【1】転生少女は、五条家の子息と出会いました
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本宮舞香は今日で五歳になった。
麗らかな春の季節…桜が舞う樹をじっと見つめていた。
「今日は皆でお出かけの日よ」
優しい母からそう言われて、連れてこられたのは屋外で行われるお茶会だった。
母と同じように煌びやかな着物を纏う女性や身形のいい男性など、いかにも上流階級だと分かる人達が集っている。一応、舞香も名家の出身であるが、たくさんの人が集まる場所に来るのは初めてである。
舞香と同じように親に連れてこられた子ども達もあちらこちらにいる。
慣れない場所に緊張していたり、親しい子と話をしていたりと…様々だ。
「はぁ…疲れる」
「おにいちゃん、だいじょうぶ?」
五歳年上の兄が面倒くさそうに溜息を漏らした。
大丈夫なのかと尋ねると、兄は苦笑してぽんぽんと優しく頭を撫でてくれた。
「平気だよ。舞香は周りが怖くないか?」
兄の問いかけに、舞香は小さく被りを振る。
「今年は子どもの数が多いな。五条家の子息が来るから尚更か…」
「?」
「あぁ~…気にしなくていいよ。
お、あそこにお菓子があるな…舞香は何食べたい?」
「しゅーくりーむ」
「OK。ここで大人しくしててくれよ」
お菓子が置かれているテーブルへ向かう兄から、視線を桜の樹へ移した。
(…きれい)
舞香は桜の花を見るのが好きだ。
毎年、この時期は家族でお花見に行く。
随分前…舞香が「舞香でなかった」時もそうだった。
(いまのわたしは「舞香」、前の私は「リーザ」…)
時折、頭の片隅から出てくる前世の記憶に気付いたのは三年前。
舞香は前世の自分の事を思い出してから、じわじわと今の記憶と程よく融合するまでよく熱を出した。
おかげで、病弱だと思われてしまい、家族…特に兄の過保護に拍車がかかったが、今ではすっかり健康体だ。
(…お兄ちゃん、おそいな)
兄がお菓子を取りに行って十分くらい経過した。
子ども達もいっぱいいるから混んでいるのだろうか…
「おい、お前」
誰かに呼びかけられた。
振り返ると、そこに白髪の男の子がいた。
年は一、二歳程上ぐらい…澄み切った青空のような碧眼に整った容姿は日本人離れしている。
「…はい?」
「お前、どこの家のやつだ?」
「(答えた方がいいのかなぁー)…………おうち?」
「そう、名前は?」
「もとみや、まいかです」
ぺこっとお辞儀すると、白髪の少年は少し俯いて「まいか…か」とこちらの名前を呟くと、舞香に視線を戻した。
「おれは、五条悟」
「ごじょー…さん?」
「五条」…さっき、兄が言っていた家の名前だ。
どのくらい凄いのか分からないが、おそらく由緒正しい名家なのだろう。
「名字じゃなくて、名前で言ってくれ」
目の前の少年がそう注文を付けてきた。
人に命令するのに慣れている感じだ。
(言った方がいいのかな…)
「五条様! 私の名前も聞いてください!」
「五条様、私、○○家の者です!」
舞香が答えようとしたその時、五人の女の子達(同年代から少し年上のお嬢様方)がやってきて
五条悟を取り囲むように次々と挨拶してきた。
「おい…聞いてない…」
悟は鬱陶しそうに「あっちへ行け」と手を振っている。
「舞香、こっちこっち…」
振り向くと、兄がすぐ近くまで来ていた。
こちらへ来るように小声で言い、手招きしていたのですぐにそちらへ行った。
「危なかったな…」
「なにが?」
「五条家の子息と会っただろ。何か言われなかったか?」
「おなまえ、おしえてって言われたよ」
素直に言うと、兄は苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべた。
「…他には?」
「ごじょーさん、みょうじじゃない方がいいらしいよ」
「そうか、あっちに行こう」
兄に手を握りしめられると、スタスタとその場からかなり離れた場所へ移動する事となった。
舞香は頭に疑問符を浮かべつつも、大人しく一緒に行く。
「おーい、和広」
「あ、久しぶり。この人はお兄ちゃんの友達だよ」
それから、兄は仲の良い友達と会い…
「はじめまして、舞香ちゃん」
「はじめまして」
舞香はそこで素敵な出会いを果たす事になった。
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