「貴方の手はどうしてそんなに大きいの？」
彼の手を取りながら私は言った。
「貴方の腕はどうしてこんなに逞しいの？」
握った手を肩のほうに向かってツーと滑らせた
「貴方の目はどうしてそんなに綺麗なの？」
今度は顔の横に手を添えて目をのぞき込んだ。

空を連想させる美しいスカイブルーの瞳は、キラキラと煌めきその輝きはいつまでも見ていられたが、彼にゆっくりと肩を押されそれは叶わなかった。

彼とは少し距離ができてしまったが、瞳の輝きが移ったのか目の前ではパチパチと極彩色に散っていた。

光は私の視界を快適にするものでは無かったが彼のモノが自分の一部になったと思うと幸せな気持ちでいっぱいだった。

悦にひたっていると目の前で手を叩かれた。
パンッと弾けるような音で一気に現実に引き戻されたのだ。

しかしこれは何というかつらい。
幸せいっぱいの気分から引き戻された心はじくじくと痛んだ。

ああ、もう一回彼の瞳を覗かなくては

あの多幸感を味わいたい
焦りに似た何かがざわざわと心を掻き立てる。

麻薬のようだと思ったときには既に彼の顔に手を添えていた。

無表情の彼が何を思っているかなんて分からなかった。

私が瞳を覗き込む前に彼は私の目に蓋をした。

真っ暗な中、美しい輝きを求めて手を退かそうとする私を数秒見つめた後、彼はわたしのおでこにキスをした。

別になんとも無い普通のキスだ。

あっけに取られ呆然としている私に光が差し込んたとき、彼は少しだけ目尻を下げた優しい顔をみせた。

待って欲しいと手を伸ばした手が空をきり
そこには誰もいなくなっていた。

夢じゃないよねと
何も掴めなかった手をおでこに持っていきゆっくりと撫でた。