【3】転生少女は、植物の御方と邂逅しました
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恐る恐る振り返ると、その呪霊は堂々とした様子で立っていた。
筋骨隆々とした男性の身体で、白い肌に黒い紋様が枝葉のように走っている。
本来眼球があるべきところから二本の植物が出ており、鉄兜と頭蓋骨を合わせた容姿。
左腕全体を布で覆っているその存在に…
舞香は畏怖の念を抱かずにはいられなかった。
「…どなたですか?」
高位の呪霊なのは間違いない。
そして、先程…独自の言語で話しかけてきた事からも知能も高い。
話が通じるかどうかは分からないが、とりあえず聞かずにはいられなかった。
【…人の児よ、邪魔をしないでください】
先程は意味不明だった言語が、日本語へ切り替わった…!
いや、頭に直接その存在の思考が流れ込んできて、言語の意味が通じるようになった…というべきか。
「じゃま…? 叔母さんに何をしたんですか?」
舞香は、ソファに倒れ込んでいる優月に視線を戻す。
全身から汗が流れ落ち、顔が火照り、息切れの症状が出ている。
(落ち着いて、落ち着いて…)
舞香は心の中で自分に言い聞かせると…行動を開始した。
優月の手を右手で握りしめるのと並行して、左手を翳した。
『絢爛たる光よ、惨禍を和らぐ壁となれ…フォースフィールド!』
この魔法は、透明な障壁を張り巡らせて敵の攻撃から守る効果がある。
【結界…初めて見る術式ですね】
見知らぬ少女に不意を突かれた事に、高位呪霊は驚いているようだ。
(今の内に治療して…それから紋様を解呪する)
握りしめた手から回復魔法を発動させつつ、舞香は胸元に描かれている紋様を見る。
(これって…)
紋様に描かれている文字、並び方…それらを調べてみて、舞香は気付いてしまった。
(ダメ、これは解いたら…逆に危ない!)
描かれている紋様は、『契約』を意味するもの。
つまり、優月は高位呪霊との間に何かしらの契約を交わしている事になる。
(まさか、あの【縛り】は…)
舞香は、優月のステータスに記載されていた【縛り】の事を思い出す。
すぐに再び画面を映し出すと…
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◇縛り
特級呪霊【花御】との間で交わされた縛りのもと、対象者は定期的に【花御】へ呪力を捧げなければならない。
その対価として、【花御】は対象者の要望を叶える。
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黒塗りの部分が外されて、縛りの内容が判明していた。
(特級呪霊【花御】…なんで、叔母さんは縛りを…)
ガッ、キキンッ、ゴッ!
鈍い音が耳に届き、振り返ると…
呪霊…花御が障壁を素手で殴ったり、出現させた木の鞠から出る鋭い棘を用いて攻撃していた。
(まずい…!)
生前のリーザであれば、大規模な魔法が降り注いだとしても、障壁は傷一つつけられない程の強固な守りとなっていた。だが、舞香の今のレベルでは連続の攻撃にどのくらい耐えられるか分からない。
【人の児よ、再度警告します。
その者から離れて、大人しく部屋から出ていきなさい】
花御が諭すような口調で、舞香に部屋から出ていくように告げる。
どうやら、目の前の存在は無暗に血を流すような好戦的な趣味はないようだ。
舞香を見逃す代わりに、優月を引き渡せと要求してきた。
「それは…できません」
【―――何故?】
今の舞香では、真っ正面から戦っても勝機はない。
花御の要求に従えば、命は助かるだろう。
「あなたが、どんな理由で叔母さんにこんな事をしたのか分からない」
しかし、舞香の中では恐怖よりも義憤の感情が遥かに上回った。
「私は…大切な人が傷つく姿を黙ってみているなんてできません」
目の前にいる存在がいかに強敵であろうと…
理不尽な、残酷なこの状況に「逃走」という選択肢を取るなんてできない。
むしろ、逃げたら…【負け】だ!
「どんな事情があろうと、これ以上、叔母さんを傷つけるようなら…私はあなたを許さない!」
ピキピキ、パリーンッ!
舞香が叫ぶと同時に、透明な障壁にヒビが入り、破壊されてしまった。
こちらを見下ろしてくる花御に対し、舞香は強い眼差しを向ける。
【なんと無謀で憐れな娘でしょうか…
ならば、苦しまぬように花弁となって散りなさい】
二度の警告を無視するなら、最早容赦はしない。
花御が右の掌を広げて、舞香の頭へ近づけてくる。
迫りくる脅威に、舞香も無詠唱で攻撃を仕掛けようとした…その時だった。
『二人ともやめて!』
突如、頭に伝わってきた…聞き覚えのある女性の声。
舞香と花御は、バッとソファへ視線を向けると…
はぁはぁ、と息を切らしつつ、上半身を起こした優月がこちらを見据えていた。
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