【1】転生少女は、五条家の子息と出会いました
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舞香には前世の記憶がある。
とある異世界で魔を司る種族だった父。
別の異世界で、かなり高い地位にいた特殊な種族の母。
そんな二人が大冒険と数多くの難関と修羅場を乗り越えた末に結ばれて生まれたのが、前世の舞香だった。
普通の人が聞けば、よくて「空想好きだね」と言われ、悪くて「妄想癖あるだろ」と言われるのは確実だ。
だが、事実なのである。
前世の記憶を取り戻してから、舞香は不思議なものが見えるようになった。
「おにいちゃん、あれなに?」
不思議なもの…それは万人受けする見た目もいれば、禍々しいものもあったりと千差万別。
「視線は合わせるな、絶対に」と念入りに言われてから、兄はその不思議なもの
…【呪霊】の事を説明してくれた。
本宮家は一応、呪術師の家系である。
現在、呪術師として働いているのは父の兄弟であり、父はどちらかというと秘書役だ。
呪術界の中では御三家とは距離を置いている中立派らしく、一族も一般的な業種に携わる人も多いためか、呪術界の負の慣習に染まっていないのが幸いだ。
「舞香は、呪術師になりたい?」
「ううん」
兄の問いかけに、舞香は首を横に振った。
話を聞く限り、呪術師はハードな職種であるようだ。
自分に務まるかどうかも分からないため、やめておいた方がいいと感じた。
素直に理由を言うと、兄は「その方がいい」と満足げに頷く。
兄も呪霊が見えて、呪術師になれる素質もあるようだが、呪術師になりたくないらしい。
理由は「早死にしたくない!」から。なんともシンプルかつ潔い答えだ。
両親も子の意見を尊重してくれるタイプで、将来はじっくりと考えてから、自活できるようになりなさい…というのが彼等の教育方針だ。
そのおかげで、舞香は堅苦しくない、のびのびとした生活を送っている。
母の勧めで習い事はいくつかしているが、どれも楽しいので苦ではない。
「本宮舞香、だよな?」
舞香が小学生になってから一つの変化が起きた。
入学してから一ヵ月、授業に慣れてきた頃に、その男の子と再会した。
「えと…」
「五条悟、思い出した?」
「五条さん、おはようございます」
朝だったから、まずは挨拶が基本。
挨拶したら、「おはよう」と返してくれた。
ちなみに、今は一限目が終わったところだ。
「あのさ…」
「?」
「今日、予定ある?」
いきなり、本日のスケジュールを聞かれてしまった。
五条悟とは、二年前のあのお茶会以来、全然会っていない。
再会して、唐突に質問を投げかけてきた真意は不明である。
「おけいこがあります」
不思議に思いつつも、舞香は答えた。
「キャンセルしてくれる?」
「?」
「今日休みなよ」
返ってきた言葉に、さらに謎が深まる。
お稽古事を休むように注文してきた。
『リーザ、よく聞いてね』
ふと、頭の中に前世の母の言葉が反芻する。
『貴女は優しい子だから、頼まれたら断れない事もあるでしょう?
でもね、それだと欲のある人にいいように付け込まれてしまう事があるの。
だからね…』
【理不尽な要求をされたら、ハッキリと断る勇気を持ちなさい】
「ムリです」
二度会っただけのほとんど知らない子から、一方的に要求される筋合いはない。
だから、ハッキリとお断りしよう!
舞香が断りの返事をした事に、悟は呆気にとられた表情となった。
…次の授業のチャイムが鳴り響く。
隙を狙って、「しつれいします」と舞香は教室へ戻って行った。
帰宅後、兄にその事を伝えたら「うん…頑張った」と褒めてくれた。
少々顔色が悪かったので大丈夫か…と心配になった。
その日の夜中、トイレで目が覚めて二階に降りたら、父と兄が話し合いをしていた。
『…家から…かけられた?』
『今のところは…でも、親戚経由で…話が…』
『…するしかない!』
『いや、それじゃあ…』
ところどころしか聞こえないため、どんな内容を話しているのかは分からない。
議論が白熱しているようなので、重要な話なのかもしれない。
(…明日、聞いてみよう)
ふぁ~と欠伸をして、二階へ戻った舞香。
翌朝、朝食の席で母に聞いてみると、苦笑しながら「大丈夫よ」とだけ告げられる。
母が言うのであれば、そうなのだろう…と思い、気にしない事にした。
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