【17】転生少女は、反省部屋で先祖の秘密を知る
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解読を再開してから、20分が経過した。
解読するにあたり、過去の書物にヒントがあるのではないか…
頭に閃きの光が走るや、舞香は本棚にある書物をいくつか取り出して読み込んでいく。
(明治時代…当時の本宮家当主は、人材育成を熱心に行っていたのね)
本宮家の歴史を辿ると、様々な発見がある。
明治時代の当主がある事件をきっかけに、保守派から脱退。
以後、日本各地から才能のある人材を集めていき、優秀な呪術師や治癒術師等を育成する教育機関を設立し、
これにより、中立派を大きく成長させたそうだ。
大正時代では、分家出身の女性呪術師が陰で男装作家として活躍したらしい。
著名な文学作家達と交流があった…と興味深い情報が書かれている。
(ご先祖様達は、意外と歴史の陰で動いていたのね…)
尤も驚いたのは、第2次世界大戦が終結して現在に至るまで…
本宮家は藤基家に協力する形で日本各地で活躍していた事実だ。
戦争で多くの若き呪術師を亡くしてしまい、疲弊していた呪術界に変革をもたらす最大の要因となった事。
戦後、各地で争い事や凶悪事件が頻発していた時期に、一族の猛者を派遣して秘密裏に解決へ導いたり、
後始末を行っており、裏社会からも一目置かれる存在となった事。
そんな記載を目にして、舞香は「なるほど」と納得した。
(時々、有名な議員やその筋の偉い方が本宮家を訪れるのは、そういう背景が関わっているのね。
…大伯母さんと接触する機会を求めているのも理由かしら)
年末年始の行事の時だけ会える大伯母…武平麗子。
前当主の慶一の姉である彼女は、政財界の重鎮と言われる夫…武平礼道の実質的な右腕として活動している。
国内だけでなく、海外の政財界に属する著名人達と太いパイプがある
…と麗子本人が宴の席で話してくれた事を、今更ながら思い出す。
(【761OO17NO01KYO115KO】と……うーん、反応ない)
初日からパスワードを試していき、639回目。
今のところ、新しい発見は出てこない。
(簡単にパスワードが見つかっても、それはそれで微妙だけど…
そろそろひとつぐらい見つかってほしいなぁー)
頭上にぐしゃぐしゃと線を潰したような不機嫌な漫符が浮かばせながら、作業を進めていると、
コンコンッと小さな扉をノックする音が聞こえてきた。
『舞香様、お食事をお持ちいたしました』
昼食の準備ができたとの合図があった。
先程の直哉の来襲の時とは異なり、声掛けがあったのだが…
(問題は…声の人物が分からない事)
聞いた事がない女の人が声の主であるため、舞香は扉を開くのに待ったをかけた。
相手側の出方を伺っていると…
『舞香様、あの…扉を開けていただけますか?』
再び声掛けをしてきた。
舞香は口元を右手で覆い、喋られないようにじっとしている。
此処で諦めてくれるか、それとも逆ギレしてしまうのか…
『も、もしかして…倒れているんじゃ…!?』
おや、こちらの身を案じてくれている…?
声の様子から、なんとなく動揺しているのが感じ取れる。
「どうしよう」「誰か呼んだ方が…」と呟く声が響く。
…うろたえているようだ。
「…どなたですか?」
恐る恐る返事をすると、扉の向かい側にいる女の人は「舞香様の声…よかった、生きてる!」と
舞香が無事であった事に、安堵と歓喜の声を出した。
「すみません。新人の方ですか?」
『あ、はい…中野理美と申します。
先日は、妹…風音が粗相をしてしまい、大変申し訳ございませんでした』
「先日? 妹さん…ですか?」
『恐れ多くも…舞香様が、御当主様のご機嫌を損ねてしまい、こちらの蔵に入る原因を作った女子です。
私が言うのもなんですが、風音はそそっかしい子で、落ち着いて行動せずに先走る事が多くて、
その所為で、舞香様や他の使用人の方に多大なご迷惑をおかけいたしました』
舞香はあっ…と声を漏らした。
脳裏に、五日前に衣類の籠を持って走ってきた女の子の使用人の姿が浮かび上がる。
(あの子の御家族でしたか…)
反省部屋の生活に馴染んでいたので、自分が此処に入るきっかけとなった少女の事をすっかり忘れていた。
舞香は恐る恐る扉を開けると…
15、16歳くらいの黒髪のショートヘアーの女子がいた。
「ところで…妹さんはどうなったのでしょうか?」
「反省のために、女中頭の指導を受けております。
いずれ、舞香様に償いたいと申し出ております」
「あの、気にしなくていいですよ!
これから気をつけてくだされば…それで充分です!」
あまりにも重苦しい雰囲気で、「すみません、すみません」と土下座している理美に、
舞香が「やめてください」と顔を上げるように言った。
「ありがとうございます。それから、よろしければ…こちらをご賞味くださいませ」
理美はそう言うと、おむすび5個と卵焼き8個、焼いたウインナー7本を乗せたお盆を差し出した。
「これは…」
「舞香様が蔵に入られてから、御当主様からの罰として、お食事をあまりとられていないのではと心配で…
もし、足りないようでしたら、またこっそり作ってお持ちいたしますので!」
「あ…ありがとうございます」
舞香はなんとも言えない表情で、一応御礼を口にしてそれを受け取る事にした。
理美は「それでは、失礼いたします!」と告げると、足早に去っていった。
(…うん、変なものは混ざっていないみたい)
念のために、鑑識の魔法を使用したが、毒や異物等は全く入っていない。
理美は純粋にこちらを心配して、食事を運んできたようだ。
(それにしても…おむすび、大きいな)
大人の拳大の大きさに、舞香は食べきれるかな…と苦笑する。
『舞香様、昼餉をお持ちいたしました』
その直後、扉を叩く音と共に、馴染みのある女中さんが声掛けして来た。
本当の昼食が運ばれてきた事に、舞香は冷や汗を流してしまう。
(お夜食にとっておいた方がいいかな…)
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