異界を繋ぐ恋の架け橋
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そう言って敖潤が呼び止めたのは、向かいから歩いてきた黒い服装で肩に銀板が縫い付けられていて、首から髑髏の首飾りをした黒髪で、少し目つきの悪い不良軍人みたいな人だ。
何故だか腰に酒と書かれた土瓶のような物を付けているが、なんだか色々突っ込み所が多い人のようなので傍観して置くことにしていた。
捲簾「あ?上官自ら、俺に何の用っすか?俺、これでも一仕事終えて自室に帰る途中なんですけど。つか、上官が女、連れてるなんて珍しいこともあるんすね?コレですか?」
そう言って小指を立てるその男は、どうやら自分と敖潤を恋人関係のあるものと勘違いしているらしかった。
朔羅「ちがっ」
敖潤「違う。彼女は観世音菩薩が異界から勝手に呼び出し、私にその扱いを託したのだ」
自分が否定しようと口を開くのと同時に、敖潤も同じ速さで口を開き、冷静に事実を述べる。
説明事は彼に任せた方が的確に進みそうだ。
まだ自分でも己の立場が良く分かっていないのだから。
捲簾「つーことは、面倒事を押し付けられたってわけですか。じゃ、俺の出る出番は無いようなんで、失礼させていただきますっと。頑張ってね、美人さん」
敖潤「待て、捲簾大将。今から天蓬元帥の元で書物を借りようと思う。整理整頓に関しては貴殿の得意分野であっただろう。探し物をする故、散らかった書籍の整理を頼みたい」
通り過ぎようとする捲簾大将を敖潤が素早く呼び止める。
捲簾「マジっすか。今さっき、月1の大掃除を終えたばっかっすよ?また荒らすんですか?俺の苦労が二度手間じゃないですか!」
敖潤「ここにいる朔羅のためだ。上官命令として手伝え」
捲簾「うわー、容赦ねー。まぁ、美人さんのお役にたてるならしゃーないか。えーと、朔羅ちゃんだっけ?俺、捲簾大将ってんだ。気軽に捲簾って呼んでくれていいから、よろしくな」
そう言って差し出された手を、おずおずと握る。
思いの他、大きな手でしっかりと握られてびっくりし、肩をすくめてしまう。
捲簾「あららん、俺様、嫌われちゃった?それとも、朔羅ちゃん、男慣れしてない?」
朔羅「そ、そんな、ことはっ」
喋りながら、顔に熱が昇っていくのが分かる。
ヤバい、今、敖潤に顔を見られたくない。
きっと、自分は今、顔が真っ赤だ。
敖潤「捲簾大将、彼女をからかうのもほどほどにしておけ。異界の人間だ。この世界に長居すべきではない。早々に書物を漁るぞ。着いてこい」
そう言って歩き出す敖潤に捲簾大将は渋々といった呈で踵を返して、彼の後に続く。
今の自分の顔を敖潤に見られてないと良いと思いつつも、遅れない様に歩を進めた。
暫し、誰も言葉を発しないが、すぐに目的の部屋の前に着いたらしい。
捲簾大将が声を上げる。
捲簾「おい、天蓬!客人だ!探しもんだとよ!」
敖潤「相変わらず、口の悪い大将だ。天蓬元帥はお前よりも階級は上だろうに。もう少し言葉使いに気を付けられないのか」
捲簾「俺ら、いつもこんなんでやり合ってるんで、問題ねーっすよ」
天蓬「捲簾?さっき出て行ったばかりじゃないですか?お客って誰ですか?」
二人が話している間にも、目の前の扉が内側から開き、こちらも黒髪だが、捲簾大将よりも長髪で眼鏡をかけて白衣を着た人物が現れる。
ネクタイは緩めに閉めているが、足元は、何故か一昔前のトイレ用のスリッパだ。
(この人が元帥?大将よりも階級は上だって敖潤さんは言ってたのに、なんか、間の抜けてるって言うか?本当に元帥?)
そんな事を思っている内にも、彼らの会話は続く。
敖潤「天蓬元帥、観世音菩薩が異界から彼女を呼び出してしまった。召喚術の一種だと思うのだが、元の世界に帰すための方法を探りたい。いくつか書物を借りられるか?」
天蓬「これは、上官自らこんな所に足を運ぶなんて珍しい事もあるんですね」
敖潤「緊急事態だからな。で、先程の召喚術関係の書籍はあるか?」
天蓬「まぁ、なくはないですけど、召喚する物は多いですけど、元の世界に戻す帰還術とでもいうのは、そんなに多くはないんですよねぇ。まぁ、とりあえず立ち話もなんですし、彼女もいますからお入りください」
朔羅「あ、あの、私、朔羅って言います。よろしくお願いしますっ」
男の人に挨拶するのは慣れていない。
特にこの世界の人は、捲簾大将も天蓬元帥も美形に入る部類だ。
こんな人達に囲まれていては、緊張ばかりして言葉がつっかえてばかり。
天蓬「朔羅さんですね。よろしくお願いします。元の世界に戻れる書物が見つかるといいですねぇ」
そう言って天蓬元帥は私達を部屋の中に招き入れた。
そこには、壁一面に広がる本棚。
見渡す限り本や巻物が詰め込まれた棚ばかりで、綺麗に整頓されている。
ここを自分が元の世界に戻るためとはいえ、散らかすのはちょっと気が引けた。
天蓬「さて、異世界転移の話ですよねぇ。捲簾どの辺りに終いましたっけ?」
捲簾「あのなぁ、俺は本を並べ替えたりはしたけどなぁ、本の中身なんて見てるわけないだろ?」
天蓬「ですよねぇ?じゃぁ、この辺りから見ていきますかぁ」
そう言うと、天蓬元帥は無造作に、整頓されていた本棚の中から、本や巻物状の書物などに手を出して中身を確認しながら部屋に適当に散らかしていく。
天蓬「あー、これも違う。こっちでもないなぁ。・・・あ、これは、近いかも。とすると、こっちも合わせて貸した方が良さそうかな」
捲簾「だぁー、違うならその場で片づけてけって」
敖潤「捲簾大将、それは貴殿の役目だ。そのために呼び止めた。天蓬元帥だけに任せたら、部屋が書物で溢れかえるからな」
捲簾「そう言うなら、手伝ってくださいよぉ。俺、こいつの家内じゃないんすよ?」
敖潤「人には適材適所と言うものがあるだろう。不慣れな我々が手を出すよりも、手慣れている貴殿に任せるのが一番良い」
朔羅「あの、本当に手を出さなくていいんですか?なんだか、部屋が凄いことになってますけど?」
小声で敖潤に囁いて聞いてみる。
すると、敖潤も小声で答えを返してくれる。
敖潤「問題ない。口ではあぁ言っているが、捲簾大将の手元を見ているといい。うまく必要な本は机の上に、その他は元あった場所に移動させているだろう。あれでも使える所はある男だ」
(それって都合よく使ってるだけじゃないのかなぁ)
敖潤の返答に心の中でだけ返事をして、後は二人の作業を見守る。
喧々囂々、二人のやり取りが20分ほど続いただろうか。
机の上には、軽く30は超える書物類が積み重なっている。
敖潤「天蓬元帥、捲簾大将、使えそうな書物はまとまったようだな。それらを女性に持たせるのは忍びない。2人共それらを私の部屋まで運ぶのを手伝うように」
捲簾「えぇーえ!俺ら、そこまでするんすか?」
天蓬「捲簾、これだけの書籍や巻物を朔羅さんと上官に運ばせるのは、さすがにまずいですよ。ほらほら、行きますよっと」
言いながら、一番重たい冊数の山を捲簾大将に持たせている天蓬元帥もある意味、鬼だと思う。
捲簾「重っ!天蓬っ、嫌がらせかよ!」
天蓬「僕もそれなりに持ちますから、嫌がらせではないですよ。申し訳ないですけど、朔羅さんは巻物類をまとめて持っていただけませんか、数巻だけなのでそんなに女性でも重荷にならないと思うんですけど」
朔羅「あ、はい、分かりました!」
言われて慌てて机の上にある巻物を抱える。
残りは、何も言わず敖潤が持って、片手で部屋を開けて荷物の重い順に部屋を出て行くが、その量的に捲簾大将>天蓬元帥>敖潤>自分となっているのは、気のせいだろうか?
いくら自分が女性とは言え、巻物数巻だけ抱きかかえて、他の3人に分厚い書籍類を持たせてしまっているのは、どこか忍びない。
それも、なんとなく階級ごとにその重さも違っているようで、なんだか申し訳なかった。
先を歩く捲簾大将と天蓬元帥が仲良く言葉を交わしているが、自分の耳にその内容は入ってこない。
それよりも隣で書籍を持って黙って歩く敖潤が、また絵になっていてカッコいいなと思ってしまっていた。
本当に自分は、この人に一目惚れしてしまったらしい。
今まで、恋なんてしたことがなかったから、この胸の騒がしい鼓動が敖潤に聞こえませんようにと心の中で願いながら彼の部屋へと向かった。