異界を繋ぐ恋の架け橋
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敖潤「朔羅、ここが私の部屋だ。先に入って書物でも読んでいて欲しい。その間にお前の寝泊まりできる部屋を準備させる。捲簾大将、貴殿は女性に関しての知識は豊富だったな。彼女の部屋に必要な調度品を貴殿の部隊に用意させたい。任せられるか?部屋は私の部屋の左隣が空室になっているからそこを好きに使うと良い」
部屋に入るなり、応接セットの机の上に書籍を置きながら、敖潤が捲簾大将に命じる。
捲簾「上官、ちょっと人使い荒くないっすか?」
敖潤「こういった雑事をこなすのも鍛錬の内だ。それとも、朔羅の前で貴殿が西軍に左遷された理由を話しても構わないのか」
捲簾「げっ!それは勘弁!捲簾大将、いますぐ準備に取り掛かりますので、失礼させてもらいますっ!」
本を置いて、どたばたと部屋を後にする捲簾大将。
天蓬「あの人も忙しい人ですねぇ。じゃぁ、本は読み終わった時に返してくれればいいので、僕もお暇しますね」
そう言ってのんびりと天蓬元帥も部屋を後にする。
彼らが居なくなって、初めて部屋の観察が出来たが、この部屋は、天蓬元帥の部屋と違って、紅の柱がいくつか露出し、応接用の椅子と机のセットの奥に、執務用の机と椅子がある。
背もたれの高い椅子には、質素な装飾が施され、机にもテーブルクロスが欠けられた上に、執務に必要な四つ角に四角い装飾の入った天板が置かれている。
その後ろに、外に開けられるように四角い模様の入った窓があった。
(・・・簡素な部屋)
第一印象はそんな感じだ。
どこか中国的な物を感じさせるその部屋には、無駄な物はなく、仕事をする以外の物は置かない人なのだと窺える。
敖潤「朔羅、椅子に座っていくつか書物を読んでみると良い。部屋が準備できるまで時間がかかる。もしかしたら、言葉は通じても書物は読めないかもしれん。何せ世界が違うからな」
そう言いながらも敖潤も本を一冊無造作に取り、執務用の椅子に座ってページをめくり始める。
自分もそれにならって、巻物を一つ開いてみた。
朔羅「あ、これ、漢文だ・・・でも、ちょっと私が見慣れてるのとは違うかも・・・」
敖潤「やはり、読めないか?」
朔羅「あ、いえ、そんなことないです!漢文や古文は学校でも点数良かったですし、読めなくはないけど、見慣れない文体だなって」
一瞬、諦めの表情を浮かべる敖潤に対して、急いで返答を返す。
朔羅「たぶん、日本で作られた漢文じゃなくて、中国の漢文そのままなんじゃないかな。だから、見慣れないけど、文法は覚えてるし、読めなくはないと思い、ます」
敖潤の人間らしい表情に戸惑って、ちょっと口調がごちゃまぜになってしまう。
敖潤「敬語に慣れていないのなら、無理に使わなくていい。普段は崩した方が素なのだろう?」
朔羅「え、あ、うん、頑張って、みまっ、みる」
たった一言崩した言葉を話しただけで見抜かれてしまい、言葉が詰まってしまう。
敖潤「少しずつでいい。私と朔羅では立ち位置も違うが、今は同じ目的を探る者として同等だと思っている。ゆっくりでいい。分からないことがあったら遠慮なく聞いてくれ」
朔羅「あ、はい、ありがとう」
ございますという言葉を飲み込んで、書物に目を通す。
漢文だけど、読めなくはない。
内容的には、召喚するための方法が主だったが、読み進めていく内に、条件として、異界を観測する必要があることが記載されてはいたが、召喚した物を元に戻す方法は書かれていなかった。
1巻目はハズレか。
でも、まだ始まったばっかりだ。
そう思って2巻目に手を付ける。
(諦めないのだな)
正直、初めの1巻で方法が見つかるとは思ってなかったが、不明な点を聞くわけでもなく、一心不乱に書物を読み進め、ハズレだと分かっても2巻目に手を付ける彼女の姿を、自身も書物に目を通しながら、そう感じていた。
初めて見た時、綺麗な娘だと思った。
肩口までの黒髪が特徴的で、こちらを見つめる瞳が純粋だと思った。
手を取った時、小さな手が華奢だと思った。
歩幅は合わせていたが、一歩後ろをついてくるその姿も、女性らしいと思った。
今も静かに、巻物を読む姿が様になっている。
捲簾大将ではないが、彼女は十分美人の部類に入ると思う。
そして、健気な人だ。
わずかな時間しかまだ過ごしていないが、初めて見る書物にも怖気ずに、真剣に実直に読み解こうと頑張っている姿には好感が持てる。
まだ知り合って2~3時間も経っていないが、女性に対して好感を持つのは、敖潤にとっても珍しい体験だった。
(この感情を、俗に恋というのだろうか。私とあろう者が、まさかな)
ページを読む手も、文字を追う目も止めはしないが、彼女が自分の世界に戻るために自分の力で頑張ろうとしている姿に、好感が持てた。
敖潤が3冊を読み終える頃、彼女から声がかかった。
朔羅「読むの、早いですね。ページをめくる音も早かったですし、読み物には慣れているんですか?」
まだ敬語だが、初めの頃よりもだいぶ緊張感が抜けてきたように思う。
敖潤「部下の報告書などを読む機会が多いからな。書物を読むのは早い方だろうな。他にも要点を拾い読みしているからな。一から十までは読んでいない」
朔羅「あぁ、拾い読みすればいいですね。私、一生懸命、端から端まで読んでました」
敖潤「召喚術に関する書物は、大抵、召喚する方法について前半で記述されている。戻る方法を探すなら後半を中心的に読み漁ればいい」
朔羅「そうなんですね。やってみます」
そう言って彼女は3巻目に手を付ける。
初めは、広げっぱなしで読んでいた巻物も、半分は閉じながら読めばいいと2巻目で容量を得たらしく、3巻目は慣れた手つきで、巻物を読んで行く。
敖潤「・・・休んでもいいのだぞ?そろそろ、部屋の準備も出来ただろうから、今日はこの位にしたらどうだ?」
朔羅「え、でも・・・」
そう言って彼女は窓の外を見る。
そこには、万年桜が咲き誇り、咲いては散りて、散っては咲くその様を見て言葉を発する。
朔羅「まだ、日も高いですし、桜も綺麗に咲いてますし、なんか応援されてるみたいに感じて・・・私、もう少し頑張ります!」
トクン
頑張ると言った彼女の言葉に、胸が鼓動を打つ。
(なんだ?この胸の鼓動は?私は今、何を感じた?)
それが恋と言うものだと言うことを、敖潤はまだ知らない。