【13】ノスタルジック・キーパーソン
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フィンと熱く今後の事を語りあった翌日。
名前が、ソラに絵本を読み聞かせている最中、向かい側の壁に設置されている電話が鳴り響いた。
名前はうわっ…と少し驚いた。電話が設置されていたのは分かっていたが、此処に暮らし初めて約一ヵ月の間にそれが鳴る事が一切なかったからだ。
「もしもし」
すると、昼食の準備をしていたフィンがパタパタと急ぎ足でやってくると、受話器を取って耳にあてた。
誰からだろう…と絵本を音読しながら、名前はフィンの話す方へちらりちらりと視線を時々送る。
「D*GRtni9wwaoll、kkjhypvdj?」
…何語を話しているのかさっぱり分からない。
名前は、自らのスタンド能力の利用して外国語はいくつか話せるようになった。
しかし、フィンが口から紡ぐあの言語は、聞いた事がない。
(うわぁ…気になっちゃうよ)
「なーちゃん、どしたん?」
誰とどんな会話をしてるのか…凄く気になってしまう名前。
途中で音読をやめてしまった名前に対し、「読まないの?」とソラは不思議そうに首を左右にコテンと傾げる。
「…分かりました。では後日そちらで」
フィンは最後の方だけ、聞きなれた言語を口にすると、受話器を元に戻した。
その言葉はイタリア語…暗殺チームからの連絡か。
「名前さん」
そわそわと落ち着かない名前を見透かすように、フィンが振り返って名を呼んだ。
ビクッと肩を震わせて「は、はい!」と変な発音で返事をしてしまう名前。
「急な話になりますが、一緒に出張してもらえますか?」
「えっ、しゅっ…しゅっちょう…ですか?」
突然の事に、名前は思わず聞き返してしまう。
「はい、“日本”へ」
フィンは口元を緩めて、その行き先を言った。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
イタリアのネアポリス…まだ誰もが寝静まる真夜中の時間帯、中・高等学校の敷地内を一人の少年が歩いていた。照明が切られていて、薄暗い空間を唯一照らすのは空に浮かぶ月明かりだけ。
グラウンドへ赴き、その浮かぶ月を眺めていると…後ろから近づく足音が耳に伝わる。
「一人で出歩くのは物騒だぞ」
黒い髪を丁寧に切りそろえ、点々模様の独特な衣服を着た青年が注意を促す。
「すみません、ちょっと散歩がしたかったんです。ブチャラティ」
巻き毛の金髪の少年…ジョルノ・ジョバァーナはそんな彼の忠告に悪びれる様子もなく、クスッと悪戯がバレた子どものように笑みを浮かべて謝る。
「そもそも、深夜の学校で何が面白くて散歩するんだ?」
「喧騒に包まれた昼間よりも、夜の静寂な時間が好きなんですよ」
情緒があっていいと思わないか、と言葉を返されると、ブチャラティは肩を竦める。
「それだったら、もっと落ち着ける場所があるだろ…」
「今の僕達に、本当に『落ち着ける場所』があるんですか?」
ジョルノは表情のない真顔でそう指摘した。
ブチャラティは眉を潜めて「…そうだな」と静かに呟く。
先代のボス…ディアボロを倒して早二ヶ月。
大多数の構成員の気づかない所で、反逆を成し遂げたジョルノとブチャラティ率いるチームは着々と組織改造を進めていた。
ディアボロの残した負の遺産である麻薬を浄化していくにあたり、反発する勢力を排除していった。
今まで麻薬を率先して流通させていたはずのボスが、何故いきなり撤廃・禁止する方向性に変えたのか…?
その疑問に甘い汁を啜っていた者達やその他の勢力は、当然懐疑的になったはずだ。
乗っ取りがバレてしまうのでは、と当初、チームの仲間…特にナランチャはひやひやしていたが…
『麻薬ルートは、10年前に亡くなった“先代”の名を無断で悪用した反逆者…ディアボロが作り上げたシステムだ。先代は、失意の中で病に伏せてしまい、僕に座を譲り、亡くなった。
僕は、先代の名を傷つけたそいつを見つけるために、信頼できる者達と共に身分を隠して独自に調査を続けていた。その男を秘密裏に割り出すまでに…恥ずかしい事に時間がかかってしまったが、ブチャラティのおかげで、反逆者を粛清し、先代の汚名を晴らす事ができた。
先代が目指していた理想を実現させるために…僕の代で麻薬ルートは完全に排除する方針に移行していく。
この僕の理念に…賛同する者はついてきてほしい』
“B級映画レベルのシナリオ”だとアバッキオは辛口評価したが、そのシナリオに乗っかった勢力は少なくなかった。それは、ジョルノの持ち前のカリスマ性も影響しているからだろうか。
しかし、まだまだ難題は山積している。
今まで恩恵に預かっていた『麻薬チーム』は行方をくらましてしまい、捜索中である。
変革の機を狙って、ジョルノの首を狙う輩もこれから出てくるだろう。
そして…今、一番の問題は『暗殺チーム』だ。
ディアボロの統治時代から、パッショーネの中でも特異的な存在感を放っていたチームであり、待遇の悪さから反逆を仕掛けようとしていた。
最初は彼等と対立していたが、利害の一致から共闘して先代を倒した経緯がある。
それ故に、彼等の処遇をどうすべきか…で上層部は揉めている。
「対立しているとはいえ、彼等が俺達に協力してもらった事に変わりはない。
もう一度、彼等と話し合うべきだが…」
「他の人達は反対するでしょうね」
元々、汚い仕事を一手に引き受ける立場だった暗殺チームを快く思わない者は少なくない。
ボス(この場合、ジョルノを指す)に反旗を翻そうとした事もあり、彼等も粛清対象にすべきだと強く訴える者までいる。
しかし、如何に上層部とはいえ彼等を追い詰めようとする愚かな真似はしない。
9人全員が強力なスタンド使いというのもあるが、他にも理由がある。
それが…エクレシアのフィンだ。
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