【裏1】五条家の子息は、転生少女を手に入れたい
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自分より一回りも大きい呪霊を瞬時に蹴りで叩き潰す。
限られた空間、なおかつ舞香を守り抜く…という条件付き、この場合は体術と術式を使用しての対処が最適だ。
術式順転「蒼」を応用して、瞬間移動しながら現れる呪霊を片っ端から粉砕する。
その間、舞香の様子が気になり、時折視線を移して確認していた。
舞香はやや怯えた表情を浮かべているが、逃げる事無く大人しくこちらの指示通りにしていた。
呪霊をつぶれたトマトのようにしてしまった時は「やべっ」と冷や汗をかいたが、
舞香は心配そうに、こちらを見守っているようだ。
(俺の事…怖がっていない、のか)
身内を除いた人々から向けられるものは、負の感情を入り混じらせた目だった。
傍にいるたった一人の…自分よりも小さな女の子が、自分の身を案じている。
その事が心に沁みていった。
(こいつら倒したら、速攻婚約者にする!
…にしても、数が多すぎだろ)
このホテルは、思っている以上に負の感情の溜まり場であるようだ。
一匹ずつ倒していっても効率が悪い。
長期戦になってしまい、体力が落ちてきて術の反動による疲労も蓄積していく。
彼女を危険な目に合わせたくないのに…!
『+++********####』
すると、聞いた事のない言語と共に歌が聞こえてきた。
唄っているのは…舞香だ。
まるで、プロの歌手のように心地よい旋律を生み出している。
(力が湧き上がる…)
疲労が嘘のように解消され、身体全体に力がみなぎっていく。
これならいける…!
術式をフルに活用して、呪霊達に殴打、飛び膝蹴り、掌底打ちを繰り出していく。
普段の修行で出せる力とスピードを上回り、数秒で五体の呪霊を撃破できた。
五分で完全に倒しきり、ほっと安堵して舞香の方へ振り向いた直後…
「…っ!? 舞香、逃げろ!!」
舞香の後方から、最後の一体が鋭い牙を見せながら彼女に襲い掛かろうとしていた。
『***』
しかし、見えない壁のようなものが、舞香を守るように呪霊を跳ね返した。
素早くそれを鷲掴みして床に叩き落としてやった。
パンパン、と手で汚れを払うと、悟は改めて舞香に近づいて手を掴んだ。
「今の何?」
聞かずにはいられなかった。
舞香本人が、呪霊を可視しているのは確実だ。
さらに、見た事のない術式を使用した。
…本宮家には、呪言師の血筋の者もいたのだろうか。
「こわかったから、勇気が出るように歌ってみました」
質問をしても、舞香は今一つ理解していない様子だった。
自分の能力を自覚していないのか、または隠さなければならない事情があるのか…
(どっちでもいい…舞香は、これからも『俺といる』から問題ない)
理由がどうであれ、悟にとって、舞香が愛おしい存在に変わりないのだ。
はてな、と不思議そうにこちら見つめる舞香の頬を触れようとした…
「舞香……って、五条悟!?」
だが、絶妙のタイミングでやってきた舞香の兄と闘也の所為で未遂に終わった。
(どいつもこいつも邪魔しやがって…)
悟は、兄の和広を睨み付ける。
憎悪の籠った強烈な眼差しを向けられ、和広は「ひぃ…!」と怯えた表情で後退りする。
「おーい、五条。なーに怒ってるんだ?」
そんな様子をどこ吹く風と言わんばかりに、闘也がひょこっと顔を出して尋ねてきた。
「あんたが、舞香の相手か」
「はぁ?」
「藤基家と本宮家が見合いする…噂が回っていた」
「あぁ~…その事か」
くだらなさそうに呟く闘也に、悟は心底苛立ちを感じずにはいられない。
舞香をこの男の婚約者にだけは絶対したくない…!
その思いが空気を大量に入れた風船のように膨らんでいく。
「噂がどうであれ、お前には関係ないじゃん」
「あるに決まってるだろ!」
殺気交じりの威圧を飛ばしても、闘也は余裕の表情を浮かべている。
それがまた腹立たしい…!
ふと視線をずらすと、こちらを不安そうに見つめている舞香に気付く(兄の方は全く眼中にない)。
怯えさせている事にちくりと罪悪感が芽生えるものの、此処を引く気にはなれない。
「二人とも~、舞香ちゃんは…あ、よかった。
見つかったようだね。それと…何かあったのかな?」
まさに一触即発だった空気をぶち壊したのが、藤基家の長男だった。
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