【17】転生少女は、反省部屋で先祖の秘密を知る
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冒険の書を読み終えて、分かった事。
反省部屋…土蔵には仕掛けが施されており、目には見えない部屋が隠されている。
歴代の親族が見つけて、明らかになっている部屋はいくつかあり、冒険の書には一か所だけ記載があった。
(この場所は後から調べよう。さてと…)
舞香は椅子に腰を下ろすと、デスクの上にラッピングされた紙包を置いた。
ちょっぴり小腹が空いたので、お菓子タイムにしよう。
紙包を広げると、ハートや星、花の形等の型抜きクッキーが入っていた。
一枚とって、ぱくっと食べてみる。
「うふふ、おいしいv」
シンプルでありながらも、卵の豊かな風味と優しい甘さが口に広がる。
サクサクとほろほろした触感で、飽きがこない美味しさだ。
三個目を食べようとした時、広げた紙に目が止まる。
(何か書かれている…?)
デスクに置かれていた箱からティッシュを取り、そこにクッキーを移す。
改めて、広げた紙を見ると…
【『132』 電話をかけて】
書かれていたメッセージに、舞香は目を瞬きさせる。
視線は自ずと、先程の電話へ向けられる。
再び受話器を取り、番号を押していくと、プルルルル…と呼び出し音が鳴り出した。
『舞香ちゃん、さっきぶり』
「あ、芽衣子伯母さん…!」
電話に出たのは、芽衣子だった。
驚きの声をあげる舞香を予想していたのか、電話の先にいる芽衣子はクスッと笑みを零す。
『隠しメッセージに気付いてくれたのね。意外と早くてビックリしちゃった』
「どうして、あのようなメッセージを…」
舞香の疑問に対し、芽衣子は「それはね…」と言葉を続ける。
『舞香ちゃんに重要な事を教えましょうか。
実は…本家でちょっと大変な事が起きています』
「…! もしかして、スパイが紛れ込んでいますか」
『半分正解。すごいわ、舞香ちゃん♪』
芽衣子曰く、本家に【鼠】が潜んでいるとの事。
昨年に潜んでいた【鼠】は捕獲の後に駆逐したが、今年も恐れ知らずな者が侵入してきたようだ。
『【鼠】が誰なのかは調べている最中よ。それと、もうひとつ問題があります』
「『半分正解』と言っていた件ですか?」
『その通り。只今、本宮家には縁談の嵐がきています』
返ってきた答えに、舞香は「ふぁっ…!」と声を漏らしてしまう。
兄の和広から話は聞いていたが、呪術界では保守派が他の派閥を取り込もうと躍起になっているそうだ。
お年頃の女子や男子に、お見合いが舞い込んできているとか…
その波は、本宮の本家にまで及んでいた事を改めて理解した。
『大体の縁談はうまく断る事に成功しました。
でもね、保守派の力の強い二つの家だけしつこく粘っていてね…
今週中に、その二つの家の代表者の方々が和真さんと会談する予定になっているの』
「それは…大変ですね」
『だから、舞香ちゃんに避難してもらったのよ』
返ってきた言葉に、舞香は「ん?」と小首を傾げる。
『和真さんのお気に入りのお皿を割ってしまったとはいえ、あれは故意ではなくて事故でしょう?
そんな事で可愛らしい姪を反省部屋に連れていく程、あの人の器は小さくないわ。
今、潜んでいる【鼠】はお見合いを強引に押してくる保守派の二家の手先の可能性が高いの。
本宮の一族で明確に婚約者がいないのは、航生と分家の子ども達。
中でも、舞香ちゃん…貴女が一番大人気です』
告げられた事実に、舞香は「ひぇっ…」と困惑してしまう。
舞香はヴァルハラ教団のスウェア(シスター候補生)である。
聖職者を目指しているので、将来的に結婚する可能性が低い…というか、ないに等しい。
母や本家・分家の人達にも話を通して、お茶会や夜会でそれとなく情報を広めてもらっているはずなのに…
『舞香ちゃん、呪術界を甘く見てはいけません』
こちらの心情を察したのか、芽衣子が真面目な口調でそう指摘する。
『こちらが「婚姻とは無縁の職業につく」と明言したとしても、
いくらでも撤回できる方法があるの。
特に、保守派や上層部の人はね…その状況を作る事が得意なのよ』
舞香ははっとした。
そうだ、忘れていた。
前世でも現世でも…
いつの時代の権力者や特権階級の人々は、己の利益となるためなら、なんでもする事が多い。
時には、人には決して見せられない口に憚るような所業さえも。
『ごめんなさい、怖がらせちゃったかしら』
「いえ…教えてくださり、ありがとうございます」
『大丈夫。貴女を怖い大人の人達の元には絶対に行かせませんからね』
舞香を気遣うように、芽衣子はそう断言した。
常日頃、微笑みを浮かべる物腰柔らかな伯母。
実は、本宮家に嫁ぐ前の彼女は…かなり特殊な仕事についていた。
それ故なのか、理不尽な行いをする輩に対しても臆する事なく、
逆に相手を退ける事ができるそうだ(娘の明里談)
『だから、舞香ちゃんには反省部屋で暫く隠れてもらう事になります。
食事や衣類、必要なものは信用できる人に運ばせるから安心してね』
「はい、よろしくお願いいたします」
『差し当たり、何か持ち物でほしいものはありますか?』
伯母からの問いかけに、舞香は「うーん」と少しの間 逡巡すると口を開いた。
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