異界を繋ぐ恋の架け橋
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朔羅「・・・・・・・・・っ!はっはっは、はぁ・・・・・・ココは?」
なんだか長い時間、意識を失っていた気がする。
そこは見たことがあった。
紅の柱に同じ色の欄干。
咲き誇る蓮の池。
朔羅「私は、一体、どうなったの?」
菩薩「答えを知りたきゃ立ち上がってみな。足元にお前があの後どうなったかが写るはずだ」
朔羅「っ!観世音菩薩様!」
ほぼ真横から聞こえた声に反射的に首だけを回して、観世音菩薩の無事を確認する。
菩薩「あぁ、俺は元からそっちの世界に行ってないからな」
朔羅「え?それってどういうことですか?」
菩薩「まぁ、足元ってか、手元覗いてみろって。お前のあの後の顛末が映されるはずだぜ?」
朔羅「は、はぁ?」
観世音菩薩の言葉に従い、へたり込んで座った状態のまま、手元の水面を覗き込む。
そこには、確かにトラックに轢かれて血を流して地面に倒れている自分の姿。
会社の同僚が、スマホで何やら連絡して、間もなく救急車が現場に到着する。
病院に搬送され、遠くに住んでるはずの家族が会社からの連絡で呼び出されて病院へと駆けつける。
手術は長時間に及んだが、一命は取り留められず、医師が家族に自分の死亡を告げていた。
泣き崩れる母の姿。
それを支える父。
それから、落ち着きを取り戻した家族は会社へと連絡を取り、各種手続きを取ってくれて、借りていた住まいの後片付けなどのアレコレも家族がやってくれた。
朔羅「・・・・・これ、やっぱり、私、あの時、死んでたんじゃ?」
疑問に思って自分の心臓の上に手を乗せる。
静かに、トクントクンと小さな鼓動が脈打っていた。
菩薩「いや、あれは、お前の偶像だ。俺がトラックに轢かれる直前で蓮の花弁に変わっただろ?アレと同じ要領でお前の本当の体はこちらに、今見た映像はお前の偽物ってことだけど、周りはお前がトラックに轢かれたように見えたし、死んだように映ったってことだ」
朔羅「えっと・・・つまり、私、もう、帰る場所、ないんですか?」
菩薩「そういうことだな」
さらりと凄い事を言う人だし、こなしてしまう人だと思った。
(・・・これから、どうしよう)
頭が白紙になり、そう思っていると後ろから声がかかった。
敖潤「朔羅!」
それは聞き馴染んだ声。
ずっと、もう一度聞きたいと想っていた想い人の声。
朔羅「敖、潤?」
まだ現状が飲み込めてない頭で振り返れば、驚いた顔をして欄干を飛び越えて、バシャバシャと蓮池の中を歩いてくる敖潤。
朔羅「敖潤、あの、私」
慌てて立ち上がって、塗れたままの服装で敖潤と向き合う。
朔羅「あ、あのね、その、私」
敖潤「何も言わなくていい・・・状況はおおよそ察した」
強く自分を抱きしめて頭を撫でてくれる敖潤に、暫し身を預ける。
男の人にこんなことしてもらうのなんて初めてだ。
朔羅「敖潤、服、濡れちゃう」
敖潤「今は構わぬ。それよりも、観世音菩薩殿。二度も他の世界に干渉し、その上、この者の世界での居場所を奪うなど、異例中の異例です。この責任はどのように取るおつもりか」
軽く押しのけようとするがさらに強く抱きしめられて、体が密着状態になる。
(ちょっと敖潤!強引すぎ!)
そう思う自分の心境も放置され、話は進む。
菩薩「俺は、お前の為を思ってやったんだがなぁ。毎日飽きもぜず、欠かさず決まった時間にここに来てた癖して、責任は全部俺に押し付けるような言い方やめてくんねーかな?お前だって会いたかったんだろ?そいつによ」
敖潤「・・・私の私情は関係ありません。この責任は如何様に」
あくまで感情を押し殺した声で問う敖潤に対して観世音菩薩はどこか投げやりだ。
菩薩「ふーん、どうしようか、次郎神」
そこでお目付け役の次郎神に問う観世音菩薩。
次郎神「そこで私に振りますか。観世音菩薩様の仕事サボり中の勝手な行動ですからなぁ。お目付け役の私の意見など初めからお聞きになる気もないでしょうに」
菩薩「あ、バレた?んじゃぁ、どうしようかなぁ、目の前でラブラブな所、見せつけられてるし、お前らの好きにしたらいいんでない?俺はこれ以上、お前らに干渉しないでやるよ」
朔羅「観世音菩薩様、それって、私っ」
敖潤「朔羅はココに居ていいってことだ」
自分の疑問に敖潤が答えた。
菩薩「まぁ、そういうことった。後は自由にしな」
その言葉だけを残して、観世音菩薩は次郎神と共にその場を去っていく。
敖潤「毎回、あの人の召喚術では濡れてしまうな。私も湯あみをしに行こう。歩けるか、朔羅」
敖潤がやっと体を離して、代わりに手を繋いで、蓮池を後にしようとする彼に対して、自分の足は止まったままだ。
朔羅「う、うん。大丈夫。あの、敖潤。私、これからどうしよう・・・」
敖潤「不安か。元の世界に帰れなくなって」
朔羅「うん・・・ここで、どうやって生活していこう?いつまでも敖潤の所にお世話になるわけにも行かないけど、他に行くあてもないし」
敖潤「ならば、帰れるべき場所がないのなら、私の妻になってはくれはしまいか?」
朔羅「え?妻・・・って、奥さん?」
敖潤「そうだ、嫌か?」
一瞬、敖潤の言葉が理解できずに硬直してしまったが、嫌かと問われて自分の心は、否と唱えていた。
朔羅「その、こんな不束者の私で良ければ、よろしくお願いします!」
顔を赤くしながら、軽く会釈する。
そんな自分をもう一度敖潤は優しく抱きしめてくれて、ならば、と言って蓮池を共に後にする。
敖潤「湯あみを終えたら、部屋もあのままにしてある。一度部屋に戻って、待って居て欲しい。婚礼の儀式を通達せねばならん」
朔羅「こ、婚礼っていきなりだよ、敖潤」
敖潤「私とて、何も考えていなかったわけではないのだぞ?ずっと、お前に恋焦がれていた。だから、これからは私の隣で、幸せに過ごしてほしい。これからの生活は2人でゆっくり考えていけば良い」
朔羅「・・・そうだね。じゃ、湯あみが終わったら、敖潤の部屋で落ち合おうね」
敖潤「あぁ、待っているぞ」
そうして、私達は一旦離れて、湯あみ場へと別々に歩み出した。
その後、天蓬元帥や捲簾大将とも再会して、暫くして婚礼の儀式が行われた。
私は天界で、西海竜王の正妻として美しい天界での生活を送る事となった。
初めて見た日と同じ、万年桜が婚礼の儀式の最中もその後もずっと咲き続け、散っては咲き、咲いては散ってを繰り返し、私達の生活を静かに見守ってくれていた。
~異界を繋ぐ恋の架け橋~(完)