【17】転生少女は、反省部屋で先祖の秘密を知る
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舞香が反省部屋で過ごすようになり、五日目となった。
時刻は午前5時30分。
舞香はうーんと背伸びをしながらベッドから起き上がった。
一階へ降りていき、階段付近の右側の壁に手を当てると、ぶんっとタッチパネルの画面表示が出てきた。
「026」と入力すると、眼前の壁に正方形を象った光が出現する。
数秒経たない内に光は収束していき、檜の扉が出来上がっていた。
扉を開くと、そこには洗面所があり、その奥の部屋には広い浴室がある。
(まさか、こういうシステムがあるとは思わないわよね…)
このシステム…もとい、魔法は蔵全体に施されている。
パスワードを入力する事で、隠し部屋への入り口を出現させる仕組みだ。
これらは、古の時代に先祖である藤基久路斗の手により創造されたもので…
分家である本宮家が引き継いだ遺産のひとつでもある。
反省部屋に隠されている部屋は無数にある。
歴代の本宮家の当主が解読した【久路斗日記】により、その事実が記されていたのだ。
反省部屋に入ったであろう一族の者達は、宝探しをするが如く部屋の解析に熱中したそうだ。
(その気持ち、とっても分かる)
タオルで洗った顔を拭きながら、舞香は研究熱心な先祖の人達の気持ちに共感した。
前世のリーザは謎解きが好きだった。
かつて旅を共にしたエルフの少女とダンジョンを探索している時に、古代語を読み解く事に熱中したくらいだ。
『リーザは三度の食事よりも、謎解きの方が大好きなんだね』
エルフの少女がやや呆れた様子でそうコメントしたのは、今でも鮮明に記憶に残っている。
そういう彼女も、判別魔法で99%の確率で
噛みつかれてしまう困った短所があったけれど。
(午前中に勉強を済ませて、残りの時間を解読に費やそうかな…)
そして、現世の舞香にも…そういう謎解き好きが受け継がれている。
運ばれてきた朝食を済ませ、寝間着用の浴衣から用意された夏服(半袖Tシャツとショートパンツ)へ
着替えると、舞香はすぐに行動を開始した。
本日分の夏休みの宿題を終わらせると(この時点で9割が片付いた)、一階で暗号の解読に勤しむ。
(数字だけかと思えば、アルファベットの組み合わせもあるし…
ご先祖様はよほど暗号作りが趣味だったかしら?)
藤基久路斗は、異世界の魔法使いだった。
何の目的でこの世界に降り立ち、自らの血を受け継ぐ一族を残したのか?
(ご先祖様は…どの種族だったのかしら?)
ふと、ある疑問が浮かび上がる。
久路斗の種族は、人間族だったのか?
反省部屋の暗号は勿論、遥か昔に残した高性能の呪具、藤基家と本宮家のみで使われる古代語など…
並の人間族では難しい功績を残している(卓越した才能や頭脳があったり、前世持ちなら可能性はあるが)
…久路斗は長命種族の可能性が高い。
それなら、色々と辻褄が合ってくる。
舞香はうんうんと頷いていると、部屋の片隅にある木製の小さな扉をノックする音が響いた。
携帯の画面を見ると、午前11時55分を表示していた。
(お昼ご飯かな…)
扉に近づこうとしたその時、舞香ははてな…とある違和感を覚える。
(むむっ、声掛けがない…)
食事や衣類回収の時は、担当する人は必ず声掛けしてくれる。
それがないという事は…【鼠】の可能性がある。
舞香がじっと様観していると、再び扉がノックされる。
(…うん、間違いない)
どうやら、【黒】で確定のようだ。
こちらが扉を開けるように仕向けているようだが…
(でも、開けませんよ~)
そう易々と「開ける」選択は取らない。
「押すなよ!」と言って、流れ的に押す事を推奨していたとしても、舞香は「押さない」を選ぶ方なのだ。
心なしか、だんだんとノックする音が強くなっている。
「叩いている人物の手は大丈夫なのか」と別の心配をしていると…
『おい、強く叩くな。壊したら弁償できるのかよ』
すっかり耳に馴染んでいる男性…甚爾の声が聞こえてきた。
『と…甚爾くん!』
そして、ノックしていた人物も特定された。
…禪院直哉であった。
(なんで、禪院さんが此処に…)
直哉が本宮の本家を訪れるのは…舞香が知る限りでは、一年前に一回あった(表9話参照)
今回も、直毘人の気紛れに付き合う形で一緒に来たのかもしれない。
そっと扉付近に耳を澄ませてみると、彼等の話し声が聞こえてきた。
『甚爾くん、家に帰ろう!』
『嫌に決まってるだろーが』
『家の連中は、誠仁叔父ちゃんが躾てる!
甚爾くんの事、おちょくる奴らがおるんやったら、すぐにこらしめたるから!』
『そりゃ大した大掃除をしてるな…』
『甚爾くん…!』
『だが、断る』
『なんでやねん!?』
会話だけで、二人がどんな表情をしているのか…なんとなく想像できてしまう。
意外に感じたのは、直哉の甚爾に対する感情だ。
聞こえてくる直哉の言葉からは、禪院家では嫌悪と蔑視の対象のはずの甚爾の事を嫌っている様子がない。
むしろ、その逆のように感じられる。
『ていうか、此処で何してるんだ?
家のストレス発散兼ねて、対立派閥の所有する蔵に八つ当たりか?』
『ち、ちゃうわ! 俺はこの中にいる舞ちゃんに用があって…』
直哉の言葉を聞き、舞香は糸目になって「うわぁ…」と小声でなんとも言えない声を漏らす。
直哉は、致命的な失言をしてしまった。
なんで、舞香が蔵の中にいる事を知っているのか?
つまり、彼は自ら『【鼠】の主が禪院家である』とカミングアウトしたのだ。
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