異界を繋ぐ恋の架け橋
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何もかもがくだらないと思っていた。
会社も日常生活も、離れた場所に住んでいる家族との関係も。
成人して就職して、適当に仕事をこなして、たまに休暇をもらって平穏に暮らす。
特に彼氏とかもいないし、実に平凡。
そんな日常に少し飽きていた。
久しぶりにもらった休暇の今日は、生憎の雨だった。
朝から雨がしとしとと降り続いていて、午後になってやっと止んだ。
そう言えば、夕飯の買い出しに行かなきゃいけなかったなと思って、部屋着から簡単に外に出られる服装に着替えて、財布と買い物バックだけを持って外に出る。
通りに出れば、雨上がりの水溜りで遊ぶ子どもの姿が目に入る。
(自分にもあんな頃あったな)
そんなこと思いつつ、通りの角を曲がった瞬間、足元にあった水溜りを踏んでしまう。
ぴちょんっ!
そんな音と共に(あ、やってしまった)と思った。
すぐに濡れた足をどけようとしたが、水溜りから足が抜けることはなく、むしろ、ぐにゃりと妙に凹んで自分を飲み込んでいく。
(何、なに、なに!何が起こっているの?!)
水溜りに溺れるという不思議体験をしている中、頭は錯乱していく。
もう息が続かない、そう思った瞬間、妙に明るい所に出た。
???「ぶはっ、ここ、どこ?!」
見渡せば自分は、蓮が咲き誇る池の中央に居た。
全身ずぶ濡れで、どうしようかと思っていると、目の前に、人じゃない人物を発見。
銀色の髪から生えている2本の角のような物。
サメ肌のような鱗肌。
長く尖った耳。
妙な白い甲冑のような恰好をした男性。
白眼にあたる部分は赤く、瞳孔だけが黄色で、肌の白さを際立たせていた。
彼とそしてたぶん、自分の後ろにいるらしき人達が何か話しているが、全く耳に入ってこない。
目の前の人物が美しいと思った。
男の人には不謹慎な言葉かもしれない。
それでも、自分は不覚にも、その人物に一目惚れしてしまった。
敖潤「おい、お前、名を何と言う?」
目の前の人物が自分に話しかけてくる。
「あ、えっと、朔羅、です」
つい、敬語になってしまう。
日頃は敬語など使わないのだが、目の前の人物が綺麗過ぎて、自分に話しかけてきていることが不思議で頭が正常に機能していない。
敖潤「朔羅。良い名だな。そこにいつまでも居たら風邪を引く。立てるか。こちらへ来い。今、女中を呼んで、湯あみと着替えを用意させる」
朔羅「え、あ、はい、立てます」
彼の言葉に従って立ち上がり、存外浅い蓮池の中を歩いて、欄干を超えて彼の元に辿り着く。
彼は自分が転ばぬように片手を貸してくれた。
彼が持っている書類を濡らしてしまわない様に気を付けて、ありがたくその手を握って欄干を乗り越える。
その手が、爪も整えられていて綺麗で、やっぱりこの人は美しいと思ってしまった。
敖潤「おい、誰か女中は居ないか、着替えと湯あみをさせたい者がいる」
彼は少し声を張り上げて周囲に人が居ないか呼ぶ。
女中「あらあら、敖潤様ではありませんか。このような場所に珍しいですねぇ」
おっとりとした女性がどこからともなく現れる。
(この人が女中さん?)
茶色い髪のセミロングの髪に少し垂れ目で、薄ピンク色のゆったりとした着物らしい服装を着こなす女性は、こちらに近づいてくると自分の様子を見て状況を察したらしい。
女中「その方の湯あみと着替えを承ればよろしいのですね?」
敖潤「あぁ、頼む。私は天帝城に書類を届けねばならぬから、一度離れるが終わったらまたこの場所で待っていて欲しい。できるな?朔羅」
朔羅「あ、はい、大丈夫です」
女中「では、湯あみ場へと案内しますわ。着いていらしてください」
朔羅「あ、あの、お名前は!」
咄嗟に彼の名前を聞いていないことに気が付いて早口に問う。
敖潤「敖潤だ。これでも軍人だ。本来ならあまり関わらない方がいいのだが、観世音菩薩の命は私も断れない。しばらく、私がお前の面倒を見ることになるだろう。よろしくな、朔羅。おい、この者は一応、私の客人だ、それ相応の服装を準備しろ」
朔羅「あ、はい、こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
女中「かしこまりました、敖潤様」
後半は女中さんに向かって放たれた言葉だが、自分は急いで頭を下げる。
肩口まである濡れた黒髪から水が滴って周囲を濡らしてしまった。
女中「これは、早く湯あみを済ませませんと風邪を召されますよ」
女中さんに促されて、自分は敖潤と別れる。
去り際に振り返れば、もう敖潤はこちらを振り返ることなく、背を向けて歩き出していた。
三つ編みにしている銀色の髪が遠のくのが、少しばかり寂しいと思う。
(もっと彼に近づきたい)
密やかに心の内にそう決めて、女中さんに続いて自分も歩き出した。