【1】転生少女は、五条家の子息と出会いました
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二週間後、舞香は一流ホテルの待合室にいた。
(ドラマで、こういうの見た事ある…)
柔らかいソファーに腰かけた舞香はそわそわしている。
今日は、此処で兄の友達の家族と食事会が行われる。
「和広、顔色いいな」
「うん、まあね…」
兄は、友達の男の子…闘也と話している。
この二週間、兄はたびたび徹夜して机に向かっていた。
…というよりも、眠れなくて机にしがみつくしかなかったのだが。
そんな兄を見兼ねて、舞香は子守唄を歌ってあげた。
その時に気付いた。
(あ、これって…)
舞香は、前世の力…魔法を使用できるようになっていた。
試しに、庭の枯れている花に力を注いでみたが、五分咲きの状態にまで回復させる事に成功。
現世ではどのくらい使えるのか、現在進行形でちょっとずつチャレンジしている最中だ。
「舞香ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです」
挨拶してきた目の前の少年は、藤基智彦。
舞香よりも六歳年上で、闘也の兄だ。
黒髪の柔らかい笑顔が似合う好少年で、物知りなお兄ちゃんである。
舞香とは趣味が合い、時々家に遊びに行って趣味の時間を共有している。
(智彦さん、本当に前世のお父さんに似ているわ)
前世の父も、智彦のように優しくて博学な人だった。
この人と一緒にいると、安心してしまう。
「舞香ちゃん、面白い本が手に入ったんだ。今度、見せてあげるよ」
「はい!」
食事会の場所は、バイキング形式のレストラン。
好きなものを自由にとれるので、兄と友達は競うように料理を取っていく。
母と友達の母は「食べきれない程の量は取らないでね」「お行儀よくしなさい」と注意しつつ、二家の父達と談話している。
「舞香ちゃん、僕達も取りに行こう」
「はい」
食べたいものをプレートに乗せて、元の席へ戻る。
サクサクのクロワッサン、とろーり半熟のオムレツ、ホカホカで肉汁ジューシーなソーセージ、
シャキシャキのシーザーサラダ、甘い木苺のジャムのかかったヨーグルト。
どれも美味しくて、思わず頬を緩めてしまう。
兄達が三回目に突入している時、舞香はトイレに行きたくなった。
「お手洗い」
「一人で大丈夫?」
母の言葉に、舞香は大きく頷いた。
レストランからやや離れたエレベーター付近にある事をさっき確認していたからだ。
(スッキリした…)
ハンカチで手を拭きながら、元来た道を戻っていると…
「こんにちは、本宮舞香」
パッと振り向くと、馴染みのある白髪の少年…五条悟がいた。
「こんにちは」
挨拶を返すと、悟がゆっくりと近づいてきた。
「此処で何してるの?」
「…お食事会です」
会うのは三度目だが、どうも名前で呼ばれるのに慣れない。
彼の前だと緊張してしまう。
あの青空色の瞳は綺麗だけれど、こちらの心の内を覗かれてしまうような怖さがある。
前世の自分と前世の母も同じ瞳の色だったが、この人の色はざわざわして”落ち着かない”
「それじゃあ…」
「待てよ」
そのまま通り過ぎようとしたら、手を掴まれた。
ちょっと驚いて彼に目を向けると、当の本人は眉を顰めている。
「…ちょっと来てほしい」
「どうしてですか?」
「食事、まだだろ?」
「一回食べました」
「まだ腹いけるだろ」
舞香は困惑している。
この人は、何がしたいのだろう…?
「上の階、美味いパティシエの店、予約してるんだ。
その…甘い物好きだろ? 一緒に食べないか?」
(ほわい…?)
要するに「一緒にお菓子を食べに行こう」という意味なのか
…三回しか会っていない、親しい訳でもない人を何故誘うのだろう?
「家族がいるから…」
「使いのヤツに連絡させておく。だから…」
押しが強い子だ。
このままだと本当に連れて行かれそうだ。
「あの…」
その時だった。
「伏せろ!」
「わっ…!?」
悟に抱きしめられる形で、舞香は地面に尻餅をついてしまった。
突然の行動にビックリしたが、彼が何故そうしたのか、すぐに理由が分かった。
舞香の視界に映る、グロテスクな異形の生物…呪霊が出現していたためだ。
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