【6】似て非なる世界の“二人”
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フィンの家で暮らし始めて一週間と三日。
名前は、大分空気に慣れてきた。
体調もよくなった事で、名前はフィンの了承も得た上で改めて外に出てみた。
「ここって…森?」
フィンが住んでいる場所は、かなり特殊な場所だった。
辺り一面が深緑に囲まれた、童話に出てきそうな森の中だ。
「眺めいいでしょ。頭の中でイメージするのは少々苦労するけど…」
フィンが説明してくれた。
エクレシアは特異的な体質があり、不定期な休眠期間が訪れるらしい。
その際に、肉体を守るために彼等は一時的に、結晶華とよばれる宝石になってしまう。
そうなった場合、時間をかけて元の姿に戻るまで、安全な場所を見つけて自らを封印する。
けれども、そんな安全な場所はそうそうないため、彼等は【エンジェル・スチーマ】と呼ばれる、思い描いたイメージを具現化させる術を生み出した。
この森…もとい空間はフィンが想像したイメージを作り出したものらしい。
「この空間、モデルがあるんです」
「えっ、そうなの?」
「異世界の『モルル』っていう村。
巨大な樹の地形を利用して、多くの人達が家を建てて住んでいるところなんですよ」
フィンの家も、大樹の中間部分に建てられている。
高い所が苦手な人にはきついだろうが、周りの景色を一望でき、どこか秘密の隠れ家のようで、名前は気に入った。
「にゃーん」
聞き覚えのある鳴き声がした。
フィンに双眼鏡を渡されて、それで遥か下にある地上を見てみると、ワンダニャンがぴょこぴょことはねている。
「ふぃんちゃん、なーちゃん」
そのワンダニャンの隣にいるソラが、ちっちゃな手を振って二人の名前を呼んでいる。
(何かあったのかな…?)
すると、ソラに誰かが呼びかけられ、首だけ振り返った。
視線をずらしてみて…名前は目を大きく見開いた。
視界に入ったのは、癖毛のある金髪の男性と黒髪の強面の男性。
「あ、ソルベさんとジェラードさんだ」
フィンが顔見知りが来た、という感じで呟く。
「あの二人……」
「その様子だと…名前さんもご存じなんですね」
「ご存じも何も…!」
ローマのパーティで護衛としてあの二人も同行していた。
いや、二人だけじゃない。
彼ら以外の暗殺チームの面々も揃っていた。
「…どうしよう、私…」
この世界のソルベとジェラードは、名前の世界の二人とは違う。
それでも…顔見知りである彼らを前にして、落ち着けるはずがない。
混乱している名前を宥めつつ、フィンは真下にいる彼等の様子を見る。
ジェラードが笑って、ソラの頭を撫でており、ソルベはワンダニャンにお手をして、何やら餌(パンのミミのようだ)を与えている。
幸いか否か、まだこちらに気づいていない。
「名前さん、嫌ならどこか部屋に隠れてていいんですよ」
「…ごめんなさい。気を遣わせちゃって。私は…大丈夫だから」
「…ならフォローしますね」
深呼吸をして気持ちを落ち着かせる名前に、フィンは穏やかにそう言った。
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