【5】転生少女は、祖父の家でイベントに遭遇する
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「つまり、ご当主様の意向で…悟さんは本宮の本家でホームステイする事になったんですね」
「そーいう事」
カレーライスを味わいながら、悟は事情を説明してくれた。
事の発端は、五条家の会合での出来事。
側近から五条家に連なる末端の家系の代表者までもが集う場で、様々な議題が話される中…
自ずと悟に関する話題が浮上した。
まずは、悟の今後の進学先。
東京の高専に入学するのは確定事項だが、中学校はどこにすべきか…
公立・私立を含めて複数の名称が記載されたリストが配られて、議論が行われた。
次に、悟を支える従者の選定。
五条家に従ずる多くの家系の中から、有能であり、悟に忠誠を誓える人材がいないかと話し合いが続いた。
ここぞとばかりに、自分の家の子を推薦する者達がぞろぞろ出てきて、鬱陶しい事この上なかった…(現当主談)
そして、これが本命と言うべきか…
次期当主の伴侶…悟の将来の妻に関する話題となった。
悟と釣り合う年頃の娘がいる家は、「是非とも婚約者に」と率先してアピールしてきた。
悟は現場をこの目で見た訳ではない。
だが、会合を終えた父からその日の内に詳細を聞いて嫌悪感を催した。
『悟、此処では構わないが…公的な場で感情を表に出さないようにしなさい。
排水溝並の異臭を放つ者達に足元を掬われるぞ』
毒気を孕む言葉で息子を諫める父…修光はこう続けた。
『今日の会合で、大体の情勢は把握できた。
そろそろ選別に入ろうか…』
修光が、五条家に蔓延っている不要な者達及び不穏分子を一掃する事を宣言した瞬間だった。
ぞっとするくらい冷酷な笑みを浮かべていた父の顔を…悟は忘れられない。
後から聞いた話だが、その会合で「側妻を招いたらどうか」と勧められたようだ。
悟を生んで以降、母は懐妊する兆しがない。
《不測の事態に備えて、五条の血を増やしておく事に越した事はない》
《正妻は家業に専念させて、側妻か愛妾に子作りの任をさせた方がいい》
遠回しに母を貶す言葉を言われた事が、父の逆鱗に触れたのだ。
おそらく、側妻容認を促した家はこの一年の間に消えてしまうだろう。
幼い悟でもその事はすんなりと予想できた。
「…という感じで、親父が全て片付けるまで安全地帯で過ごす事になったんだ。
母さんは実家に戻って、俺は本宮家に身を寄せる事になった」
「お母様もご一緒ではないんですか?」
「『敵に勘付かれるリスクを減らす』って理由で別々にされた。
敵側にも侮れないヤツがいるみたいだし…俺も親父の判断は間違っていないと思ってる」
また、悟の匿い先が本宮家になったのは…優月の口添えがあったから。
あの時の話し合いで、修光が五条家内部を近々大掃除する事を伝え、その際に息子を保護下に置いてほしいと懇願したそうだ。その際に、いくつか取り決めもしたようで…
「そのうちの一つが、本宮の本家にいる間は別人に成りすます事。
俺が表だって本家にいると、やばい事になるからな…」
呪術界において、悟は有名人だ。
北から南まで…日本全土で活動する現役の呪術師で、彼の名を知らない者はいない。
名家は勿論、一般人と化している末端の家系でも、『五条悟』の名前はしっかりを記憶しておくようにと言われるくらいだ。
そんな五条家の嫡男が、中立派の本宮家に滞在するとなると問題が発生してしまう。
いくら箝口令を敷いたとしても、何らかの形で情報が漏れてしまうリスクがある。
そのため、当主である慶一を含めた本宮家の家族会議は日を跨ぐくらいの時間を費やした。
論議の末に出した結論が…悟が【変身する】事であった。
「この眼鏡はね、光助が制作した新製品なんだ」
光助とは、慶一の五番目の息子で、舞香の叔父にあたる男性だ。
彼は、主に呪物関連の調査や呪具の整備などに携わる仕事をする一方で、新しい呪具の開発に力を注いでいる。
三年前に開発された【呪力石】という呪具がその代表例だ。
彼の総指揮のもと制作されたそれは一見、単なる輝石に見えるが、呪術師の力を注ぐ事で、その対象者の能力を一時的に使用できる…という画期的な代物だ。
そして、反転術式を使える術師…主に優月の協力もあり、反転術式の効果を持つ【回復呪力石】が完成した。
生産された【回復呪力石】の効果は絶大で、この二年の間に呪術師の死亡率を減少させる事に成功した。
その功績により、《発明家》としての認知度が高くなりつつある光助が新しく作ったアイテムが、悟の使用している眼鏡であった。
「簡単に言うと、呪力を用いる事で変身できるアイテムだね。
魔法少女系のアニメで言えば、主人公の女の子が使うコンパクトやブローチだと思えばいい。
まだ試作段階だけど、感じとしてどうかな?」
「悪くないけど…変身するバリュエーションは増やしてほしいです」
「ほぉ…いいコメントだ。息子にもそう伝えておこう」
悟の率直な意見に、慶一は「ふむふむ」と相槌を打ちつつ耳を傾ける。
(呪具って変身アイテムまであるんだ。すごいなぁ…)
二人のやり取りを見ながら、舞香は呪具に興味が湧いてきた。
この時、話題に取り上げられた変身用呪具が、舞香にとって必需品となっていくのは…少し先のお話。
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