【第18章〜治療を経て〜】
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「...椿は? 瑠璃は大丈夫であるか?」
「ええ。瑠璃さんは、さっき起きたんだけど......ふふっ。椿ちゃんから離れなくてね。向かいのベッドにいるわ」
ほのぼのとしたミランダの視線に導かれるように、向かいへと視線を向ける。
そこはカーテンがかかっており、中の様子は分からなかったが、瑠璃のしっぽがゆらり、ゆらりとカーテンの裾から揺れているのが見える。
強い空腹を感じたが、それよりも先に、確認しておきたかった。
ベッドから起き上がり、ミランダに助けてもらいながら、静かにカーテンを開ける。
女性の寝床である、という事に少し気が引けるが、婦長が「大丈夫」だと頷いたので、少しだけ失礼する事にした。
「......」
「......」
静かに上下する、細い身体。
眠り続ける椿と、ベッドに虎のまま頭を乗せて、不安そうにしている瑠璃が、そこにいた。
瑠璃はこちらに気づいたのか、視線だけクロウリーに向けるが、何も喋らず視線を椿に戻して、耳をパタつかせる。
その姿は、まるで全然遊んでくれない飼い主に拗ねる、猫のようだ。
「......ずっと目を覚まさないの、椿ちゃん。もう、体に異常はないらしいのだけれど」
ミランダの言葉に、瑠璃が少しだけ肩を落としたような気がした。
椿のベッドの側へと足を踏み入れ、一瞬戸惑ったが......意を決して、その手を取った。
――彼女の手は、こんなに頼りなかっただろうか。
このまま力を入れてしまったら、ポッキリ折れてしまいそうだ。細く、柔い、手......。
けれど、温かい。ちゃんと血が巡っている手だ。
膝をつき、両手で手を握り締める。
「椿......目を覚ますである。仲間になるのであろう?一緒に戦うと、約束してくれたでは無いか。私は目を覚ました。瑠璃も、ミランダも、無事である。......あとは、君だけであるぞ」
(だから......だからっ、!)
精一杯、壊れないように彼女の右手を握る。
爪先が冷たい。ダメだ。ダメだ。このまま、さようなら......なんて、許さないである。
ぐっと込み上げる感情に、歯を食い縛る。ツンと痛くなる鼻。目頭が熱くなるのを、必死に堪えた。
「起きて、椿ちゃん。みんな......待ってるのよ。瑠璃さんも、クロウリーも、......私も。あなたが帰ってくることを、ずっと待ってるのよ」
ミランダが、反対の手を握り、祈るように目を瞑る。
お願い、と小さく聞こえた声は震えていて、彼女が自分と同じ気持ちである事を知る。
(ミランダ......)
1番長く、みんなの帰りを待っていた彼女だ。願う気持ちは、自分たちよりも大きいはず。
そうでなければ、目の下の隈がそんなに濃いはずがない。
「......人は、そうするのか?」
「ええ。こうして願うことで、相手が迷わず帰ってくるようにって、導いてあげるのよ」
「導いて......」
小さく復唱した瑠璃は、少し考えた後、人型へと変化した。瑠璃は椿の上に跨ると、両手のにくきゅうで彼女の顔を包み、そのまま上に乗るように体を倒した。
......それでは寝ている主人の上に乗る猫のようでは無いか、と過ぎった思考は、今は頭の隅に追いやるとしよう。
「起きろ、椿。お前がいない世界は、つまらぬ。起きて、笑顔を見せろ」