【8】目を背けたい現実
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ジェラードが報告してくれた事で、パッショーネの現在の状況が判明した。
約二ヵ月前、ジョルノと護衛チームによってボスは倒された。
ボスを始末後、ジョルノはパッショーネの新しいボスの座につき、その右腕にあたる№2にブチャラティがついた。新参者…しかも10代の少年が指導者を倒したともなれば、先代を慕っていたり、恩恵を受けていたチームの反乱を引き起こしかねない。
下手をすれば、下剋上を招きそうだが、今の所目立った内部紛争は起きていない。
もともと、先代…ディアボロが自らの正体を明かさない徹底した秘密主義者だった事から、構成員のほとんどは彼の姿すら知らなかった。
ジョルノ達はそこを利用した。
「『その幼さゆえに、いらぬ反感を買う事を警戒してこれまで秘密にしてきた。
しかし、裏切り者がでてその正体を探ろうと無関係の一般人の娘まで巻き込む抗争へ発展しかけた。
ボスは自ら裏切り者を粛正後、裏切り者を炙り出すために多大な貢献を果たしたブラチャティが率いるチームを側近として迎え入れた。
もう正体を隠す理由もないため、堂々と姿を現したボスが、ジョルノ・ジョバァーナであった』
けっこーな設定だと思わないか?」
ジェラードがケラケラ笑って、ジョルノ達の戦略を語る。
(…ブチャラティ達も生きてる…よかった)
どうやら、ブチャラティや他の護衛チームのメンバーも生きているようだ。
名前は若干安堵するが、その一方でフィンの表情はさえない。
…いや、珍しく気難しげに眉を潜めている。
「それで…暗殺チームの処遇はどうなりそうですか?」
名前はドキッとした。
自分が訊きたかった事を、フィンがダイレクトに言葉にしたからだ。
「今は待機中の身だ。例え、重い処分が下ったとしても…俺は覚悟はできてるがな」
「勿論、俺も」
「あの…すみません」
名前は、あまりにも重たい内容に―――ソルベとジェラードはあんまり気にしていない感じだが
―――たまらず口を挟んでしまった。
「暗殺チームの人達は、今のボスと護衛チームの人達と何かトラブルでもあったんですか?」
護衛チームと暗殺チームの双方が生きている事に浮かれていた。
…もしも、原作通りに暗殺チームが謀反を起こそうとしていたなら?
…護衛チームとは、ディアボロとの死闘で決着がうやむやになったままだったら?
そんな可能性だってある事を想定していなかったのだ。
「……俺達、暗殺チームは自分でいうのもアレだが、扱いづらい連中の溜まり場だ。
先代の頃から冷遇されていた」
「そんな状況を見兼ねてある時、リーダーが言ったんだ。『組織をぶち壊そう』ってな」
名前はアレ…?と思った。
原作では、暗殺チームの反逆のきっかけになったのが、ソルベとジェラードが惨い殺され方をしたからだった。
…二人が生きている時点で、もう運命が変わっているのだが、やっぱり二人の生死を問わず、暗殺チームは遅かれ早かれ決起していたようだ。
「多少のトラブルはあったが…情報収集の過程でボスの娘らしき人物が浮上した。
その娘を奪い、ボスと接触する算段だったが…」
「思いの外、ブチャラティ達が強くてほとんどの奴らは病院行きさ」
「…あの、その仲間の人達は…大丈夫だったんですか?」
名前がおずおずと他の暗殺チームのメンバーの安否を質問すると…
「…かなりやばい奴は何人かいたが、フィンとミーチョのおかげで順調に回復していってる」
「よ、よかった…」
「名前っていい子なんだな~…会ったばかりの俺達の仲間の無事も気にしてくれるなんてさ」
ほっと胸を撫で下ろす名前に、ジェラードは感慨深そうに言う。
「でも、ブチャラティ達もボスの事裏切ったんだ。
娘を直接自分で殺そうとしていたっていうし…」
「その結果、【休戦】という形で、あいつらに協力する事になった。
リーダーが言うには…思いの外、先代は強かったようだ」
名前は相槌を打ちながら、その先代の事が頭に浮かんだ。
ディアボロ ――― 名前は、あの世界で彼と接触する事はなかった。
故郷にいた頃に、漫画で真の姿を目にしただけだが、漫画越しでも威圧感を感じる程の邪悪な人物だった。
特殊な生まれ方をして、複雑な人生を歩んできた事は同情してしまうが…実の娘を殺そうとした事は許されない。ジョルノのレクイエムにより、この世界の彼もまた、永遠に死を与え続けられる呪いに苦しんでいくのだろう…自業自得だ。
「ボスには勝てた…だが、10代のガキにトップの座を奪われちまった」
「今じゃ、大半の構成員がそのガキの言う鵜呑みにして、忠誠を誓ってんだぜ。面白くねえー」
トップを倒せても、実質的な権力を横取りされてしまった。
暗殺チームにとっては、辛酸を味わう結末となったのだ。
「『人間の歴史は戦争の歴史であり、歴史は勝者の立場で作られる』と言います。
これから、パッショーネは勝者であるジョルノさんの手で改革されていくでしょうね」
フィンは瞼を軽く閉じて語る。
苦々しい気持ちを口にする二人とは違い、落ち着いた口調でどこか納得しているように感じた。
「いくら協力したとはいえ、対立していましたからね。
おそらく、ジョルノさんの回答次第で…暗殺チームの今後が決まります。
下手をすれば…命も覚悟しなきゃいけませんね」
「……そんなっ!」
衝撃的な展開に、名前は息を飲み込んだ。
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