【裏5】五条少年は、最大の強敵を定める
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「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、コラソンさん」
悟との話し合いから数時間後、聖職者の服装に着替えたコラソンが教会の休憩所へ帰ってきた。
リエは挨拶をしながら、休憩所にある台所で大きな鍋をお玉でぐるぐるとかき混ぜている。
ヴァルハラ教団は基本的に礼拝時間等は決められているが、緊急時に備えて深夜の時間帯でも聖職者が随時待機している。その間、職務に支障をきたさないために食事をとる時間帯も設けられている。
そのため、リエは夜食用のシチューを作っている最中だ。
シチューを小皿に移すと、コラソンにそれを渡した。
「いかがですか?」
「うーん、もうちょっと味濃くてもいいかと」
「ありがとうございます、素を足しますね」
味見に付き合ってくれた事に感謝するリエ。
コラソンはソファーに腰かけると、テーブルに置かれている器の中から一口サイズのチョコレートを手に取る。
「任務はいかがでしたか?」
「無事に終わりましたよ」
今日行った任務は、ハートレス退治だった。
舞香にとっては初めての実践であったが、彼女は緊張する事なく、実力を発揮した。
そのおかげで、時間をあまりかける事なく、依頼は二十分程度で完了した。
「任務は難なく終わったんですが…」
「他にアクシデントが起きましたか」
「呪術界の関係者に遭遇しました。
強面の男性で…呪術高専の生徒を複数人連れていた事から教師だと思われます。
こちらと同様にハートレス退治で…」
「どのように対応しました?」
「生徒の二人はこちらに突っかかってきましたが、その教師が宥めてくれたおかげで争わずに済みました。
こちらも丁寧に言っておきました…『謎の魔物は討伐しました、御足労どうも』っとね」
コラソンはやれやれと言わんばかりの表情で肩を竦めつつ、当時の状況を報告する。
コラソン達は、身元は明かさずに「フリーの魔物退治屋」という感じで自己紹介した。
呪術高専側は、詳細を聞くために高専に連れて行こうとしたようだが、指導者の男性が制止してくれたとの事。
「舞香ちゃんの方は大丈夫でしたか?」
「もちろん。対策もばっちり施してましたから」
呪術師の家系は、基本的に本家の長男一家に注目が集まりがちだ。
ただ、知名度の高い家系となると分家に連なる一族の顔ぶれも覚えておくのが、呪術界における常識である。
平安時代から存在する藤基家の傍系であり、凄腕の能力者を輩出する本宮家の一員である舞香も顔が知られている。そのため、エージェントとして働く際は、叔父の光助が開発した呪具で髪色や顔を変化させる事にしたのだ。
「【ウィッチ】を継ぐ者…三代目として、舞香ちゃんはこれから忙しくなりそうだ」
「だからこそ、まだ幼い舞香ちゃんが仕事だけに囚われないように、私達がフォローしなければいけません」
リエの言葉に、コラソンは大きく頷く。
「その通りです。子ども時代の記憶は…【輝く宝石】のような思い出として振り返れるように残しあげたい。
そうする事が、俺達が…大人がやるべき使命ですから」
やる気に満ちているコラソンに、「頑張りましょうね」とリエは莞爾とした笑みで答えた。
「ところで、先輩の方はどうでした?」
「小さな侵入者さんに、ライバル宣言されてしまいました」
「は、えっ…?」
返ってきた予想外な言葉に、コラソンは刹那の間、宇宙猫状態となった。
【五条少年は、最大の強敵を定める】
これは、私だけが見えている物語。
まだ確定してないけれども、これから辿る確率の高い…未来の話。
赤と白を基調とするシスター服とケープを纏う者。
煌びやかであり、底なしの闇が蔓延る夜の街並みを一望できる場所に降り立つ美しい少女…【ウィッチ】
『―――何が目的ですか?』
【ウィッチ】は問いかける。
向かい側の建物に佇む…一人の人物に。
『賭けをしないか、ウィッチ』
黒と白の衣装の上から和服を纏い、口元が露わになっている鳥の面を被っている。
黒に近い藍色の髪を無造作に後ろで結んでいるその青年は、少女と仕事上でたびたび会う関係だ。
だが、仕事の横入りをする事もあり、少女とは対立する事もしばしば。
そんな競争相手とも言える彼からの提案に、少女は戸惑いの色を顔に露わにしている。
『今宵を機に、僕は【ウィッチの捕獲】を最優先事項として活動する事を宣言する』
見える口元を大きく吊り上げ、青年は堂々とウィッチに挑戦状を叩きつけた。
『期限は?』
『君が正式な聖職者になるまで。それまでに逃げ切れば、ウィッチ…君の勝ちだ』
この時、ウィッチは15歳。
挑戦を受ける事を決めてしまえば、彼女が目指すもうひとつの夢が叶うまでの間、青年と鬼ごっこをする事となってしまう。
『もしも、僕が勝った場合は―――』
青年の目的を知った時、ウィッチである貴女はどう答えるのかしら?
『私は―――』
その時が訪れるまで…
貴女にとって最良の選択ができるように、私達は全力で支えていきますよ。
【ウィッチ・フェリシティ】…本宮舞香ちゃん
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