【3】転生少女は、植物の御方と邂逅しました
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「叔母さん…」
意識を取り戻した優月に、舞香は大きく目を開いた。
『大丈夫。さっき倒れたのは、呪力を提供する加減をちょっと誤っただけだから…
舞香ちゃんのおかげで楽になれた。
…ありがとう』
叔母は微笑みを浮かべているが、口を動かしていない。
頭に伝わってくる彼女の言葉は…【精神感応(テレパシー)】だ。
(叔母さん、呪力以外にも特殊能力があるの?)
斜め上を行く展開に、舞香は思考が追い付かなくなってしまう。
疑問符を周りに浮かべている彼女をよそに、優月は立ち上がるとつかつかと歩を進めていき、花御の前に立った。
『花御さん、【縛り】を忘れたわけじゃないでしょうね?
私の家族や大切に思っている人に手をかける事はご法度よ』
「危ないよ、叔母さん」とおろおろする舞香。
だが、姪の心配とは裏腹に、優月は腰に手を当てて捲し立てる。
普段の温厚なイメージとは打って変わった彼女の豪胆な姿に、舞香は混乱している。
【その娘と貴女の関係は?】
『私のとっても可愛い姪っ子です!』
【なるほど、よく見れば顔が似ています】
腑に落ちたというように、花御は顎に手を押し当てて頷く。
『舞香ちゃんは、私と貴方の間にある契約の事を知らないから、私を助けようとしたのよ』
【ふむ、ですが…随分と秘密を抱えている娘ですね】
花御の言葉に、舞香はドキッとした。
この呪霊は感付いてしまったのだろうか?
舞香が、普通の子どもと違う特別な【ギフト】がある事に…。
『覚醒遺伝かもしれないわね。私と同じように…』
(え、遺伝って…?)
優月が複雑そうな顔で言った事に、舞香は聞き逃さなかった。
次々と浮上する謎に、形容しがたい不気味さを感じてしまう。
ここで深く思考すると、ややこしくなりそうなので止めておこう。
今、解決すべきは…優月と花御の件だ。
(…勘違いしていた)
当初、叔母は何かしらの理不尽な理由から、呪力を搾取される被害者で、花御は加害者であると思っていた。
けれども、目の前で繰り広げられる二人のやり取りを見て…
それが間違いであると認識を変えなくてはならなくなった。
【貴女の血縁者だとしても、こちらの邪魔をした事に変わりありません】
『実際に、私に罰がきていないからセーフでしょう』
【そうだとしても、大切な儀を中断されてしまった事は不快です。
この落とし前…どうつけるおつもりですか?】
会話から、花御は相当ご立腹のようだ。
優月から呪力をもらっている最中に、舞香の介入で中断させてしまった。
勘違いであろうとなかろうと、彼にとっては関係ないようで…
表情からは読み取れないが、言葉に静かな怒りが宿っている。
(どうしよう…ピンチが再び!?)
舞香は焦った。
このままだと、花御が自分のみならず叔母を傷つけてしまう可能性がある。
「なら、再開すればいいのね」
すると、優月が唇を動かした。
精神感応から自分の声に切り替えて、言葉を紡いだ彼女は、浴衣の帯をしゅるりと緩め、
肩を滑らせるように、上半身を露わにした。
(お、叔母さん…何をする気なんですか?)
優月の思いがけない行動に、舞香はあわあわと困惑する。
怪訝そうに首を傾げる花御の右手を、優月は両手で掴むと…
「はいどうぞ。思う存分、差し上げるわ」
そのまま花御の右手を胸の谷間に押し当てた。
(えええっ…!)
ちょうど、呪力が放出されている紋様が描かれているところに花御の右手が覆い被さった。
呪力が彼の右手に流れ込んでいき、サラサラと流れる血液のように全身に行き渡っていく…のが舞香の目に見えた。
【まったく、貴女という人は…慎みを持ちなさい】
「手を繋いで、時間をかけて呪力を捧げるよりも効率的だと思うけど?」
【素肌を晒して、胸元に手を押し当てる行為…他の人の児から見れば、非常識極まりないでしょう】
呆れ混じりの説教をする花御に、舞香は内心「その通りです」と肯定した。
この場に兄の和広がいたら、風呂でのぼせた時のように、顔面を真っ赤にして気を失っていたはずだ。
それ以前に、花御がいるだけで口から泡を吐いて気絶しそうだが…。
「安心して。貴方以外に肌を見せるつもりはないわ」
そう答えた優月は艶然と笑っている。
(それって、それって、つまり…)
叔母の意味深な発言に、舞香ははわわっと頬が赤くなる。
花御をちらりと見ると、彼ははぁ…と溜息を吐いた。
【本当に…罪作りな人です】
ぽつりと呟いた言葉。
声音から、彼も満更ではないようだ。
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