【17】転生少女は、反省部屋で先祖の秘密を知る
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反省部屋の外観は、日本の伝統的な土蔵である。
遠目から見た事はあるが、改めて近くで見るとその大きさと美しい佇まいに目を奪われてしまう。
反省部屋の入口に着くと、和真は扉に手を翳した。
「***** @@@@@ #####」
日本語ではない言語で呪文を唱えるや、独特の紋様がほんの刹那、扉全体に現れる。
すると、固く閉じられていた入口の扉が開いた。
(今の言語は…)
「舞香ちゃん、中に入りなさい」
和真から入室するように指示され、舞香は小さく頷く。
「この扉は、内側からは開けられない仕組みになっている。
私、もしくは芽衣子がいいと判断するまで、舞香ちゃんにはこの中で反省してもらう」
「…分かりました」
思う所はあるものの、此処は抵抗しない方が得策だ。
そう判断した舞香は素直に了承した。
「弟夫婦と和広君には詳細は伝えておく。
くれぐれも逃げ出すような愚かな真似はしないように」
念には念をと言わんばかりに、強い口調で釘をさすと、和真は踵を返して屋敷へ戻っていった。
「舞香ちゃん、はいこれ」
扉を閉める着前、芽衣子が可愛らしいラッピングされた紙包を渡してくれた。
「今日作ったお菓子よ、お腹が空いたら食べて」
「いいんですか?」
「和真さんには内緒よ」
ぱちりとウインクする伯母は、とても可愛らしい。
本宮家現当主の妻であり、3人の子持ちである彼女はお菓子作りが趣味だ。
本家に来た時は、必ず自身の手作り菓子を子ども達にもてなしてくれる。
どのくらいこの蔵にいればいいか不明なので、僅かながら食べ物があるのは有難い。
「ありがとうございます」と受け取る事にした。
「さてと…」
扉が閉まり、やや薄暗くなった中を見渡す。
土蔵は二階建て。
一階には古い書物や物品を保管する棚が並んでいる。
(窓があそこにある…それと、埃っぽくない)
人差し指で棚をなぞってみるが、付着する埃もなく、綺麗に磨かれている。
床や周囲も同様である事から、定期的に使用人が清掃しているのだろう。
窓は鉄格子がつけられており、舞香では手の届かない高さに設置されている。
魔法を使えば、窓から外で出る事はできそうだが…
(うん、やめておこう)
先程、伯父に警告されたばかりだ。
今は、緊急を要する事態でもないので脱出する必要はない。
…なので、土蔵の中の探索を続行しよう。
(すごい…古い書物がたくさんある)
棚には年代別に、たくさんの書物が並べられている。
平安時代の古いものから、3年前の比較的最新のものまで勢揃いだ。
さらに、驚く事にどれも劣化しておらず、保存状態がいい。
舞香の見立てでは、劣化防止や害虫・害獣駆除等の複数の魔法が同時にかけられている。
なかなか腕のいい人物が術を施したのか、効果が継続している。
(あ、ここに小さい扉がある)
部屋の片隅に木製の小さな扉があった。
サイズとして人の出入りはできなさそうだ。
(ここだけ、開ける事ができる…外の様子は限られた範囲しか見れない)
扉の向こう側から見えるのは、土蔵の周囲の庭の景色の一部。
この小さな扉の使用意義は何だろう?
ひとつの疑問が浮かびつつも、舞香は調査する場所を二階へ移す事にした。
木製の階段を上がっていくと…
「うわぁ…」
最初にある程度掃除はしているけれども、謎の骨董品や絵画などが犇めく空間なのではと想像していた。
海賊の財宝の在処を示す地図が隠されているような、ワクワクとドキドキが詰まった雰囲気だといいな
…【グー〇ーズ】みたいに。
…と思っていたけれど、実際は脳内で描いていたイメージとは全く異なっていた。
一階と同じ鉄格子がついた窓の傍にある年季の入った木製のデスク。
その周りには、一人用のベッドや複数人が座れるソファーベッド…
子ども用の玩具を詰めた箱、伝記や辞書、参考書、有名なタイトルの漫画等を揃えた本棚がある。
「子ども部屋みたい」
舞香は興味深そうに視線を巡らせていく。
ふと、ベッドの近くの壁に固定電話が設置されている事に気付いた。
これは、外部と連絡できるのではないか?
恐る恐る受話器に手を伸ばそうとして、ボタンを押していく。
「うーん…」
リエの携帯番号へ試しにかけてみたが、繋がらない。
…物事はそう簡単に上手くいかないものだ。
他の箇所を調べよう。
視線を動かしている最中、デスクの上に置かれているある物が目に入る。
「ノート…?」
A4サイズのノートがそこにあり、題目に『冒険の書』と書かれていた。
舞香はそのノートの頁をぺらりと捲る。
《本宮家もしくは藤基家の者達よ。
此処に足を踏み入れてしまったという事は、大小あれど罪を犯してしまったのだろう。
悲しむ事はない、人は誰でも間違いをする事はある。
肝心なのは、その過ちを繰り返さずに、如何に反省し、次に生かすかである》
まるで、有名RPGのナレーション風な文言だ。
そもそも、ノートのタイトル自体がRPGに出てくるセーブファイルの名称である。
(さしづめ、取扱説明書みたいなものかな…)
読み進めていくと、ある事に気付く。
ノートの筆跡がところどころ違う。
おそらく、反省部屋に訪れたであろう親族が一人一人書き足していったのだろう。
《諸君、空腹に耐えかねたならば、とっておきの情報を提供しよう。
一階に隠されている秘密の扉…そこにありったけの財宝(食べ物)を置いてきた。
探すがいい! 『欲しい』=【正義】なのだ!》
《↑カップ麺の賞味期限を考えろ、愚弟。
消費期限も半年もたんだろうから、期限がとっくに過ぎていたら、食べる前に速やかに廃棄するように》
(このやり取り、昔からなのね)
叔父二人が書き記した内容に、思わずくすりと笑みを零してしまう。
そうして、一頁ずつ捲っていき、冒険の書を読み進めていった。
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