【23】復讐者のシナリオは大いに狂わされる
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スピードワゴン財団のイタリア支部…標的がいる敵地の建物を、宙に浮いているモーラは鋭い目で見下ろす。
(DIO様、必ずや仕留めてみせます)
建物内へ壁を通り抜けて容易く侵入すると、モーラは憎き標的…空条承太郎がいる場所を手当たり次第に探していく。
(…見つけた!)
標的は、三階の大会議室にいた。
空条承太郎は…彼の相棒に当たる花京院典明と共に、一人の女性と談話していた。
「それでは…そちらの方で、フィンさんと連絡は定期的にされているんですね」
「はい。頻度は高くありませんが、必要時には―――」
花京院が回答している横で、承太郎が鋭い視線をこちらへ向けた。
(…! バレてないわよね…)
モーラは咄嗟に殺気をしまい込み、様子を伺う。
数秒程、こちらを見ていたが…承太郎はすぐに視線を客人へ戻した。
スタンド使いとはいえ、霊感が強いという訳ではない。
(ふっ、DIO様が警戒していたみたいだけれど…案外、大した奴ではなかったようね)
モーラは嘲笑しつつ、スタンドを出現させた。
(空条承太郎、くらえぇえええッ!!)
モーラは、銃を構えて引き金を引いた。
最初は足を狙い、肩や目…じわじわと甚振っていき、最後に心臓を打ち抜いて殺す…その予定だったのだが…
ガウンッ、キンッ!
「なっ…!」
放ったはずの攻撃が軌道を変えて、不発に終わってしまう。
すかさず、攻撃を仕掛けていくが…
承太郎に当たる事無く、全て見えない『何か』によって阻まれてしまう。
(どうして…なにが、どうなってるの…ッ!?)
「―――拘束、決定ね」
モーラの耳に聴こえてきた女性の声。
その小さな囁きに近い言葉に、モーラの背筋に冷たいものが走った。
(いつの間に…いえ、それよりも…!)
…自分を狙う人物がどこかに潜んでいる。
けれども、近距離にいる標的をむざむざ見逃すなんてできない!
(ならば接近するしかない…!)
モーラの行動は早かった。
憑依して人質にすれば、こちらに攻撃もできない。
突進するように、モーラは承太郎へ急接近していく。
目と鼻の先までの距離となった…その時だった。
―――バシュッ、ドガッ!
「えっ…」
標的との距離が一気に遠ざかった。
…一体、何が起きたのか?
その疑問が頭を占める前に、モーラは背中に痛みが走った。
パラパラと細かな礫が手や足元に付着している。
周りの状況を見て、ようやく気付いた。
…自分が何かの衝撃波を諸に受けて、壁に激突した事を。
「やれやれだぜ…」
モーラの視界に、帽子の唾を掴んで小さく息をつく承太郎の姿が映る。
「驚いたよ…まさか、この目でスタンド以外の存在を見る日がくるなんて思いもしなかった」
花京院は驚きの色を露わにしつつ、こちらを凝視している。
二人のその態度で、モーラは初めて自分の姿が視認されているのだと察した。
「なんで…姿が…」
「最初から見えていましたよ」
前方…承太郎と花京院と会話していた女性が、その疑問に答えた。
黒に近い藍色の長いストレートヘアーの髪を後ろでまとめている、白いハイネックとその上から青い色のツーピースを身に着けている。
その女性は、エメラルドを連想させる色の目を細めながら歩を進めていく。
「訊きたい事がありますので、ご同行お願いできますか?」
あたかも、警察関係者が言うような台詞。
眼前の女性が只者ではない事は、モーラは感じ取った。
「うるさい! 邪魔だ、どけぇええええ!!」
だが、【逃亡】と【標的への復讐】の二択を天秤にかけた結果…後者を選んだ。
先程は油断していたから、攻撃を許してしまったのだ。
自らの力で対抗できると高を括っていたモーラは、女性に向かって能力を行使しようとした。
「甘いわ」
女性が呟いたその一言。
こちらを舐めてかかっているのかと苛立ちが募り、スタンドを具現化させたその瞬間…
ダンッ…ブシャァアアア!
モーラの全身の至る所から鮮血が噴き出した。
承太郎は大きく目を見開き、花京院は「見えなかった…」と指先で目を擦りながら、女性の方を凝視している。
「ぐぁああああ!」
そして、モーラ自身は激痛で膝をついた。
混乱する彼女の目の前に、女性は立っていた。
モーラは自ずと視界を上げたが…すぐに後悔してしまう。
「再度通告します。大人しく同行しなさい」
ひっ…と情けない悲鳴をあげてしまう。
有無を言わさぬ威圧感を出し、こちらを見下ろす人物は…何者なのだろうか。
「こ…こないで…」
ようやく唇を動かせたものの、女性は引く気もなさそうだ。
「こないで、こないでよ…! 私が何かやったって言うの…!」
今しがた、人を殺害しようとした事を棚に上げて、モーラは自らが被害者のように叫んだ。
女性は呆れを含んだ表情で口を開く。
「明らかに人を手にかけようとしていたでしょうに…とりあえず、理由はじっくりと事情聴取で聞きます」
「事情…聴取…? アンタ、まさか…掃除人…!」
「名乗る程の者でもありません。さぁ、大人しく来て頂きますよ」
モーラは狼狽する。
先の件で、女性に真正面から歯向かう事は自殺行為だと否応にも認識した。
「コゼットさん、僕らは…何をしたらいいですか?」
「もしフィンさんと連絡を取れるなら、この事を伝えてください。改めて、話し合いの場を設けたいとも…」
女性…コゼットは、花京院と会話しつつも隙を見せる様子はない。
モーラは必死に思考する。
この状況を打破するために…!
「失礼いたします。空条博士、博士宛に電話連絡がきていますが…」
その時、扉を開けて財団の職員が入ってきた。
ほんの刹那の間だけ…彼等の視線がその職員に向けられた。
パリーンッ!
モーラは、そのチャンスを見逃さず…窓を割って逃走した。
しまった…と慌てる花京院や職員と会話する承太郎をよそに、コゼットは所持していたスマホを取り出した。
「もしもし…こちらコゼットです。【例の人物】を発見したわよ。
―――『リーシェ』」
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