【13】ノスタルジック・キーパーソン
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―――『制裁の眠り姫』
約10年前に、世界中にその名を広めた結晶石に封じられた女性の二つ名だ。
その正体が、異界の神であるエクレシアだと、ディアボロが気付いたのは、とある組織の幹部が残したデータを発見したからだ。
エクレシアは、歴史上古代ローマ皇帝の時代に存在していた形跡がある未知なる種族。
その力は、一国の軍にも相当するレベルとされており、強大だ。
契約した者は、そのエクレシアの力を使えるようになれると言われている。
その力に目を付けたディアボロもまた、全構成員に指示するほど、血眼になって探していた。
パッショーネのさらなる拡大と繁栄を狙ったのか…はたまた、自らの絶頂を守るためだったのか。
真偽は本人にしか分からないが、それだけエクレシアの力は魅力的なものなのだ。
そのエクレシア ――― フィンと契約を交わしたのが
…あろう事か、暗殺チームのリーダー…リゾット・ネエロだった。
リゾットは、数年前に結晶石の中で眠りについていたフィンの封印を解いた。
当時、ディアボロが彼女を見つけ次第、引き渡す様にと命じていたにも関わらず、リゾットはそれを無視して彼女を手元に置いていた。
おそらく、この頃から彼は組織への反逆を画策していたのだろう。
『記憶喪失の憐れな娘であり、路上に倒れていたのを保護して、自分の愛人にした』
やたらと出来すぎた設定までつくり、まんまと周囲の目を欺いていた。
フィン自身が本当に記憶喪失だったのか否かは定かではない。
だが、彼女がリゾットの何か強い意志に共感し、彼を契約者として認めたのだ…と彼女と面識のあるジョルノはそう推測した。
「本当は…ギャングの世界に巻き込みたくなかった。
僕が、早くフィンの封印を解いていたら、って思う事があるんです。
考えるだけ無駄なのに…」
「俺は…もう一人の『あの子』も心配だ」
エクレシアはこの世界に二人いる。
一人はフィン。もう一人は…驚く事にまだ一歳の女児のステラだ。
パッショーネ内では、前者しか知られていない。
その主な理由は、ディアボロが入手したデータには、ステラの事が記載されていなかったからだろう。
それにより、フィンが集中的に狙われる身となっているのだが、彼女はそれを苦にしていない。
むしろ、幼い仲間に危害が加わらない事が幸いだと言ってた。
「ステラは、暗殺チームに懐いている。
奴らがあの子まで深く関与させるのであれば…早急に対処すべきだ」
ブチャラティは、子どもがギャングに関わる事を好ましく思わない。
これは、実の父親が麻薬現場を目撃してギャングに殺されかけ、自らと父親の命を守るために12歳でパッショーネに入団せざる負えなかった過去が起因している。
現在の仲間であるナランチャが『組織へ入団したい』と求めた時にも、激怒した位だ。
「二人とはあれ以来、連絡を取っていないな」
「組織の変革中ですからね…下手にこちらが接触すると、彼女達に危険が及びますから」
でも、信頼できる数名を護衛に派遣しましたよ…念のためにねと言うジョルノ。
彼も二人の身を案じているのだ…とその言葉から、ブチャラティは感じ取った。
フィンとステラは、ジョルノ達にとって恩人でもある。
彼女達がいなければ、こちらのメンバーは誰かが欠けていた
…最悪全滅していたかもしれない。
「…僕は守りたい、『あの人』と『あの子』を。
今度は僕が、二人に恩返しをする番なんだ」
「違うぞ、ジョルノ ――― “俺達が”だ」
そうだろ、と真面目に言葉の訂正を促すブチャラティ。
そんな彼の言葉に、ジョルノは穏やかな笑みを浮かべ「そうですね」と頷いた。
「お話の途中、申し訳ございません」
一人の男性が、数歩離れた場所から話しかけてきた。
「何の用だい? ペリーコロ」
その男性の名はジャンルッカ・ペリーコロ。
父親の代からパッショーネに忠誠を誓っている、義理堅い謙虚な人物だ。
「…先程、情報管理担当者からの連絡がありました」
「続けてくれ」
「はい。暗殺チームのソルベとジェラード二名が、エクレシアと接触した模様です」
「それで…他のメンバーの動向は?」
「今のところ、目立った動きは見せておりませんが…一つ、気になる事がございます」
「…気になる事?」
ブチャラティが訝しげに言うと、ペリーコロは頷いてさらに続けた。
「チームのリーダーが複数部下を連れて本日、出国しました」
「向かった先は特定できているのか?」
「はい。その場所は―――」
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