【22】復讐者はシナリオ通りに…?
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《そうだな…一番の理由は、君の境遇に既視感を覚えたからだ》
「はっ? なあに、それ…昔、恋人でも寝取られたの?」
モーラは小馬鹿にしたような口調で訊いたが…
次の瞬間、そんな態度を続けるどころではなくなってしまった。
《あぁ…そうだ、奪われてしまったのだよ。
生まれて初めて手に入れたいと思った女性を…
忌々しくもおぞましい魔物風情に、な》
全身の毛が逆撫でする…それくらい凄まじい程の殺気を放ってきた。
モーラはごくっと唾を飲みこみ、今更ながら察した。
―――【声】の主は、やばい人物だと。
「そ、そうなの…と、ても…悲しい話ね」
下手に相手を挑発すれば、こちらの身が危うくなる。
相手に同調する答えを言いつつ、モーラは得体のしれないその人物の機嫌を損ねないように不遜な態度を控える事にした。
(は、話を戻すわ。力の代金として…貴方は何を求めているの?)
《…率直に言うと、披露してほしいのだ。君のその新しい能力を試してもらいたい》
【声】の主が提示したきた対価は、モーラの新しい能力の行使だった。
モーラ自身も授かった力がどんなものか把握しておきたかったし、何より早く使いこなせるようになりたかった。それから五日かけて、モーラはトレーニングした。
(これは…!)
モーラが取得したのは…空間を干渉し、自らが住む世界とは異なる世界へ移動できる能力だった。
【異世界】というのは、小説や映画なんかに出てくる空想上の設定でしかありえないという概念だった彼女にとって衝撃の事実であった。
「…でも、これじゃダメね」
確かに凄い能力だ。
調べてみたが、言語の違いや文明の格差から長期的に居続けるには難がある世界もあるが、こちらとほぼ類似した世界もあると分かった。
この能力を上手く活用すれば、特定の分野で頂点に立ち、優雅な暮らしを満喫できていただろう。
だが、それは生きている人間であれば…という前提の話だ。
…モーラは肉体を失った存在である。
この能力を使っても、物欲を満たす事さえもできない。
せめて攻撃性のある能力であったら、まだ名前への復讐に役立てられたのに…。
まるで、大金をはたいて購入したブランド品が偽物だと鑑定されたような心境だ。
《浮かない顔だな、その能力が気に入らないと?》
「今の私には宝の持ち腐れよ。ハァ~…」
《果たしてそうだろうか?》
【声】の主の言葉に、落胆していたモーラは「どういう意味?」と眉を微かに寄せる。
《力とは使い方次第で『鈍な道具』にもなれば、"最大の武器”になる。
君が『移動手段にしかならない』と言うその能力も…見方を変えると"切り札”になるのではないか?》
彼の助言を聞き、モーラの脳裏に閃光が走る。
「ふっ、ふふふ…その通りね」
モーラは邪な笑みを浮かべる。
思いついたのだ…DIOからあの憎たらしい女を引き離す方法を。
幸せの絶頂であろう名前を、絶望のどん底へ陥れる最高の復讐のシナリオを…。
そのために、モーラはその能力をフル活用して、さまざまな異世界を渡っていった。
…モーラが考えた【復讐】
それは、名前を今いる世界から異なる世界へ追放する事。
DIOから物理的に引き離し、見ず知らずの世界へ落とす事で精神的に追い詰めていく。
じわじわと消耗させていき、隙を見てじっくりと甚振って呪いをかけていく。
モーラの気が済むまで徹底的に制裁を加えたら、殺して今度は魂を同様に傷つけていってやる。
「ありがとうね…どこかの誰かさん。
これで、私は無念を晴らして生まれ変われるわ」
《それはよかった…その作戦が功を奏す事を願おう》
その【声】の主に別れを告げると、モーラは意気揚々と標的がいる場所へ向かった。
遠ざかっていく女の後ろ姿を、狭間の空間からひとつの影が眺めていた。
《くくくっ、予想以上の働きをしてくれたおかげで…私としても嬉しい限りだ。
せいぜい、束の間の絶頂を味わいたまえ。
私の計画を進めるための…【捨て駒】としてのな》
その影の人物…【声】の主は嘲るように、本音を口にした。
その台詞が、愉悦に浸っていたモーラの耳に届く事はなく、空気の中へ溶け込んだ。
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