはこの時点で想像もしなかった。
標的がいる場所へ向かい、そこで三度目の恐怖と混乱が舞い込んでくる事を…。
この世界に、規格外な存在がまだいる事実を突きつけられてしまうのだ。
さらにその後で…それらがまだ生温い展開だと思い知らされる。
この先に、待ち構えているある出来事で…
モーラは己の魂が消滅したくなる程の絶望を味わう事になってしまう。
【復讐者のシナリオは大いに狂わされる】
「それにしても…コゼットさん」
モーラの襲撃が未遂に終わり、彼女が逃亡した後の事。
会議室の散乱した書類等を回収している花京院が質問を投げかけた。
「はい、なんでしょう?」
「さっきの亡霊との戦闘の際、どんな魔法を使ったんですか?」
あの時、亡霊に対してコゼットが何かを仕掛けたのは間違いない。
だが、あっという間に勝敗がついたために花京院は勿論、承太郎でさえもどんな攻撃をしたのか分からなかった。
「魔法ではありませんよ」
コゼットは微苦笑して、種明かしをしてくれた。
「私は『コレ』を剣代わりにしただけです」
「コレって…ボールペンで!?」
なんと、コゼットは持っていた文具を武器代わりにして敵に大ダメージを与えたのだ。
花京院はボールペンとコゼットを交互に見比べながら、俄かに信じがたい心情を顔に露わにする。
「さすがに、使い慣れている武器を持っていると警戒されますからね。
相手を拘束するには、死なないように…
身動きが取れないレベルのダメージに抑える必要もありましたから…」
「そ、そうですか…」
さらりと解説してくれるコゼットに、花京院は顔を引きつらせて笑みを浮かべるしかなかった。
「話しているところ、すまない」
その時、会議室の扉を勢いよく開いて、承太郎がやってきた。
書類の束を片方の手に抱えて、長机の上にそれをざっと並べた。
「承太郎…これは…!」
「財団の関係者が調べていた、数カ月間のフィンの周辺の調査結果だ」
書類に記述されている内容をさっと目を走らせるや、花京院は驚く。
イタリアの最大勢力とされるギャング【パッショーネ】の関係者が、フィンに連続して接触していた事が判明した。写真には、その関係者とフィンの姿が映し出されていた。
「フィンの方は?」
「先程、調査員を向かわせた。携帯で連絡を取っているが…返事はまだない」
「まずいよ、承太郎。もしかしたら…」
【パッショーネ】は、ここ最近トップが代替わりした…と調査員からの報告を受けている。
内部では、大規模な改革が行われている最中だ。
改革を主導している新しいトップが…承太郎達と因縁のある【あの男】の息子である事も既に把握している。
一連の代替わり騒動の際に、フィンは【パッショーネ】の一部のチームと組んでいた。
…それが、今回の襲撃と何か関わりがあるのかもしれない。
「…空条さん、こちらの方はお知り合いですか?」
コゼットが一枚の写真を指差した。
それには、フィンと…一人の女性が写し出されていた。
「いや、初めて見る顔だ」
見覚えのない人物だ。
承太郎は写真を花京院に見せるが、彼も緩慢に首を振る。
「この人、今もフィンさんの傍にいるのかしら?」
「気になるんですか?」
「ええ、ちょっと…」
承太郎から再び手渡された写真を、コゼットはジッと見つめる。
その女性こそ、今回の騒動のキーパーソンである事を彼等が知るのは…五日後の話。
【To Be Continued… ⇒】
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