【22】復讐者はシナリオ通りに…?
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※今回は、事件の犯人側の話となります。
※犯人の態度と言動に不快になる可能性があります、お読みの際はご注意ください。
*** ***** ***
こんなはずではなかった。
モーラはギリッと歯軋りする。
(なんで…なんでなんでなんでなんで、うまくいかないのよ…ッ!)
あの女…名前が生きている。
その事実が、モーラの憎悪の炎を燃え立たせていた。
そもそも、モーラが怨霊になった原因こそ…名前にあるのだから。
モーラにとって、至高の存在であり、この世で最も尊く愛すべき人物である吸血鬼【DIO】
あの御方の姿を思い浮かべるたびに、モーラの胸に歓喜と激しい愛情が湧いてくる。
名前は…あの女は、愛おしいあの御方の心を奪い、独り占めした小娘だ。
…憎たらしい泥棒猫。
あの顔を思い出すたびに、何度も胸の中の負の感情がとめどなく沸き立ち、想像の中で幾度となく殺した事だろうか。
人間だった頃、モーラは名前を惨たらしく殺そうとした。
だが、暗殺チームの男のしぶとさと名前の予想外の反撃により失敗に終わった。
その事が明るみになり、DIOの命令で自らの命を散らす結末を迎えてしまった。
あの御方に間接的に殺された事を、モーラは後悔していない。
しかし、DIOの中で『名前が特別である』という事実だけは絶対に許せなかった。
…DIOへの狂信的な愛と名前に対する激しい憎悪。
その爆発的な感情の渦が、モーラを人ならざる者へ進化させてしまったのだ。
怨霊となったモーラは、真っ先に名前への復讐を考えた。
だが、それを為すためにはいくつか問題が生じた。
生前のようにスタンドをスムーズに扱えなくなったのもその理由の一つだ。
生きている頃は自らの手足のように使っていたのに、まるで初めて習い事をする初心者のように四苦八苦する羽目になってしまった。
どうにか、スタンドを使えるようになれたものの、次に別の問題が発生した。
『ここにいたはずなんだけどなぁー』
そう、あの世…天界から遣わされた【掃除人】が出現した事である。
これは別の霊から聞いた情報だが、掃除人とは悪霊や怨霊を裁きの場に連れていく使者の事。
仮にこちらが抵抗し、反撃しようものなら手段を選ぶ事なく抹殺する権限も持ち合わせている。
所謂…【殺し屋】である。
その実力は、モーラの力では到底及ばず…初めて遭遇した際に天地の差を突きつけられてしまった。
まるで犯人を探索する警察犬の如く、掃除人達からの執拗な追跡に、モーラは必死で逃げ回った。
なんで、こんな目に合わなければいけないのか…!
(それもこれも全部…全部、あの女の所為よ…ッ!!)
モーラは精神的に追い詰められているこの現状すら、名前が原因だという身勝手で、短絡的な結論にいきついた。自らが犯した業を棚に上げて、他人にすべての責任を擦り付けている癖に、いざ断罪される身となっても、その現実さえも自分の都合のいいように歪曲してしまう。
生前、積み重ねたそういうマイナス面も追われている理由になっている…その事実を彼女は知らなかった。
(どうすれば、復讐できる? 徹底的に絶望の淵に立たせてやる方法は…)
よもや名前を殺す事だけに執着するようになったある時…モーラの耳に【声】が聴こえてきた。
《これは珍しい…》
「だ…だれ?」
《一介の特殊能力者でしかなかった人間が、器を取り除いた事で、力を変質させるとは…》
「どういう意味!? 教えなさい!」
【声】の主(声音から30代~40代の男だと思われる)は、命令口調のモーラに気分を害した様子はなく、愛想のいい感じに解説した。
モーラは魂となって以降、知らない間に新しい能力が備わっていた事。
しかし、その能力はまだ開花しておらず、それを使用可能にするためには、時間をかけなければならない事も…。
《まぁ、そう焦らずとも気長に訓練をしていけば、自ずと身につくはずだ》
「冗談じゃないわ!? 私はすぐにでも新しい力がほしいの!!」
自己鍛錬をちんたらしている暇はない。
いつ、どこから掃除人が襲来してくるかも分からない状況なのに…そんな余裕がある訳ない。
それに時間が長引けば長引く程、それだけあの女はDIOと絆を深めていき、濃厚な時間を過ごす事となってしまう。
《ふむ、気になるな。早急に力を欲する理由とやらが…》
鮮血色に染まった目を鋭利に細め、殺気を増幅させるモーラに、【声】の主は不思議そうに尋ねてきた。
モーラは半ば愚痴を吐き出すように、自分がこの姿と化した経緯とその原因となった憎い相手の事を話した。
すると、彼は暫しの間沈黙した後…突然、ある提案をしてきた。
《…なるほど、不憫な思いをしたものだ。なら、憐れな君にひとつ贈り物をしよう》
そう告げるや、モーラの全身が怪しげな黒紫色に輝きだした。
内側から力がみなぎってくる…モーラはその感覚に困惑する。
「これは…何したの!?」
《なーに…本来は時を重ねなければならない過程を時間短縮させて、君のもつ潜在能力を引き起こしたのだ》
【声】の主の粋な計らいに、モーラは口元が徐々に吊り上がっていく。
「ふふ、アハハッ! 感謝するわぁ…ただ、気になるんだけど…」
《何が?》
「なんで、わざわざ私の力を目覚めさせたの?
ついさっきまで自力でどうにかしろって言ってたのに…」
容易く願いを聞き入れる人物ほど、こちらにそれ相応の対価を求めてくる。
表と裏の社会を渡り歩いてきた経歴から、モーラはそういう言葉には表さない暗黙のルールというものを学んできたのだ。警戒心を露わにするモーラに、【声】の主はくくっと喉を鳴らした。
姿が見えないが、笑っている姿はイメージできる。
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