【4】転生少女は、お出かけする(前半)
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「改めて、はじめまして。五条君」
デパートの外に出て、優月が挨拶をした。
「こちらこそはじめまして、本宮優月さん」
貴女の事は、父から伺っています…と悟は丁寧な口調で言った。
そういえば、悟の両親は優月と昔馴染みの間柄だった。
「ところで、お父様はどちらにいらっしゃるのかしら?」
「父は、ホテルで優月さんのお兄さんと話しています」
舞香は目を瞬きさせる。
優月の兄…つまり、舞香の父と五条家の当主が話し合いをしている。
仕事に関する重要な会談でもしているのだろうか。
「そうなると長くなるわね…きっと」
「父から『後でゆっくり話をしたい』と伝言を預かってます」
「あら、先輩から要望があるなんて珍しい」
『【話】って…絶対に響子さん関連の事よね。
花御さんとの一件があって、響子さんと距離を置くように仕向けた癖に、相変わらず図々しいです事。
今更、私を頼ろうとするのは、響子さんと上手くいっていない証拠よ。
あの人、当主としては優秀なのに…恋愛面はポンコツなんだから』
(叔母さん…辛辣すぎです)
舞香は笑顔を張り付けたまま、内心ツッコみを入れる。
同時に、優月の内なる言動にだんだん慣れてきている自分もどうなのだろう…と思えてきた。
「ところで、私達のところに来たのはメッセージを伝えにきただけじゃ…なさそうね」
「俺、四国に来たの初めてなんです。
家のめんどくさい行事と夏休みの宿題も終わったし、今日から本格的な休みを満喫しようと思っています。
もし、嫌でなければ…一緒についていってもいいですか?」
青い瞳…六眼をキラキラと輝かせながら、悟は買い物に同行したいと懇願してきた。
『舞香ちゃん、聞こえている?』
頬に手を添えて思案している優月が、精神感応(テレパシー)で話しかけてきた。
こくりと頷くと、優月はさらに質問を続けた。
『私が【ダメ】と言っても、五条君は多分こっそりとついてくると思う。
舞香ちゃん、五条君の事…苦手ではない?』
舞香は小さく首を横に振った。
悟とは友達になったばかりで、まだ知らない事が多い。
でも、現時点では嫌いではない。
『なら、連れて行きましょうか。
助けてもらった恩も返さないといけないし…』
その言葉に、舞香は大きく首を縦に振った。
優月は口元に弧を描くと、悟に視線を戻した。
「ええ、話し相手も多い方が楽しいし…来てもらおうかしら」
了承をもらうや、悟は「よっしゃ!」とガッツポーズを取る。
「これから、馴染みのカフェに行く予定なの。
さっきの御礼も兼ねて、少し遅めの午後のお茶会にしない?」
「賛成です」
「やった! もちろんOKです!」
舞香と悟はその提案に二つ返事した。
「御店はこっちの方角よ」と優月が道案内役で先に進む中、悟が「なぁ、舞香…」と話しかけてきた。
「なんですか?」
「手繋いで行こう。途中ではぐれるといけないし…」
悟はそう言って、再び舞香の手を取った。
「そうですね…よろしくお願いします」
確かに、今の時間帯は人も多くて、単独で行動していたら迷ってしまうかもしれない。
舞香は小さく頷くと、悟の手を優しく握り返した。
「…じゃあ、行こうか」
悟は、頬に集まる熱を隠すようにさっと前を向いた。
繋がれた手は…ほんのりと温かくて、なんだか安心する。
舞香は自ずと表情を緩めつつ、目的地へ足を進めて行った。
【転生少女は、お出かけする(前半)】
「闘也…どうしよう! どうしよう!?…どうしよーう!!??」
『とりあえず、落ち着け』
同時刻、ホテルの一室にて…
和広は携帯で親友にヘルプコールしている真っ最中だ。
昨日の夜は…一言で言えば【悪夢】だった。
白髪の悪魔…もとい五条悟が、時間帯お構いなしに来襲してきた。
お目当てである妹の舞香がいないと知るや、圧を伴った笑みを浮かべて、三時間くらい“お話し”する羽目になった。
《へぇ…なんで、事前に知らせてくれなかったんですか?》
《舞香が親戚のところに泊まるなら、こっちも準備してきたのに…》
《お義兄さん…あんたがどれだけ小細工しても、こっちはお見通しなんだよ》
「思い出すだけでも、寒気がするぅうううう…
しかも、後半にいくにつれて素を晒してきたし!
俺の事、脳内の格付けランキングで下に位置付けたんだ、きっと!
あいつ、絶対に前世はおっかない魔王だったに違いない!」
『そりゃ災難だったな。
つーか、逆に話し合いだけで済ませたんなら、まだマシな方だと思うぞ』
闘也の言葉を聞き、和広ははっとした。
呪術界のサスペンスドラマ顔負けの事件ファイルや、ドロドロした過激なメロドラマ以上の実例に比べたら…
確かに、悟との話し合いは穏便な方なのかもしれない。
そう思いたいのだが…
「なぁ、闘也…五条家って、今日は京都で行事があったんだよね?
あいつ、『二日間は香川県にいる』って昨日宣言したんですけど!?」
『その行事に、親父と本宮のおじさん…ご当主も出席したんだが、五条家はいなかった。
諸事情で、二日前に【欠席する】って連絡があったらしい』
「想定外だった、すまない」と謝る闘也。
すると、和広は「実は…」とぶるぶる震えながら言葉を続ける。
「五条家の当主様が…このホテルにいるんだ」
『うわっ…マジか』
「よりにもよって、最終手段をとってくるなんて…
現在進行形で、父さんが対応しないといけなくなってるし!?
やばいよ、このままだとチェックメイトされる寸前だよ!!」
和広の脳裏に、きょとんと小首を傾げる舞香と手を繋いだ…
不敵な笑みを浮かべる悟が浮かび上がる。
『舞香、これからはずっ~といっしょだよv
お義兄さん、将来は俺のげぼ…専属秘書になってね』
「イヤぁぁあああアアアアア!
最悪の未来ルートがまっしぐらだよぉおおオオオ!!
助けてぇえええエエエ!!」
『お前のそういうイメージ力抜群なところ、マジすげぇな』
和広のある意味豊かな想像力に、闘也は呆れつつも落ち着くように促す。
父と五条家当主の対談が三時間後に決着がつくまで…この騒がしい会話は続いた。
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