【13】ノスタルジック・キーパーソン
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「ウソでしょ…」
名前が、久しぶりの故郷の地で景色を目にした第一声はそれだった。
日本へ出張に行くと決めたのは昨日の事。
『異界の園』から出られる事と、日本へ行く事への喜びから、名前はウキウキした気分で出発準備をしていった。トランクケースに必要な荷物を詰めて準備も整った頃には夕餉の時間帯となっていた。
「明日、何時に行くんですか?」
この異界の園から出て行くにしても、日本へ辿り着く為に空港を経由するはずだ。
明日、遅れないように今の内にスケジュールを聞いておこうと思い、フィンに尋ねると…
「そうですねー。余裕をもって午前10時頃にしましょうか」
名前の質問に対して、フィンは朗らかにそう答えた。
「空港は?」
「行きませんよ」
「えっ、それならどうやって…」
飛行機でなければ、船か…別の交通手段で行くのだろうか?
すると、フィンは不思議がる名前を仰天させる発言をした。
「30分くらいで着きますよ」
「ええっ!?」
「余裕をもって行けますから。今日はゆっくりと就寝してくださいね」
この時点で、名前は半信半疑だった。
イタリアからだったら、約12時間の道のりをたったの30分で着けるなんて…あり得るのだろうか。
翌朝、外行きの服に着替えて、トランクケースを片手にフィンに案内される形で、出発した。
『異空の園』の空間は広い
…まるで某有名アニメに出てくる巨大な精霊が住む森のトンネルみたいだ。
植物の蔓や蔦で囲まれた通路の隙間から見える陽の光を時折、眺めながら歩を進めていく二人。
「あそこが出口です」
フィンが指さす方向に、扉の形を象った光が見えた。
そこを潜り抜けると…なんと見覚えのある、東京の街並みが広がっていた。
「い、いつの間に…」
さっと先程通った、後ろにあるトンネルへ振り返れば、そこは東京の某中央改札口になっていた。
「名前さん、此処だと通行人の邪魔になりますからあっちへ…」
フィンがこっちこっちと手招きして、移動を勧める。
名前は導かれるまま騒がしく、人の多い交差点を通っていく。
イタリアとは違った賑わいに包まれるその日本独特の空間に懐かしさを感じてしまう。
「そうだ、その荷物貸してもらえますか?」
持っていたトランクケースを言われるままに手渡すと、フィンは所持していた携帯電話を翳した。
すると…携帯の画面に、そのトランクケースは吸い込まれていった。
目を見開いてビックリしている名前に、フィンはふふふっ…と茶目っ気のある笑みでこう言った。
「エクレシアの携帯電話は、収納機能があるんです。便利でしょ」
「すごい…」
「さて、折角だし…ちょっと観光していきましょうか」
「だったら、私が案内します。東京の事なら任せてください!」
名前は、ぽんっと得意げに胸を叩いた。
以前、あちらの世界でも、DIOと暗殺チームの皆と日本旅行をした事があった。
東京の街並みになれている名前がガイド役になって、フィンに観光スポットを解説していった。
途中、昼食のために定食屋で食事をとったり、喫茶店でお茶をして休憩を入れながら、町を巡っていく。
「次はどこに行きたい?」
「そうですね…なら、この場所へ」
「…此処ですか」
バスも利用して辿り着いた先は、【善福寺川緑地】
植物の広場を主体にしており、川と武蔵野の自然が調和した公園である。
荻窪一丁目の神通橋から、五日市街道の尾崎橋までの約1.5キロの間に、約400本の桜並木が続いており、花見の名所としても有名だ。
「この辺は、春になると一面が桜の花で彩られるんですよ。その時期はもう過ぎちゃったけど…」
「また、その時期にこれるといいですね…」
桜の木々を眺めながら、フィンはそう感想を口にした。
その眼差しがとても切なそうに…見えた。
「来れますよ、きっと」
名前はハッキリとした口調でそう言った。
いつか、この世界からいなくなってしまう…孤独を抱えているフィンを、少しでも元気づけるため…名前なりの励まし方をしてみた。
「…ありがとう」
その意味に気づいたのか、フィンはふんわりと桜の花の蕾が咲いたように、微笑んで御礼を言った。
【ノスタルジック・キーパーソン】
♪♪♪~ ♪♪♪~
その時、フィンの持っていた携帯の着信音が鳴りだした。
「もしもし…はい、ちょうど着いた所です」
会話から、フィンはこの場所で暗殺チームの誰かと落ち合う約束をしていたみたいだ。
名前は、自ずと周囲に視線をめぐらす。
…家族連れ、ジョギングをしている中高年の男性、高齢者の夫婦。
どの人も日本人であり、外国人らしき男性の姿はどこにもみられない。
(どこだろう…?)
「どちらにいるんですか?」
『…さっきからいる』
名前とフィン、二人の視線はパッと声がした方へと向けられる。
「意地悪な人ですね。隠れて観察してたなんて…」
『とうに気付いていただろ? ならお互い様だ』
後ろにある桜の樹から薄らと透明な輪郭がみえた。
徐々にそれが色を帯びていき、一人の人物が姿を現していく。
色素の薄い銀髪…夜を思わせる漆黒の瞳が特徴的な長身の男性。
名前はドキドキ…と胸の鼓動が早くなる。
(やっぱり…【あの人】だ)
トレードマークの黒い頭巾と白黒の縞々のズボンではなく、灰色のコートを羽織り、ハイネックとズボン…私服姿だ。それでも、出現した彼は…あの世界の彼同様に落ち着いた大人の余裕と色気を醸し出している。
「ご無沙汰しております。リゾットさん」
「ボンジョルノ フィン」
―――『リゾット・ネエロ』
“この世界”の暗殺チームのリーダーと…邂逅した。
【To Be Continued… ⇒】
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