【4】転生少女は、お出かけする(後半)
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「そろそろ、デパートに戻りましょうか」
優月は、UFOキャッチャーで黒色と黄色の小さな雛のぬいぐるみ二体をゲットした。
黒色を悟に、黄色を舞香にあげながら帰る時間がきた事を告げた。
時刻は午後4時35分。
まだ陽が高く遊べる時間帯であるが、悟を送り返す時間も含めると早めにホテルに戻った方がいい。
五条家の護衛二人と話し合い、優月はそう判断したようだ。
「えぇ~…遊び足りないよ」
「気持ちは分かるけれど、今日はこの辺にしないと日が暮れちゃうわ。
明日、時間が取れたら別のお勧めスポットに案内するわ」
優月の提案に、悟は「はーい」と渋々といった感じで了承した。
「今日は楽しかったですね」
「うん、そうだな」
舞香と悟がそう言いながら、来た道を戻っていると…
前方から、黄色のタクシーがやってきた。
タクシーの扉が開くと、そこから和服を着た一人の男性が出てきた。
「やぁ、悟」
「父さん!」
悟が驚いたように父の元へ駆け寄る。
(…という事は、この人が五条家のご当主様なのね)
黒髪の黒い瞳…その二点を除けば、悟と瓜二つの容姿の端正な顔立ち。
悟が成長したら、こんな感じになる…という未来予想図を描いた姿だ。
「君が舞香ちゃんだね。
初めまして…私は五条修光。
悟の父で、五条家のまとめ役をしているんだ」
よろしくね…と悟の父が柔らかな笑みで挨拶してきた。
舞香は「お初にお目にかかります」と礼儀正しく頭を下げる。
「父さん、なんで此処に…?」
「予定よりも早く話し合いが済んだんだ。
折角だから、もうひとつの用事を片付けたいと思ってね…」
修光はそう言うと、優月に視線を向けた。
「本宮、久しぶり」
「ええ、先輩もお元気そうですね」
修光が懐かしそうに挨拶すると、優月も口角を上げて言葉を返した。
但し、冷ややかな目のオプション付きだが…。
(うわぁ…ピリピリしてる)
優月は、五条家の当主と因縁がある…と花御が話していた。
どうやら、優月は今も彼の事をあまりよく思っていないようだ。
大丈夫かな…と舞香は心配そうに見つめる。
悟も二人の間の温度差を察しているようで、不安そうな面持ちだ。
「本宮、此処だとアレだから場所を変えないか?」
「そうですね…」
「夕食、まだだろ。イタリアンのいい店を予約したんだけど、どうだい? 舞香ちゃんも一緒に…」
「その前に、話をしませんか」
腕を組んだ優月が間髪入れずに、夕食の前に用件を済ませたいと提示してきた。
有無を言わせない様子の優月に、「叔母さん、こわいです…」と舞香は思った。
それから、優月の提案で海辺に近い場所まで移動した。
「断崖絶壁でなくてよかった…」
「えっ?」
「いえ、こちらの話です」
二時間サスペンスドラマを母とよく見ているため、断崖絶壁は死亡フラグな場所というイメージがあるからだ。
また、海辺や山の中は第一の事件が始まるスポットとして定番である。
現実にそんな展開にはならない、と舞香は信じている…いや、信じたい。
(叔母さんはそんな危ない事しないし…五条家の当主様も…うん、大丈夫だよね?)
本当は同行したかったが、「二人きりで話したいから待ってて」と優月に言われたため、敢えなく待機する事となった。悟の方も、「舞香ちゃんの傍にいてあげなさい」と修光から言われた。
修光は息子の耳元で、ぼそぼそと他にも何か囁いていたのだが…
その後で、悟がやる気に満ちた表情で「分かった!」と返事したのが気になる。
…どんな会話をしていたのだろう?
「舞香、散歩しないか?」
「そうですね。叔母さん達、話が長くなりそうですし…」
話が終わるまで、ただ待つのもつまらない。
悟の提案で、周辺を散策する事となった。
優月にその事を伝えると、なるべく遠くにはいかないように注意を促される。
もちろん、護衛の二人に負担と迷惑をかけないように行動するつもりだ。
(きれい…)
舗装された道を歩きながら、舞香と悟は周囲の景色を眺める。
古びた住宅や建物が並ぶ風景、夕焼け色に染まる海。
どこか懐かしくて、安らぎを感じてしまう。
ゴォ~ン ゴォ~ン
鐘の鳴り響く音が聞こえてくる。
視線をそちらへ向けると、すぐ先に教会が見えた。
「舞香、どうした?」
「あそこに…行ってもいいですか」
教会を目にした瞬間、舞香は惹きつけられるようにそこへ歩を進めていく。
悟は首を捻りつつも、「いいよ」と了承してくれた。
門の前に立ち、舞香はその大きな教会に目を見開いた。
(すごい…清らかなオーラに満ち溢れている…!)
神聖な力が、教会全体を包み込むように結界を構築している。
透明な結界を繋ぐように帯が出現しており、そこには見慣れない言語が施されている。
前世で、舞香は様々な魔法や特殊な能力を目にしてきた。
そんな彼女でも、この結界には難易度の高い術式が用いられているとすぐに分かった。
(この結界を作っている人は…どんな御方なのかしら)
そう思いながら、開いている教会の門を通ろうとした。
すると、舞香の腕を悟が掴んで進もうとするのを邪魔した。
「五条さん…?」
「なぁ、舞香…他のところ行こう」
「ほわい?」
「この教会、なんか…」
「君達、何をしているんだい?」
悟が理由を言いかけていた時、遮るように誰かが声をかけてきた。
…金髪の背の高い男性であった。
丈の長い黒い司祭服を着ており、この教会の関係者であるのは間違いない。
手に箒を持っているところを見ると、彼は教会の周りを掃除している最中のようだ。
「すみません。こちらの教会が気になってみていました」
「マナーを守ってくれるなら、見学しても大丈夫だよ」
男性は朗らかに笑って、教会へ入る事を許可してくれた。
ありがとうございます…と舞香は会釈すると、悟に視線を合わせる。
「私、ちょっとだけ見学してきます。
五条さんは、此処で待っててください」
教会の空気が苦手な様子の悟には、教会の門の前で待機してもらうようにお願いした。
「いや、俺も行く」
しかし、悟は首を緩慢に振って同行すると言った。
「いいんですか? 無理しなくても…」
「俺は全然平気」
むしろ、舞香を一人だけにさせたくない。
悟はそう言うと舞香の手を握り、彼女と顔を合わせる。
「行こう」
「はい…」
悟の言葉に、舞香はほんのり笑って小さく頷く。
そうして、司祭に案内される形で、二人は門を潜り、教会の中へ入って行った。
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