【5.5】スーブニール


俺が『自分が異質』なのだとハッキリと自覚したのは、推定年齢8,9歳の頃だった。


「――――すてるの?」

「食べられるモノじゃねえからな」


幼馴染にあたる銀髪の少年がそう言って、蔓をぽいっと捨てた。

俺はそれを拾って、凝視していた。

これは食べられるモノなのに…。


…?

なんで、これが食料だと分かったんだろう?


これはサツマイモの蔓だ。

小学校の行事で一から育てて、秋になったら紫色の塊ができる。

割れば、カスタードの様な黄色で焼いたり蒸したり、揚げたり…調理法次第では色んな料理がつくれる。


…??

小学校って何だ?


聞き慣れない単語が頭の中にフッと浮かびあがっていく。



「――――『   』?」



幼馴染の少年が振り返って、訝しげにこちらを見ている。

けれど、俺はそれに答えられるほどの余裕がなかった。


…見た事もない景色

…微笑みを浮かべる人間族の老夫妻

…同い年の数人の男子

…アルコールと薬品の匂い

…黒い制服を着た一人の少女


頭の中に膨大な量の情報が一気に逆流してきた。


「―――――!」

「『   』! おい…」


胸にこみ上げてくる不快感。

嘔吐しかかった口を手で覆って防ぐも、俺はその場に蹲ってしまい、視界が遮られていく。


「んん? どうした、お前さんら?」

「『   』の様子がおかしい!」


顔馴染みのジイさんと慌てる幼馴染の声を最後に、俺は意識を遮断してしまった。

気を失う前に、脳裏に浮上したのは…白衣を着た、黒髪の人間族の男。

そう…あれは一番初めの『俺』

遥か彼方に忘却されたはずの、【前世】の俺の記憶。



これがきっかけで、俺は変わってしまった。

気付いた時には…後戻りできなくなっていた。




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