【7.5】スーブニール(2)
一部の事(特に前世の事)を伏せつつその理由を話すと、モンさんはふむ…と顎に手を押し当てて頷く。
「お前、ホントに物好きだね。出世欲とかまるでないし…」
「代わりに知識欲と探求心はかなりあるけどな」
「しょうがない。帰還している他の者には、私が詳細を伝えておく。
無理強いさせると色々面倒だからね」
モンさんの良い所は、こちらの言い分も聞いた上で判断をしてくれる事だ。
ずずっとお茶を飲みほして、ふぅ~と一息つくと、彼はおかわりを要求してきた。
はいはい、と茶を注いでいると、モンさんは話を再開する。
「しかし惜しいものだ。
お前が派遣先に行ったら、お前のつくる料理をなかなか食べられなくなる」
「モンさんの中の俺の立ち位置は、小料理屋なのか」
「こりょうり…?」
「分かりやすくいうと、一般大衆向けに料理を提供する人の事」
「ふーん。だが、一部訂正言わせてもらうけど、お前が派遣先に行くのを納得していないのは
“私だけ”じゃないぞ」
その言葉に、俺は「ん?」と眉を少し寄せる。
モンさんは茶を啜りながら、さらに続ける。
「そもそも、あの二番目の選択肢をつくったのは“お前を十戒に引き入れるため”だった
…と言ったらどうする?」
「……………………マジで?」
あまりにも信じ難い事実に、思わず聞き返してしまった。
「周りがお前の事をどう評価してるのか、知ってるのか?」
「同期からは『変わり者』とは言われてる」
「概ねそれであってるけど、多少付け足すところもあるぞ。
どうやら、お前は自分の事過小評価しすぎてる節があるみたいだし…」
「魔力は大した事ないだろ?」
「その分、他のスキルで補ってるだろ。
特に、剣術のレベルは私達と同格だ。
それに…いや、これ以上は長くなるから省略しよう」
モンさんの意外な指摘に、俺は頭を捻る。
無意識の内に、俺は何かをやらかしたのだろうか…。
「もし、お前が二つ目を選んでたら、誰の補佐役になるかで争奪戦が起きてたはずだ」
「そんな大袈裟な」
「いや本気で言ってるからね。
結果的に、今回はお前が予定外の答えを出したから保留になっただけだ。
…その証拠に、他の連中はまだ諦めてない」
そう言われても、想像つきにくい。
十戒の面々とはたびたび顔を合わせたりするが、彼等の前で目立つ行動はしていなかった…ように思う。
あれ~?と疑問符を浮かべて後頭部を掻く俺に、モンさんはさらに言う。
「お前って妙なところで鈍感だな。
…ま、どう考えるかはお前に任せるよ。
あ、そうそう…ひとつ言ってくけどね」
「ん?」
「さっきも言ったけど、城にいる奴らには詳細を説明するけど、
まだ任務から帰還してないのが三名いてね…」
モンさんが語っている最中、俺の名前を叫ぶ大声が聴こえてきた。
この気配は――――
「そいつら…ていうか一人もう来ちゃってるけど…
多分、任務終わったら此処に突撃してくるはずだから、お前が直接話してくれ」
それ早く言ってくれ!
額から冷や汗が滲み出る俺をよそに、モンさんがそう告げた直後に、盛大な爆発音を立てて家が半壊した。
「ごらぁあああああああ、『 』!
お前さん、何考えとるんじゃぁああああ!!」
「やれやれ、もうちょっと穏やかに入ってこれないのかね」
やってきたのはガランのじいさんでした。
芋菓子の皿とカップを持って、安全圏内に素早く移動して文句を零すモンさん。
「聞いとるのか! だいたいお前さんは…」
「はいはいはい、とりあえず落ち着いて…」
よりにもよって、なかなか納得してもらえないだろう厄介な人物だった。
残る二人も…なんとなく嫌な予感がする。
かくして、説明会の第二ラウンドが始まった。
【スーブニール(2)】
「…スター、マスター」
視界がぼやけてきて、目に映る人物が怒る甲冑の老人から、見目麗しい美女へ大変化した。
「…ん、あれ? ゲルダさん?」
「お休みのところすみません。お昼の準備ができたのでお知らせに参りました」
…どうやら、転寝してたらしい。
すぐに行く旨を伝えて、ゲルダに先に食事処へ向かうように言うと、
ハルは頭を掻きながら暫くその場で余韻に浸っていた。
(このところ、昔の夢が多いな…)
できたら、今度は騒がしくない夢であってほしい。
そんな呑気な事を考えつつ、ハルは椅子から立ち上がり、欠伸をしながら食事処へ歩を進めた。
【つづく】
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