【9】次のお客様
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すると、フィンは視線を別方向…テーブルの近くにある窓へ向けた。
「これはあくまで推測ですが…見張られていたんでしょうね」
「!…なんでそう思うんですか」
「さっき二人がいた時から、気配を感じました。もういないようだけど…」
名前はぞくっと悪寒がした。
彼女のいう事が事実なら、ソルベとジェラードは監視されていた事になる…相手は多分、新パッショーネ。
「私の結界を潜り向けてくるなんて…相当の使い手か、それとも結界の効力が弱まってるのかもしれない」
フィンは、窓を開けて注意深く目を細めて、辺りを観察する。
「まあ…焦ってもしょうがないし、この件はいったん保留にしましょう」
「で、でも…」
「気配の事はお気になさらずに…結界の暗号をもっと複雑化させておきますから」
フィンは玄関口の扉を開けると、「しばらく外出します」と言って出て行った。
名前は、どこに出かけるのか、尋ねる暇もなく一人取り残されてしまった。
「……はぁ」
ため息を静かに吐いた。
名前は、自らの立場を再認識した。
いや、『痛感した』という表現がしっくりくるかもしれない。
名前は、この世界からみれば『来訪者』。
他の人物からみれば、フィンの『客人』か『友達』でしかないのだ。
なんだか、疎外感を感じてしまう。
でも、仕方ないと思うしかないのだ。
「……DIO」
此処にはいない恋人の名を呟く。
…この世界にはもういない、名前のいたあの世界にしかいない彼の人の名前。
目尻にじんわりと熱いモノが込み上げてきた。
こんな気持ちになるのは久しぶりだ。
両親を失った時…あのエジプトでの戦いでDIOと別れた時…辛くて苦しい思いが胸から離れなかった。
この世界に来てからずっと抑えていた感情が溢れてくる。
早く帰りたい…あの場所へ。
自分のよく知る大好きなあの人達のもとへ…戻りたい。
―――コンコンッ
涙で視界が滲む中、扉をノックする音が聞こえた。
「だれ…?」
フィンが帰ってきたのか…いや、それならこの家の主である彼女が戸を叩く必要はない。
ソラとワンダニャンであれば、下部分に設置されている専用の入り口から入って来るはず…。
名前は咄嗟に口元を抑えた。
もしも、フィンが言ってた新生パッショーネの密偵であったら…!
そんな不安がよぎり、慌ててどこかに身を隠そうとしたその時だった。
「ふぃんちゃーん、なーちゃん!」
舌足らずな聞き覚えのある子の声に、名前はその行動を中断した。
「ふーちゃん…?」
ガタッと下部にある専用扉が上へと押し上げられる。
ソラのスタンド…ワンダニャンがぷきゅぷきゅと足音を立てて入室してきたのだ。
ワンダニャンに続いて、ソラも小さな体をしゅぽっと潜らせて、もぞもぞと入ってきた。
『すまないが、誰かいるならあけてくれるかい?』
渋い声…男性のようだ。
開けるべきか否か逡巡するが、ソラが扉をぺしぺしと叩きながら言った。
「ぱるしゃん、ぱるしゃん」
「ぱる…しゃん?」
「あけりゅ!」
ソラが一生懸命訴えかけるため、名前は恐る恐るドアノブを回した。
【次のお客様】
「ん? 君は…」
「…え、えっ…?」
姿を現した人物に、名前の瞳が大きく揺れる。
目の前にいる人物…黒い聖職者の服装をした男性だ。
「ぱるしゃん!」
「失礼、フィンは…外出か?」
足元にしがみつくソラの頭を、その男性は優しく撫でる。
名前は、彼の容姿に心当たりがある。
しかし、その人物はこの世界の時間軸には存在しないはずだ。
「ふむ…まずは自己紹介が先だったか。俺の名前は『ハーパル・カルヴァート』と言う者だ」
何故なら…彼の姿は一巡後に登場するガンマン、リンゴォ・ロードアゲインその人に瓜二つだったから。
【To Be Continued… ⇒】
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